豪華なフレッシュマンサイアーの仔に注目 欧米イヤリングセール

2018年07月11日(水) 12:00


◆米ではアメリカンフェイロー、欧ではムハーラー

 9日にノーザンホースパークで行われたセレクトセール1歳馬部門をもって、2018年の北半球における主要イヤリングセールのサーキットの幕が開いた。

 北米における最初の山場となるファシグティプトン・サラトガ8月1歳セール(8月6日・7日、ニューヨーク州)と、欧州における最初の山場となるアルカナ・ドーヴィル8月1歳セール(8月18日〜21日)の上場馬カタログも、それぞれ既に出揃っている。

 ファシグティプトン・サラトガのカタログ記載馬は255頭と、227頭だった1年前に比べて12%増しとなっている。

 このうち10%を越える27頭が、G1勝ち馬の弟か妹、もしくはG1勝ち実績のある母の産駒という、相変わらずの豪華な品揃えとなっている。

 イヤリングセールを見る楽しみの1つが、その世代が初年度産駒となる新種牡馬が、どのような仔を出しているかを見ることにあるが、2016年に北米で種牡馬入りしたフレッシュマンサイアーには、超大物がいる。言わずと知れた、2015年の北米3冠馬アメリカンフェイロー(その父パイオニアオヴザナイル)である。

 ボブ・バファートが管理したアメリカンフェイローの、現役時代の成績は11戦9勝。1978年のアファームド以来37年振り史上12頭目の3歳3冠を達成しただけではなく、秋にはG1BCクラシック(d10F)も制し、史上初となるグランドスラムを達成。2016年春に、クールモアグループがケンタッキーに持つアシュフォード・スタッドで種牡馬入りし、初年度の種付け料は破格の20万ドルと設定された。

 昨年の当歳馬市場にアメリカンフェイローの産駒は13頭が上場され、このうち10頭が平均価格44万5500ドル(当時のレートで約4990万円)で購買され、マーケットにおける評判も上々だった。

 ファシグティプトン・サラトガには、アメリカンフェイローの仔が15頭エントリーしている。

 中でも注目されるのが、開催初日に上場番号26番として登場予定の、母ライフアットテンの牝馬(父アメリカンフェイロー)だ。ベルモントパークでG1オグデンフィップスH(d8.5F),G1ベルデイムS(d9F)と2つのG1を制したのを含めて、通算で4重賞を制した母ライフアットテン(その父マリブムーン)の5番仔となる牝馬である。

 実を言えば、アメリカンフェイロー自身が、1歳時にファシグティプトン・サラトガセールに上場され、30万ドル(当時のレートで約2970万円)で購買されていた馬であった。おそらくは、上場される15頭の初年度産駒の半ば以上が、父を上回る価格で購買されることになりそうである。

 一方、フランスのイヤリングマーケットでは最高の品揃えを誇るアルカナ・ドーヴィル8月1歳セールには、345頭の1歳馬がスタンバイ。こちらも、前年の334頭よりは11頭増となっている。

 種牡馬のラインナップを見ると、ガリレオ、ドゥバウィ、フランケルの御三家が産駒を送り出しているだけでなく、G1仏オークス(芝2100m)を制したローレンス(牝3)を筆頭に産駒の活躍が相次ぎ「今が旬」となっているシユーニの産駒が25頭、昨年の英愛リーディング第2位のダークエンジェルの産駒が12頭上場されるなど、近年台頭著しいマーケットらしく、非常に上質の上場馬が揃っている。

 そして、2016年に欧州で種牡馬入りし、初年度産駒が今年1歳を迎えたフレッシュマンの顔触れが、近年になく豪華なのである。

 中でも、市場関係者の熱い視線が注がれているのが、2015年の欧州3歳チャンピンスプリンターのムハーラー(父オアシスドリーム)の初年度産駒たちだ。

 ハムダン殿下のシャドウェルの自家生産馬で、チャーリー・ヒルズが管理したムハーラーの競走成績は、11戦7勝。2歳時から重賞戦線に顔を出していたが、凄まじかったのが3歳シーズン中盤からの快進撃で、ロイヤルアスコットのG1コモンウェルスC(芝6F)、ニューマーケットのG1ジュライC(芝6F),ドーヴィルのG1モーリスドゲスト賞(芝1300m)、アスコットのG1ブリティッシュチャンピオンズ・スプリントS(芝6F)を4連勝している。

 2016年春にナンネリースタッドで種牡馬入りし、初年度の種付け料は3万ポンド(当時のレートで約486万円)だった。

 2017年春に初年度産駒が誕生しはじめると、出来の良い仔が多いと各国の馬産地で評判になり、昨年秋以降に欧州各国で開催された当歳市場に上場された12頭の初年度産駒のうち、11頭がギニー換算の平均価格19万7804ギニー(当時のレートで約3157万円)という、種付け料の6倍以上の価格で購買されたのだ。

 アルカナ・ドーヴィル8月1歳セールには、6頭のムハーラー産駒が登場予定だが、例えば上場番号16番の母プルデンジアの牡馬(父ムハーラー)は、G1愛オークス馬チキータの半弟だし、上場番号23番の母ロイヤルハイネスの牡馬(父ムハーラー)は、母がG1ビヴァリーディーSの勝ち馬である。いずれも、高値を呼ぶことは間違いなさそうである。

 この他、2015年のカルティエ賞欧州年度代表馬ゴールデンホーン(その父ケイプクロス)の初年度産駒が8頭、2014年の欧州2歳牡馬チャンピオンにして、2015年の欧州3歳チャンピオンマイラーのグレンイーグルス(その父ガリレオ)の初年度産駒が8頭、アルカナ・ドーヴィル8月1歳セールにはスタンバイしており、大きな注目を集めることになりそうだ。

 フレッシュマンサイアーの産駒たちにマーケットがどんな評価を下すかを注視しつつ、欧米イヤリングセールの動向をモニターしていきたいと思う。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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