日本産馬“ヨシダ” 日本競馬史に輝く金字塔なるか!?

2018年06月13日(水) 12:00


◆プリンスオヴウェールズSにはクラックスマンが出走

 英国競馬の華と言われる王室主催の「ロイヤルアスコット」が、6月19日(火曜日)から23日(土曜日)に行われる。そこでこのコラムでは、今週と来週の2回に分けて、主要競走の展望を行いたい。

 まずは、初日(19日)のオープニングカードとして定着している、ストレートマイルを使った4歳以上の馬たちによるG1クイーンアンS(芝8F)から。ブックメーカー各社が4倍前後のオッズを掲げて1番人気に推すのが、エイダン・オブライエン厩舎のロードデンドロン(牝4、父ガリレオ)だ。

 5月19日にニューバリーで行われたG1ロッキンジS(芝8F)を制し、2歳秋のG1フィリーズマイル(芝8F),3歳秋のG1オペラ賞(芝2000m)に続く3度目のG1を奪取した馬である。20日のG1プリンスオヴウェールズS(芝10F)にも登録があるが、オブライエン厩舎はそこに、5月27日にカラで行われたG1タタソールズGC(芝10F100y)の1・2着馬ランカスターボマー(牡4、父ウォーフロント)、クリフズオヴモハー(牡4、父ガリレオ)らを振り向ける模様で、ロードデンドロンはこちらに廻る公算大と見られている。

 6〜7倍のオッズで2番人気に推されているのが、ゴドルフィンのベンバトル(牡4、父ドゥバウィ)だ。3月31日にメイダンで行われたG1ドバイターフ(芝1800m)で、連覇を目指したヴィヴロスに3.1/4馬身という決定的な差をつけて勝利し、4度目の重賞制覇を果たすとともに待望のG1初制覇を飾った馬である。

 同馬も、ロードデンドロン同様にG1プリンスオヴウェールズSとダブル登録しているが、管理するS・ビンスルール師は既に「クイーンアンSに向かう」と言明。今年に入ってからの4戦で同馬の手綱をとっているオイシン・マーフィーが、優先騎乗契約を結ぶカタール・レーシングのライトニングスピアに騎乗するため、クイーンアンSにけるベンバトルの鞍上には、クリストフ・スミヨンがブッキングされている。

 5月27日にパリロンシャンで行われたG1イスパーン賞(芝1850m)を制し、4度目の重賞制覇を果たすとともに待望のG1初制覇を飾ったレコレト(牡4、父ウィッパー)が、オッズ7〜8倍で3番手評価。5月19日のG1ロッキンジSが短頭差2着だったライトニングスピア(牡7、父ピヴォタル)がオッズ9倍前後で4番手評価となっている。

 そして、日本のファンにとって楽しみなのが、北米からここに参戦する日本産馬ヨシダ(牡4、父ハーツクライ)だ。2015年のJRHAセレクトセールにて9400万円で購買され、ビル・モット厩舎からデビュー。5月5日にチャーチルダウンズで行われたG1ターフクラシック(芝9F)で、G1初制覇を果たしての参戦となっている。

 ブックメーカーの前売りではオッズ15〜17倍の8〜11番人気と、それほど評価は高くないが、アスコットと言えば、父ハーツクライが2006年のG1キングジョージ6世&クイーンエリザベスS(芝12F)で、あわやの競馬をして3着に入った競馬場だ。父のリベンジを果たして、ロイヤルアスコットのG1制覇ともなれば、日本競馬史に燦然と輝く金字塔となる。

 続いて、初日(19日)に行われるG1キングズスタンドS(芝5F)。ここは、英国と米国を代表する快速馬2頭による一騎打ちムードだ。

 地元勢の期待を担って出走するのが、ブックメーカー各社が3.25倍〜3.5倍のオッズを掲げている、チャーリー・ヒルズ厩舎のバターシュ(セン4、父ダークエンジェル)だ。3歳だった昨季は、5ハロン戦ばかり5戦して4勝。中でも、G1ナンソープS(芝5F)勝ち馬マーシャに4馬身という決定的な差をつけて制したG1アベイユドロンシャン賞(芝1000m)のパフォーマンスは圧巻だった。今季初戦となった前走、5月26日にヘイドックパークで行われたG2テンプルS(芝5F)も白星で通過し、盤石の態勢を整えての参戦となっている。

 大手ブックメーカーのコーラルがオッズ3.5倍でバターシュと横並びの1番人気、その他の社が3.75倍〜4倍という差のないオッズで2番人気としているのが、ウェスリー・ワード厩舎のレディオーレリア(牝4、父スキャットダディ)だ。これが3年連続の欧州遠征で、2歳時にはロイヤルアスコットのG2クイーンメアリーS(芝5F)とドーヴィルのG1モルニー賞(芝1200m)を制覇。

