2018年10月30日(火) 18:00
そのだ金曜ナイターが10月26日で終了し、岩手競馬ではこの秋から始まった盛岡の薄暮開催(といっても最終レースはほとんどナイター)が11月5日まで、その後は開催を水沢に移す。地震の影響で1週開催が伸びた門別も11月15日が今シーズンの最終日。地方競馬には駆け足で冬がやってくる。
9月29日に始まった盛岡の薄暮開催は、12レース施行の日では最終レースの発走が18時10分か15分。昼間開催だった昨年まで、盛岡の秋開催は日没の関係で週を追うごとに最終レースの時刻が早まり、10月初旬は16時40分だったものが、盛岡開催最終週の11月初旬には15時50分にまで早まっていた。
果たして、その薄暮開催の効果は、おおいにあった。
岩手競馬の昨年10月の1日平均の売得金は2億4736万5800円だったのが、今年10月は、なんと3億7495万4000円。前年比で実に151.6%という伸びとなった。ちなみに4〜9月の前年同期比は111.0%だったから、10月の伸びがいかに顕著だったかがわかる(なお今年10月の売得金は著者調べ、それ以外はNARの発表による。以下同)。
その10月の売上では特需が二度あった。まずは1日(月)。この日は週末の台風の影響でJRAで代替開催が行われることになり、しかし交通事情によってさらに翌日に延期。本来予定がなかったJRA-IPATでの発売が実施された。そしてこの日の地方開催は、帯広、盛岡、船橋と、前日の開催が延期された佐賀の4場。帯広と船橋はナイター開催で、昼間から薄暮の開催は佐賀と一緒だったが、佐賀はJRA-IPATでの発売が行われず、したがって昼間は盛岡の一人勝ち。その結果が、4億5900万円余りという売上となった。
二度目の特需は南部杯の開催。照明設備のなかった昨年まで、体育の日に行われる南部杯の発走は最終12レースで16時40分。JRAの最終レース(東京)が16時25分だから、開催としてはまだ被っている時間帯。それが薄暮開催となった今年は南部杯の発走が17時30分で、さらに18時10分発走の最終12レースも行われた。で、今年の南部杯1レースの売上は約11億4900万円。従来のレコードだった昨年の約9億1400万円から125.7%という伸びとなった(東日本大震災の影響で東京競馬場で行われた2011年の約70億円は除く)。
台風などの影響による10月1日(月)の特需は偶然に偶然が重なっての産物だったが、南部杯当日の伸びはある程度予測されたもの。それらの特需があったにしても、先に示したとおり、前年同月比で151.6%という伸びは、期待通り、というか期待以上といえるのではないか。
ここ何年か地方競馬全体で売上が伸びていて、それはJRA-IPATでの馬券発売によるところも大きいが、それだけが要因というわけではない。というのは、IPATでの発売が行われていないばんえい競馬でも、1日平均の売上が一時期6700万円ほどまで落ち込んでいた(2011年度)のが、今年度(4〜9月)は1億5000万円余りまで回復。
またこの10月の盛岡の売上だけを見ても、IPATでの発売がない15日(月)に約3億4900万円、29日(月)に約3億6300万円という高い売上を記録していたことでもそれがわかる。じつはこの月曜日の売上は、先に挙げた台風の影響と南部杯の特異日を除くと、10月の盛岡の売上ではトップ2だった。つまり、IPATでの売上によらずとも、他場との競合を避ければそれなりの売上が見込めるということ。
岩手競馬は2007年に廃止の危機があり、なんとか回避して存続したと思った矢先、2011年には東日本大震災に見舞われた。それらの影響もあり、岩手競馬は地方競馬の中でも売上回復のペースが遅かった。しかしここに来てようやく、薄暮開催によって自力で起死回生のひとつの手段を見出したといえそうだ。
とはいえ盛岡の薄暮開催は、年間を通してみればごく限られた季節の効果でしかない。地方競馬全体の売上を大きく左右する南関東では浦和以外の3場がナイター開催となり、中でも船橋は通年ナイターを打ち出した。2022年に移転が予定されている名古屋競馬でも、移転後はナイター開催が計画されている。そうなると、他場との競合を避けた開催日、開催時間というのも限定的とならざるをえない。
さてそうなった先、地方競馬にとってあらたな金鉱脈がどこにあるのかは今から考えておく必要はあるだろう。
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斎藤修
1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。
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