ヤングジョッキーズシリーズ前半を振り返る

2018年08月28日(火) 18:00


◆昨年は“地の利”が結果につながったが今年は…

 ヤングジョッキーズシリーズ・トライアルラウンドは、先週23日に行われた門別ラウンドがちょうど折り返し。東日本・西日本ともに3戦ずつを終えた。昨年は4月下旬のスタートだったが、今年は2カ月近く繰り下がって6月19日の船橋が初戦。ここまで2カ月はあっという間だった。

8月23日、トライアルラウンド門別の出場騎手

 長期にわたるシリーズだけに、さまざまな理由による欠場、出場騎手変更は避けられないが、今年は昨年以上に多い。

 JRAでは、坂井瑠星騎手がオーストラリアで騎乗しているため出場辞退。武藤雅騎手が負傷のため8月15日盛岡、23日門別を欠場。森裕太朗騎手が負傷のため8月21日金沢を欠場となった。この中では、騎乗変更で門別に出場した井上敏樹騎手が勝利を挙げ、このシリーズ昨年から通じての初勝利というラッキーなこともあった。

 地方では、藤田凌騎手(大井)が負傷のため6月19日船橋を欠場したが、その後当初は出場予定ではなかった8月23日門別に騎乗変更で出場。田村直也騎手(兵庫)が疾病のため8月21日金沢を欠場。山口以和騎手(佐賀)、北野壱哉騎手(大井)がそれぞれ自己都合という理由で出場辞退となっている。北野騎手は6月19日船橋で、山口騎手は6月27日笠松で、それぞれ勝利を挙げていただけになんとも残念。

 昨年からはトライアルラウンドのポイントの計算方法が大きく変更された。昨年は獲得ポイントの合計を騎乗回数で割った平均ポイントで争われた。さまざまな理由で騎手ごとの騎乗回数を同じにすることが困難なため、平均点というのは公平にも思われるが、こうしたシリーズでポイントの平均をとるということにはあまり馴染みがなく、理解されにくかった。

 そして今年は、騎乗全レースのうち上位ポイントを得た4レースの合計ポイントで争われることになった。当初予定されていた騎乗回数は騎手によって5〜8戦。たとえば極端な例を挙げると、8戦騎乗する騎手にとっては4戦は最下位でも、それ以外の4戦を勝利すれば最高ポイントが得られる。ところが5戦しか騎乗しない騎手は1戦しか失敗が許されない。騎乗回数が多い騎手のほうが明らかに有利と思われる。

 しかしながら、たとえばJRAでは、坂井瑠星騎手の欠場によって、当初は6戦の予定だったJRA西日本の騎手3名(義英真、西村淳也、三津谷隼人)にそれぞれ2戦ずつ騎乗機会が増え8戦ずつの騎乗予定となった。怪我などによる欠場でも同様のことが起こる可能性はある。たしかに怪我は避けられない面もあるが、怪我や病気などがなく、常に騎乗できる状態にある騎手には余分に騎乗機会が巡ってくるかもしれないということ。そういう意味では、ある程度公平性は保たれているといってもいいかもしれない。JRAの横山武史騎手はすでに騎乗予定の6戦を終えているが、JRA騎手に誰か欠場が出れば追加での騎乗機会が巡ってきて、さらに上位のポイントを加算できる可能性もあるということになる。

 昨年のトライアル11ラウンド全22戦では、JRA、地方の騎手がそれぞれ11勝ずつ星を分けたが、さて、今年ここまではどうだろう。

 東日本は、船橋、盛岡では4戦いずれも地方騎手が勝ったが、門別ではJRAが2勝と巻き返した。西日本は笠松、高知でそれぞれJRA、地方が1勝ずつと星を分けたが、金沢では松木大地騎手(高知)が2勝の活躍を見せた。ここまで6ラウンド12戦のトータルでは、地方8勝、JRA4勝となっている。

 ちなみに昨年は地方騎手11勝のうち8勝が開催場の所属騎手(期間限定騎乗中の所属を含めれば9勝)と、いわば“地の利”が結果につながった。しかし今年は、地方騎手8勝のうち地元騎手の勝利はひとつもない。ただ金沢で2勝を挙げた松木騎手は、昨年金沢で期間限定騎乗をしていたので、その経験を生かしての2勝ともいえそうだ。

 そして気になる馬券の配当だが、不確定要素の多い騎手交流戦はやはり難しい。昨年はトライアルラウンド全22戦の3連単の平均配当が10万円を超えたが、今年もここまで12戦の3連単平均配当は14万1916円となっている。実際に10万円超の配当は2度しかないが、高知第1戦で12頭立て12→11→1番人気という決着で129万8950円というビッグな配当があり、それが全体の平均を引き上げている。

 とはいえ1番人気馬は堅実で、ここまで12戦のうち、単勝1番人気が馬券圏内(3着以内)を外したのはわずか2回だけ。つまり、1番人気の1頭軸3連単マルチで、かなりの確率で高配当にありつけるかもしれないということ。

 自分事で恐縮だが、ヤングジョッキーズシーズ・トライアルラウンドは、門別を除いてグリーンチャンネルの『地方競馬中継』で解説を担当させていただいていて、1番人気の1頭軸、相手6頭の3連単マルチ90点買いで、5万馬券が2つ的中した。実際に馬券を買うタイミングで軸が1番人気かどうかの確信はないが、結果的にそうなっている。経験豊富なトップジョッキーばかりの騎手交流戦でも馬券はなかなか難しいが、若手騎手の交流戦ともなれば不確定要素はさらに増すことになるだけに、馬券は勇気を出して思い切った買い方をしたほうがよさそうだ。ということを2年目のこのシリーズで学んでいる。

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斎藤修

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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