今はなき競馬場を訪ねる地図の旅

2018年12月08日(土) 12:00

何らかの“証拠”を発見するのが楽しみです

 今、あることにハマっています。

 それは、なくなってしまった競馬場の跡を歩いて、その名残を写真に収めること。「なんだ、浅野靖典サン(=『廃競馬場巡礼』の著者で、グリーンチャンネルの『競馬ワンダラー』でも廃止された競馬場の跡をレポート)のマネじゃないか!」って?そう言われてしまえばそうなんですけど、これがなかなかおもしろいんです。

 今年、週刊競馬ブックに「今はなき競馬場を訪ねる地図の旅」という記事を連載したのがそのきっかけになりました。それに載せるため、国土地理院の関東測量部測量成果閲覧室で古い地図を大量に入手。さらに、昔あった競馬場の所在地を航空写真や独自の地図で紹介しているホームページがいくつかあるので、それらを照らし合わせながら、競馬場跡が残っているところを訪ね歩いているわけです。

 これまでに、青森県の青森と金木(かなぎ)、秋田県の後三年と大上(おおあげ)、山形県の酒田、茨城県の荒川沖と取手、千葉県の松戸、新潟県の関屋と柏崎、神奈川県の戸塚、愛知県の岡崎、岐阜県の養老、島根県の松江に行ってきました(東京の目黒と神奈川の根岸はすでに“踏破”済み)。年内に岡山県の倉敷、香川県の仏生山(ぶっしょうざん)、奈良県の平城、京都府の長岡、茨城県の古河、群馬県の伊勢崎などに行く予定で、年明けには九州や四国の数カ所を巡るつもりです。

 競馬場跡と言っても、建物などが残っているのはごくわずか。それ以外は、コースの跡と思われる道しかありません。でも、それがおもしろいんですね。何の変哲もない住宅街の中に、コーナーの跡らしきカーブが突然現れます。「ブラタモリ」でタモリさんが“坂”に興味を抱くのと同じで、私はそういう“カーブ”に惹かれるわけです。

 中には、そこに競馬場があったことを物語る記念碑など、何らかの“証拠”があるところもあって、それらを発見するのも楽しみ。しかしながら、とにかく廃止されてから6〜70年以上経っている競馬場がほとんどなので、何かが残っていることが奇跡と言ってもいいくらいです。訪ね歩けるところは、そう多くないでしょうね。

 なんていう日々を過ごしていたら、つい先日、日本野球機構(プロ野球=NPB)の公式サイトに「球跡巡り」という特集があるのに気づきました。これまでNPBの公式戦が開催されたすべての球場のリストが載っているほか、それらを訪ね歩いて書かれたコラムも連載されています。

 これがまたおもしろいので、ぜひアクセスしてみてください。まぁ、プロ野球の場合は全試合のスコアが残っているはず。それらを調べ尽くせば、過去にどこの球場でどういう試合が行われたかはすべて明らかにできます。ところが、競馬には記録がなく、わからないことが多すぎて…。プロ野球のようにいかないのが何とも歯がゆく思えてなりません。

バックナンバーを見る

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

矢野吉彦

テレビ東京「ウイニング競馬」の実況を担当するフリーアナウンサー。中央だけでなく、地方、ばんえい、さらに海外にも精通する競馬通。著書には「矢野吉彦の世界競馬案内」など。

関連情報

新着コラム

コラムを探す