「“調教”と“パドック”の達人が指南する宝塚記念の狙い目とは?」<第17回>井内利彰×古澤秀和

2018年06月18日(月) 18:00

井内利彰×古澤秀和

“調教”の井内と“パドック”の古澤という予想スタイルがまったく異なる二人だが、その予想の根底には「ユーザーが納得してくれるか」という想いがある。

予想を組み立てるうえでの判断基準は“勘”!?

―――まずお二人の予想ですが、“調教”と“パドック”とまったくベクトルの違うスタイルですよね?

井内 僕が重視するのは調教適性です。例えば今回の宝塚記念なら、栗東坂路で最終追い切りをした馬が過去10年で6頭いるので、そこで最終追いをした馬の勝つ確率が高いと考えます。そこからピックアップして、そのなかでどれぐらいの時計を出しているのかを調べて、2F25秒以下だったら、そういったタイプにさらに絞り込むわけです。絞ったなかでさらに3〜4頭残っていたら、調教パターンが好走時と同じかどうかを精査します。ある程度、段階を踏んで消去法で残った馬のなかから本命をチョイスするわけです。

古澤 僕の場合は真逆ですね(笑)。まず状況が切羽詰まっている状況ですし、限られた時間のなかで、これまでの知識やデータの蓄積を駆使して結論を出さなければなりません。馬の形や血統など判断に必要な基本的なデータはすべて頭のなかに入っていますし、前走のイメージとかも覚えています。もちろん、当日のデキも見ますが、TVでパドック解説している人よりは発汗や気配などは気にしませんし、タテの比較はしても、そこに固執はしません。重視しているのは馬場適性。その日の馬場状態で、内外の差や、馬場の重い軽いなどを見極めたうえで筋肉質か華奢か、スタミナタイプか瞬発力タイプか、など勝ち馬のタイプを重視しています。馬自身を見ているというよりも、馬場適性との相性を見ている、といったほうがいいかもしれません。

井内利彰×古澤秀和

過去のデータから勝ち馬の調教パターンを割り出し、そこから条件を絞り込んでいき、最終的に本命を決めるのが井内さんのスタイル。

―――予想を組み立てるうえでの判断基準は?

古澤 乱暴な言い方になりますが、勘です。しかし、それは単純な直感ではなく、これまでのデータや知識の蓄積から導き出されたもので、その勘のバランスを磨いていくことが大切。僕は勘というのは、意外に科学的な根拠に基づいていると思っていますし、その勘をどこまで理解しているか、勘を作る土台をどれだけ持っているか、が馬券の的中にかかわってくると思います。

井内 そういう意味では、ヴィブロスは今のところ本命候補の一頭なんですけど、ヴィブロスが宝塚記念使うのを聞いたときにビビッときたんですよ。そういうインスピレーションは、何となくの勘ではなくて、今までの経験値に基づいた勘だと自分では思っています。経験に裏付けされた勘といってもいいかもしれません。確かに誤解を招きやすい言葉ではあるんですが、その勘の精度を高めるための作業が、僕らの場合は中間の調教だったり、直前のパドックだったりするわけです。

自分が提供した予想を買うことは、プロとしての責任を果たす表現方法のひとつ

古澤 判断基準ではありませんが、人気というか、配当の旨味も考えて印は出していますね。

井内 僕は、人気は加味していません。というのも、自分の馬券であれば加味しますけど、僕の予想を見て馬券を買ってくれる人がいる以上は、配当よりも当たる確率の高いものを選ぶほうがいいと思っています。競馬教室の講師をするようになって、初心者の人がまず何が楽しいかと聞くと、当たることなんですよ。いかに馬券を買ってくれるファンの人に楽しんでもらいながら、納得して馬券を買ってもらうか。これだったら負けても仕方ないな、と思ってもらえるような馬をできるだけ選ぶようにしています。競馬にハマるかどうかというのは配当ではないと思っていて、やはり当たる経験に勝るものはないと。それこそ、お客さんと接する仕事もするようになって、ファンを増やしたいと改めて思えるようになりました。