 3歳時にはロイヤルアスコットのG1キングズスタンドS(芝5F)を制している。すなわち、連覇を狙っての出走となるのがレディオーレリアで、4月14日にキーンランドで行われたLRジャイアンツコーズウェイS(芝5.5F)をひと叩きされて、2着となっての参戦となっている。

 初日に行われる3つめのG1が、オールドマイルコース(周回コース)を使って行われる3歳牡馬によるG1セントジェームスパレスS(芝7F213y)だ。

 英国、仏国、愛国の2000ギニーで上位に来た馬たちがここで顔を合わせる、春の欧州3歳牡馬マイル王決定戦的位置付けにある一戦だが、今年、中心視されているのは、どこの国の2000ギニーにも出走していない別路線組である。

 ブックメーカー各社が3.5倍〜3.75倍のオッズを掲げて1番人気に推している、ジョン・コスデン厩舎のウィズアウトパロール(牡3、父フランケル)が、その馬だ。ジョン・ガンサー氏の生産馬で、半兄にG1BCダートマイル(d8F)勝ち馬タマークーズがいる同馬は、1歳秋にタタソールズ10月1歳市場に上場されたものの、65万ギニー(当時のレートで約8736万円)で主取
りとなり、生産者が自ら所有することになった。

 2歳12月にニューキャッスルのメイドン(AW8F5y)でデビューし、ここを6馬身差で制して緒戦勝ちを飾ると、2戦目となった今年4月24日のヤーマスの条件戦(芝8F3y)も6馬身差で連勝。続いて出走した、5月24日にサンダウンで行われたLRヘロンS(8F)では、初めて厳しい競馬を強いられたものの、2着ガバー(牡3、父アンテロ)に3/4馬身差をつけて制し3連勝。ここは更に相手強化となるが、未知の魅力を買われて人気となっている。

 2番手グループは混戦だ。G1英2000ギニー(芝8F)2着のティップトゥウィン(牡3、父ダークエンジェル)、G1愛2000ギニー(芝8F)で1〜3着に入ったロマナイズド(牡3、父ホーリーローマンエンペラー)、ユーエスネイヴィーフラッグ(牡3、父ウォーフロント)、グスタフクリムト(牡3、父ガリレオ)、G1仏2000ギニー(芝1600m)を制した後、G1仏ダービー(芝2100m)は13着に大敗したオルメド(牡3、父デクラレーションオヴウォー)らが、オッズ6倍〜10倍の間にひしめきあっている。

 ロイヤルアスコット2日目(20日)のメイン競走として行われるのが、4歳以上によるG1プリンスオヴウェールズS(芝9F212y)で、ここには1頭抜けた人気馬がいる。

 昨年10月に同コース・同距離で行われたG1チャンピオンSを7馬身差で快勝。このパフォーマンスにレイティング130が与えられ、2017年の欧州チャンピオンとなったクラックスマン(牡4、父フランケル)が、その馬だ。

 今季初戦となったG1ガネイ賞(芝2100m)も4馬身差で快勝した同馬だったが、思わぬ大苦戦を強いられたのが、6月1日にエプソムで行われたG1コロネーションC(芝12F6y)だった。逃げた重賞未勝利の伏兵サロエン(牡4、父キャンフォードクリフス)をなかなか捕まえられず、最後の一完歩で頭差捉えるという、薄氷の勝利となったのだ。

 騎乗したF・デトーリによると、3〜4コーナー中間点からの下り坂を馬が苦にしたようで、そこで走りのバランスを崩したことが苦戦の要因とのことだった。得意のアスコットに舞台となるここでは、再び強いクラックスマンを見せることが期待されている。

 前述したG1英チャンピオンSで、離れた2着だったポエツワード(牡5、父ポエツヴォイス)が、オッズ4.5倍〜5.5倍の2番手評価だ。今季初戦となったG1ドバイシーマクラシック(芝2410m)でも、ホークビルの2着に敗れたが、5月24日にサンダウンで行われたG3ブリガディアジェラード(芝9F209y)では、後続に2.1/4馬身差を付ける完勝を見せ、9カ月半ぶりの白星を手中にしている。

 5月27日にカラで行われたG1タタソールズGC(芝10F110)を2馬身差で快勝後、ここへは追加登録をして出走予定のランカスターボマー(牡4、父ウォーフロント)が、オッズ9倍前後で3番手評価となっている。

 ロイヤルアスコット3日目以降のG1は、次週のこのコラムで展望したい。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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