牡牝の差よりもそれぞれの課題をクリアできるか

2018年12月15日(土) 12:00

気性面の課題を克服し女傑の道へ

 今年の朝日杯FSは、牝馬のグランアレグリアがクローズアップされている。どうするかだが、春のクラシック戦線ならともかく、この早い時期では、まだ牡牝の差は気にしていない。実際にサウジアラビアRCでは牡馬を一蹴したのだから、現時点での評価だけを考えてどうするかだと思っている。それよりも、それぞれが抱えている課題があって、それをどう克服するかが第一。少しでもステップアップして年を越したいというところだろう。

 牝馬がここを使う理由がどこにあるか。伝えられているように、気性的にムズカシイので慣れているルメール騎手が騎乗できることを最優先し、初の遠征に備えたのだが、その結果がどう出るか。秋に入り馬体重が増えて成長を見せ、大きなフットワークでスピードに乗るレースが現実にできたら、この牝馬は只者ではない。

 2年前にフランケル産駒の牝馬ミスエルテが一番人気で注目されたが、3戦目のその時がテンションが一番高くなってしまい、スピードに乗せられず4着に終っていた。フランケルの血すじに期待したが、課題をクリアする状況ではなかったのだった。

 グランアレグリアはディープインパクトだが、話題のロードカナロアからは、3戦全勝のファンタジストと3戦2勝のケイデンスコールが出てきた。ファンタジストは重賞2連勝だが初のマイル戦というテーマがある。スピードがあり操縦性が高いという資質と、長距離輸送した前走でも体重が増えていたという成長分を、武豊騎手がどう生かすか。

 ケイデンスコールは、3戦ともレース最速の上がりをマークしたことが最大の武器だ。今の阪神コースになって過去4戦、全てそういう馬が勝っているからだ。成長を促す休養を取ったことが吉と出るかどうか。

 あとは、心身ともに粗削りでゲート、折り合いが課題のドゴール、じっくり脚をためて運びたいマイネルサーパス、スローペースに泣いていたエメラルファイトなどは、ペースが速くなればという可能性を秘めている。そしてやっぱり現時点での完成度の高さで3戦3勝のアドマイヤマーズ。大きく崩れる馬ではないだろう。牝馬が勝てば女傑の道へ、牡馬なら一歩前進と考えていい。店先に目にするシクラメンの鉢。その葉の密生した中からすっくと伸びて花びらが反り返って上を向くように、紅の炎を見てみたい。

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長岡一也

ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。

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