天馬になったアーロン 最期まで闘い続けたひとつの命

2018年06月05日(火) 18:00

第二のストーリー

▲アーロンとオーナーの花島さん。たくさんの愛情に包まれながら日々を過ごした

今日を生きようと、何度も何度も立ち上がる

「今年の春は例年になく早くやって来ました。3月27日アーロンは桜の散る中、静かに天国に旅立ちました。今頃天馬となって他の仲間たちと大空を思い切り駆け巡っていることでしょう」

 2016年1月12日、当コラムで難病と闘うサラブレッドを紹介したが、そのオーナーの花島早苗さんから届いた手紙には、こう綴られていた。

 花島さんと預託先のシャンティステーブルの本田一彦さんが、正に二人三脚でアーロンを支えてきた。

「もう一度起こせば、今もまだ生きていたと思います。蹄葉炎も床擦れも酷くなってきました。見ている僕も辛いし、これから暑い夏も来ます。花島さんと相談をしてアーロンを眠らせることにしました」

 取材以来、折に触れてアーロンはどうしているだろうと気になってはいたが、別件で本田さんに連絡を取った際に思いがけず彼の最期を知った。花島さんにお悔みの電話を入れ、コラムで取り上げさせてほしい旨を伝えると、アーロンへの思いがたくさん詰まったお手紙をしたためてくれたのだった。

 アーロンは以前在籍していた乗馬クラブ時代にモーターニューロン病と診断されたが、そのクラブの会員でもあった花島さんに引き取られ、別の牧場で余生を過ごしてきた。病の症状は落ち着いており、9年間をその地で過ごしてきた。諸事情からシャンティステーブルに移動。健康状態も悪くなく、本田さんも乗って運動をするようになっていた。

 花島さんが近々騎乗することになっていたある日、アーロンが突然馬房の中でグルグル回り出した。・・・

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佐々木祥恵

北海道旭川市出身。少女マンガ「ロリィの青春」で乗馬に憧れ、テンポイント骨折のニュースを偶然目にして競馬の世界に引き込まれる。大学卒業後、流転の末に1998年優駿エッセイ賞で次席に入賞。これを機にライター業に転身。以来スポーツ紙、競馬雑誌、クラブ法人会報誌等で執筆。netkeiba.comでは、美浦トレセンニュース等を担当。念願叶って以前から関心があった引退馬の余生について、当コラムで連載中。

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