井内利彰×古澤秀和

“古澤さんが重視するポイントは馬場適性。当日の馬場傾向を見極め、どういうタイプが連に絡んでいるか、パドックで判断する。

古澤 僕の場合、単勝でも「ホンマに来るん!?」っていうような馬を推すことがあるんです。そういう馬を推す以上、しっかり自分で馬券を買っているところは見せたいと思っていますし、それが予想を提供している人間としての務めかなと思っています。「どうせ自分で買わないから、こんな馬を推すんだろ?」と思われるのはイヤですし、馬券を買わないというのは予想で食べていっているプロとしては失格ですよ。

井内 やっぱりダンゴを打っている以上は、責任をもって馬券を買わないと。僕は、馬券を買うことが責任を表現するひとつの方法だと思っています。印を見て馬券を買う人は少なからずいるわけで、無責任な印を見て外れて「競馬って当らんから、もうやらんとこ」って思われてしまったら、それは競馬界全体にとっての損失ですからね。

古澤 そうですね。出した予想を買ってくれるお客さんのことを考えないと。実際、僕なんかネットだけでお客さんの顔が見えるわけでもないですし、しかも15分と賞味期限の短い予想なので、なおさらそれは意識しますよね。それで、最終的にはしっかり結果を出すということで、あとはその考えにお客さんがついてきてくれるかどうか、ですね。

井内 おいしいラーメン屋の難しいオヤジと一緒ですよね、客に選ばせないという…(笑)。もう「これでどうだっ!!」みたいな予想ですよね(笑)。

古澤 単複しか予想を提供していませんからね。だから、あとはそれをどうアレンジするかはお客さん次第。そのまま単複で買うか、出した印を軸にして連複系の馬券を買うか。ただ、お客さんに支持してもらうためには、結果も残さないとダメですね(苦笑)。

井内利彰×古澤秀和

3月のドバイ以来のレース復帰となるヴィブロス。休み明けとはいえ、井内さんの調教診断では買いの材料が揃っているとのこと。

調教面からはヴィブロスやミッキーロケット、馬場を考慮するとダンビュライトも浮上

―――現時点(6月12日現在)で、宝塚記念で気になっている馬はいますか?

井内 最終追い切りを栗東坂路で行っている馬で、かつ2F25秒を切ってきた馬という条件に照らし合わせると、ヴィブロス、ミッキーロケットあたりが本命候補になります。サトノダイヤモンドは今まで最終追い切りがCWでしたけど、宝塚記念の場合、CWでの最終追い切りは過去10年で1頭しか勝っていません。ただし、今回は中間の調教を坂路に変えています。この事実だけを見れば“買い”なんですけど、これまでサトノダイヤモンドがGIを勝ってきた調教パターンの最終追いは坂路ではなくCWなので、今回調教を変えたことで、適性がUPするという考え方ではないんですよ。あと気になっているのは、前走を勝ったストロングタイタン。この馬は坂路の時計がものすごく速い馬で、そういう意味では宝塚記念に向いていると思います。

古澤 僕の場合、当日の馬場傾向を見て判断するので、現段階までの馬場だったら、ディープ産駒よりミッキーロケットとかダンビュライトとか違う血統を狙いたいですね。馬体から見ればアルバートなんかも狙って面白いです。ステイヤーズSを3連覇していますけど、馬を見たら中距離馬にしか見えない。意外に、この時期の阪神は合うかもしれません。

井内利彰×古澤秀和

ステイヤーズSを3連覇し、現役屈指の長距離巧者と思われがちなアルバートだが、馬体的には中距離をこなしてもおかしくない、と古澤さんはいう。

本対談で井内さんが着用している「特製調教捜査官ポロシャツ」を、ご厚意により3名様にプレゼントいたします。下記申し込みフォームにて所定の記入事項を記載のうえ、ご応募ください。〆切は6月27日(水)。

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