「ありがたく出させていただきます」ホッカイドウ競馬のハッピーグリン、ジャパンC参戦へ

2018年11月20日(火) 18:01

馬ニアックな世界

▲ジャパンCに参戦するハッピーグリンの田中淳司調教師と会田裕一オーナー(右) (撮影:大恵陽子)

今週のジャパンカップに地方・ホッカイドウ競馬からハッピーグリンが参戦予定です。1月にセントポーリア賞で素晴らしい末脚を発揮し勝利したものの、その後クラシック出走を目指し挑戦したスプリングSやプリンシパルSではともに敗戦。地方馬としてGI出走の難しさを感じていたところ、意外にも早くGI出走が叶いました。初めてとなる2400mは? いまの状態は? 今シーズン、ホッカイドウ競馬の年間最多勝記録を更新した田中淳司調教師にお話を伺いました。

今春は果敢にJRAに挑戦を続けたハッピーグリン

 日本ダービーへの優先出走権をかけたプリンシパルSで4着に敗れた直後、田中師はこう話しました。

「何とか皐月賞もダービーも出走させたいという思いで挑戦しましたが、この馬はこれで終わりではないので、重賞を獲れるよう北海道に帰ってケアをしたいです」

 今春は府中でのセントポーリア賞勝利に始まり、スプリングS8着、プリンシパルS4着と、ホッカイドウ競馬所属でありながら果敢にJRAに挑戦を続けたハッピーグリン。

 日本ダービーへの夢は閉ざされたものの、7月に巴賞3着を挟んで札幌でSTV賞を勝利。JRA2勝目を挙げると、9月23日には地方・盛岡で重賞・岩手県知事杯OROカップを制覇。実はこれがハッピーグリンにとって嬉しい重賞初制覇となりました。

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▲札幌のSTV賞を勝利、JRA2勝目を挙げた (C)netkeiba.com

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▲口取りにはたくさんの関係者がおさまった (C)netkeiba.com

 その後、ふたたびJRA東京競馬場に遠征し、富士Sで11着。

「ペースが流れない中、4コーナーでは後方で展開的に厳しかったかもしれないですね」

 次なる目標の1つに今週のキャピタルSが挙げられましたが、賞金や登録頭数などから選定されているジャパンカップに出走できそうだということで、GI初挑戦の機会が巡ってきました。

 これまで経験した最長距離はプリンシパルSの2000m。未知への挑戦となります。

「正直、適性があるのはマイルかなと思っていましたが、1800mの巴賞では勝ち馬からアタマ+クビ差の3着。もう少し距離を伸ばしてもいいかなとは思います。人間だけが思うものかもしれないですしね。これまでこういう距離を使っていませんが、血統的にも長い距離はいいという話も聞いていましたから、あとは実際にレースで走ってみてどうかですね。そういうのを試す意味でも、メンバーはかなり強いですが、いいかなと思います」

馬だけでなく、所属騎手も新人最多勝記録を更新

 2歳秋頃までは腰に疲れが溜まりやすい面がありましたが、今春には「馬が強くなってきた」と田中師。門別競馬場の坂路(ウッドチップ)を1日に3本駆け上がるなどしてさらなるパワーアップを図っていました。

 そして11月11日には4日後に重賞・道営記念(門別)に出走するハッピースプリントと元JRAダートオープン馬・バスタータイプとダートコースで3頭併せを敢行。

▲11月11日の3頭併せ、内からバスタータイプ、ハッピーグリン、ハッピースプリント

「馬場で追い切ったのは2歳の時に1回あったかな? というくらい。ずっと坂路でやっていましたが、速い馬と併せてみてどれだけの動きをするのかなと思って、久しぶりに馬場(ダート)で追い切りました。結果、ハッピースプリントには遅れましたが、ダート馬ですし調教ですごく動く馬ですから。ハッピーグリンもいい時計が出ていて、動きも良かったと思います。状態を維持できています」

 このあと21日(水)に追い切られ、前日24日(土)に東京競馬場に入る予定です。

 田中師はハッピーグリンで勝利したセントポーリア賞が念願のJRA初勝利。その勢いに乗ってか、4月に開幕したホッカイドウ競馬では自身が2016年にマークしたシーズン最多勝記録を17勝更新し、142勝で今月15日の閉幕を迎えました。

 さらに、田中厩舎から今春デビューした新人・落合玄太騎手もホッカイドウ競馬での新人最多勝記録を更新。好調さがうかがえます。

「(落合騎手は)乗り馬に恵まれているのもあるし、真面目な子だからみんなの信頼を得て、他の厩舎でもたくさん乗せていただけたおかげです。自厩舎の勝ち鞍は最多勝リーディングをとれましたが、地元でもっと重賞を勝ちたかったですね」

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▲管理馬も弟子も活躍した今シーズン、現状に満足せずさらに上を目指す田中調教師 (撮影:大恵陽子)

 新記録をマークした指揮官は引き締まった声でそう話しました。来シーズン、門別競馬場で多くの重賞制覇も期待したいところですが、オフシーズンもハッピーグリンを筆頭に楽しみな馬の出走がありそうです。

 まずは今週末のジャパンカップ。

「せっかくのGI。ありがたく出させていただきます」

 あわよくば記念出走だけでなく、あの末脚を期待しています。

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大恵陽子

競馬リポーター。競馬番組のほか、UMAJOセミナー講師やイベントMCも務める。『優駿』『週刊競馬ブック』『Club JRA-Net CAFEブログ』などを執筆。小学5年生からJRAと地方競馬の二刀流。神戸市出身、ホームグラウンドは阪神・園田・栗東。特技は寝ることと馬名しりとり。

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