北米における代表的な年度表彰「エクリプス賞」が発表

2019年01月30日(水) 12:00

3冠馬か、最強の古馬か。

 週刊サラブレッドレイシングポスト19年1月30日今年で48回目の開催を迎えた、北米における代表的な年度表彰「エクリプス賞」の授賞セレモニーが、1月24日にフロリダ州のガルフストリームパークで行われ、各部門の受賞馬と受賞者が発表された。

 3冠馬か、最強の古馬か。

 2018年のエクリプス賞において最大の注目を集めていたのが、年度代表馬を巡る争いだった。競馬ファンには改めてご説明するまでもなかろうが、18年の北米には3歳3冠を達成したジャスティファイというヒーローが出現した。

 3歳3冠とは、北米競馬史上で13頭しか成しえていない偉大な記録だが、ジャスティファイはこれを、デビューから一度も負けることなく達成。無敗の3冠制覇は、1977年のシアトルスルー以来41年ぶり史上2頭目という、歴史的偉業だった。

 なおかつ、だ。ジャスティファイがデビューしたのは18年の2月18日で、2歳時に出走経験がない馬によるケンタッキーダービー制覇は、1882年のアポロ以来136年振り史上2頭目の快挙で、まさしく気の遠くなるような歳月を乗り越えて、新たな歴史を書き加えたのだった。

 ベルモントS後に右前脚の球節を傷めてしまい、7月には引退が発表されたため、現役生活はわずか5か月で終焉を迎え、古馬との世代間を越えた戦いに臨むことがなかったものの、普通の年であれば、年度代表馬争いに議論の余地があろうはずもない実績を残したのがジャスティファイだった。

 ところが、18年の北米に出現した傑物は、ジャスティファイ1頭だけではなかったのだ。1年を通じて、古馬戦線を圧倒的な力量で支配したアクセレレイトが残した成績も、普通の年であれば充分に年度代表馬の資格があるものだった。

 18年の戦績、7戦6勝。6勝は全て重賞で、このうち5勝はG1だった。3月のG1サンタアニタH、5月のG1ゴールドカップアットサンタアニタS、8月のG1パシフィッククラシックという、西海岸古馬中距離ダート路線の3大競走を完全制覇したのは、06年のラヴァマン、13年のゲイムオンデュードに次ぐ、史上3頭目の快挙だった。

 中でも圧巻だったのがパシフィッククラシックで、2着馬パヴェルにレース史上最大となる12.1/2馬身差をつける大勝。1月23日に発表された世界ランキングでは、このパフォーマンスがレイティング128と評価され、世界ランク第3位、ダート部門世界首位の座を手にしたのである。
そのうえで、近年で最も多彩な顔触れが揃ったと言われた、北米ダート界の頂点を決めるG1BCクラシックも完勝したのである。

 ジャスティファイか、アクセレレイトか。競馬関連の各メディアは、当事者を含めた業界内外の声を集めるなどして「どちらが相応しいのか」との論争をあおり、関係者やファンもまたこれに乗っかって、かまびすしく声を上げていたのだった。だが、蓋を開けてみれば、結果はジャスティファイの圧勝だった。投票(1位票)は、総数249票の76.7%にあたる191票をジャスティファイが獲得。一方のアクセレレイトは54票にとどまったのだ。つまりは、3冠の重みを重視した関係者が多かったということであろう。

 ジャスティファイは、最優秀3歳牡馬の部門では満票の249票を獲得。アクセレレイトは、最優秀古馬ダート牡馬を巡る投票で245票を集め、この部門での受賞を果たしている。

 また、ジャスティファイを生産したジョン・ガンサー氏が、同馬以外にも、G1アメリカンオークス勝ち馬コンンペティションオヴアイディアス、ロイヤルアスコットのG1セントジェームズパレスSを制したウィズアウトパロールらを生産した実績を加味され、最優秀生産者賞を受賞。

 一方、アクセレレイトの馬主フロニス・レーシング社が、同馬以外にも、カタリナクルーザー、ギフトボックスといった重賞勝ち馬を所有したことを評価され、最優秀馬主となっている。

 接戦となったのは、芝部門だった。芝の牡馬部門では、投票がなんと12頭もの異なる馬たちに分散。

 中でも上位を占めたのが、G1スウォードダンサーSを含めて3重賞を制したグロリアスエンパイア、G1BCターフスプリントを含む2重賞を制したストーミーリベラル、G1BCマイルを快勝した英国調教馬エキスパートアイだった。

 結果は、ストーミーリベラルが85票、エキスパートアイが66票、グロリアスエンパイアが43票で、ストーミーリベラルの受賞と決した。

 芝の牝馬部門は、逆に投票が2頭に集中した。G1BCターフを快勝し、史上初の凱旋門賞・BCターフの同一年制覇を成し遂げた英国調教馬エネイブルと、G1BCフィリー&メアターフ、G1ビヴァリーディーS,G1ダイアナS、G1ジェニーワイリーSと、4つのG1を手中にしたシスターチャーリーの2頭である。

 結果は、シスターチャーリーが130票、エネイブルが119票で、シスターチャーリーの受賞となった。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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