【川田将雅×吉田隼人×藤岡佑介】同期対談(3)『外国人騎手の流れに歯止めをかけたい日本人騎手のプライド』

2018年12月26日(水) 18:02

with 佑

▲プチ同期会の最終回、外国人騎手の席巻に日本人騎手としてどう立ち向かうべきか

川田将雅騎手と吉田隼人騎手をゲストにお迎えしての「競馬学校20期生」プチ同期会も、今回が最終回。この秋特に目立った外国人騎手の活躍に、日本人騎手としてどう立ち向かうかを真剣に話し合う3人。川田騎手は「(日本人騎手で)一緒に立ち向かっていける構図を」と訴えかけます。「昔も今ももがいてる」という隼人騎手に、ふたりが送った熱い熱いエールとは。

(取材・文=不破由妃子)

※次回の更新につきまして。1/2(水)は休載させていただき、1/9(水)に再開させていただきます。

GIをもう一度勝ちたいと思うなら、本場へ

佑介 この『with 佑』が始まったのが2016年4月で、初回のゲストが将雅。そのときに、「トップを狙える位置にいるのに、あきらめてしまっているように見える」というような話をしたけど、その頃と比べて、最近の将雅はギラギラした感じが戻ってきたよね。

川田 そうかもしれない。この秋のGIも、チャンスのある馬に乗せていただく機会が多かったので、何とかしなければ…と思って外国人ジョッキーたちに立ち向かってきた。でも、壁は厚かったね。アーモンドアイは強すぎる(笑)。

with 佑

▲記念すべきゲスト第1号としてご登場いただいた時の川田騎手

隼人 外国人ジョッキーは巧いから、いい馬が集まるのは当然なんだけど、評価が一括りになってしまうところはあるよね。たとえば、5人の外国人ジョッキーがいたとして、そのうちの一人がいい騎乗をすると、「さすが外国人ジョッキー!」ってなるでしょ。

佑介 そういう一面はあるとしても、この状況をどう捉えるかというのは、俺たち日本人ジョッキーにとってすごく重要なことだと思ってる。今の状況を仕方ないと思ってやり過ごすのか、あるいは将雅のように、何とかしたいと思って自分にできることを精一杯やろうとしているのか。

 考え方は人それぞれだから、どんな捉え方をしようと否定はしないけど、このままではいけないと思って何かに取り組んでいる人とそうではない人の差は、これからどんどん広がっていくと思う。

 取り組みといえば、吉田君が栗東に来たこともそのひとつだしね。関西馬の出走が多い暮れの中京開催を視野に、関西でも顔を売っておこうということでしょ?

隼人 うん。とにかく一生懸命に乗って、ひとつでも多く勝ちたいというだけなんだけどね。なにしろ去年のキャリアハイ(81勝)から、今年は(3年目以降で)一番勝てない年になってしまったから。なんとかしようと頑張っているけど、すぐに結果が出るもんじゃないし…。昔も今も、ずーっともがいてるよ(苦笑)。

佑介 でも、動き出したことが重要なわけで。いろいろ難しいことを承知でいうけど、吉田君には持てる騎乗技術をフルに発揮できる環境をまずは作ってほしいな。

 幸いにも、俺たちには将雅という引っ張っていってくれる存在がいるわけだから、そこを目標に頑張ってさ。だから、今は立場が違っても将雅と同じ気持ちでいたいし、来年の秋には将雅と同じ位置で立ち向かえるよう、頑張りたいと俺は思ってる。

隼人 みんなすごいなぁ。僕なんて立場が違い過ぎて…。

with 佑

▲「みんなすごい」と言いつつも、いい刺激を受けて目を輝かせた隼人騎手

佑介 それぞれ立場が違うから一概には言えないけど、そこはさ、嘘でも「負けたくない!」って言い続けなくちゃいけない仕事だと思うよ。GIの日とか、朝から「日本人、何やってんだよ!」みたいな野次が飛んでてさ。そう言うっていうことは、どこかで「頑張れよ」って思ってくれてるんだよなぁって俺は受け止めた。だって興業として見たら、今のままでは面白くないと思うもん。

川田 俺が吉田君に期待することは、もう一度ローカルで数を勝って注目を集めて、その勢いに乗って、本場でもやれるところを見せつけてほしい。本場にくれば勝ち鞍は落ちるだろうし、すぐにいい馬に乗せてもらえるわけじゃないけど、軌道に乗るまでそこは辛抱してほしいなって思う。

 関東でいえば田辺先輩だって辛抱したからこそ今の位置にいるわけだし、そこで辛抱しないことには大きな舞台で乗せてもらえないからね。俺がこういうふうに言うのも、もったいないなと思うから。せっかく高い騎乗技術を持っているんだからさ。

佑介 田辺先輩は、中舘さんの「中央に行け! 今行かなかったらいつ行くんだ!」っていう言葉に背中を押されたって言ってたよ。

隼人 そうかぁ。本場に移るタイミングがいつだったのか…、正直わからなかったんだよね。

川田 本場で戦っているジョッキーですら、GIに乗るのが難しい時代だからね。吉田君がどこを目指しているかによるけど、GIをもう一度勝ちたいと思うなら、そこにいたら絶対にチャンスは回ってこないよ。

隼人 川田は強いなぁ。くじけないよね、昔から。

川田 俺はくじけないよ。でも、吉田君だって行動を起こしたわけだから。俺としては、同世代に頑張ってほしいんだよ。なぜなら、一緒に立ち向かっていける構図を作ってほしいから。

with 佑

▲「俺はくじけないよ」と力強く語った川田騎手

隼人 うん。突破口を見つけたいね。今日はふたりからたくさん刺激をもらったよ。

佑介 この前、将雅とも話してたんだけど、どの馬に乗れるか、次は誰が乗るのかとかではなく、優先的に乗せたいと思われる立場にならなアカンなって。騎手として信頼を勝ち得て、佑介を乗せたいと思ってもらえるような騎手になること。それが俺の目指すところかな。

川田 あきらめたら終わりだからね。とはいえ、すぐにトップに立てるわけではない。それこそ年単位の長い時間をかけて、少しずつ。俺は、今はそのための時間を過ごしていると思っている。

佑介 3年後、5年後、どう状況が変わっているか…。20期生の時代がきているかもしれないし、また同期で対談できればいいな。

with 佑

▲「また同期で対談できればいいな」と佑介騎手

隼人 僕の代わりに津村がここに座ってるかもね(笑)。

佑介 まったく吉田君は…(苦笑)。ふたりとも今日はありがとう。そして読者のみなさん、2019年も「with 佑」をよろしくお願いします!

(文中敬称略、了)

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「with 佑」とは

JRAジョッキーの藤岡佑介がホスト役となり、騎手仲間や調教師、厩舎スタッフなど、ホースマンの本音に斬り込む対談企画。関係者からの人望も厚い藤岡佑介が、毎月ゲストの素顔や新たな一面をグイグイ引き出し、“ここでしか読めない”深い競馬トークを繰り広げます。

藤岡佑介

1986年3月17日、滋賀県生まれ。父・健一はJRAの調教師、弟・康太もJRAジョッキーという競馬一家。2004年にデビュー。同期は川田将雅、吉田隼人、津村明秀ら。同年に35勝を挙げJRA賞最多勝利新人騎手を獲得。2005年、アズマサンダースで京都牝馬Sを勝利し重賞初制覇。2013年の長期フランス遠征で、海外初勝利をマーク。2018年には、ケイアイノーテックでNHKマイルCに勝利。GI初制覇を飾った。

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