チャンピオンハードル&クイーンマザーチャンピオンチェイス展望

2019年02月27日(水) 12:00

絶対王者の戦い方から目が離せない/チェルトナムフェスティヴァル

 欧州における障害シーズンのハイライトとなるチェルトナムフェスティヴァルの開催が、3月12日〜15日に迫っている。

 このコラムでは今週と来週の2回に分けて、開催4日間のそれぞれのメイン競走を展望していきたい。

 まずは、開幕日となる12日に組まれた、ハードル2マイル路線の最高峰となるG1チャンピオンハードル(芝16F87y)から。

 ブックメーカー各社がオッズ2.625〜2.875倍で1番人気に推すのが、このレース3連覇を目指すブーヴェールデール(セン8、父クリヨン)だ。

 仏国産馬で、祖国のナショナルハントフラットを2戦した後、14/15年シーズンの後半から英国の名門ニッキー・ヘンダーソン厩舎に所属しているのがブーヴェールデールだ。

 ヘンダーソン師の下でもナショナルハントフラットを2戦した後、15/16年シーズンからハードルを跳び始め、このシーズンは4戦してエイントリーのG1トップノーヴィスハードル(芝16F103y)を含む3勝。

 16/17年シーズンは5戦し、G1チャンピオンハードルを含む5連勝を飾り、この路線の頂点に上り詰めた。17/18年シーズンは4戦し、連覇を果たしたG1チャンピオンハードルを含む4連勝。今季初戦となったG1ファイティングフィフスハードル(芝16F98y)も8馬身差で制し、連勝記録を11に伸ばした。

 ところが、続いて出走した昨年暮れのG1クリスマスハードル(芝16F)で、牝馬のヴァーダナブルーに短頭差競り負けて2着に敗れ、16年3月以来2年9か月ぶりの敗戦を喫し、ファンをおおいに驚かせることになった。

 しかし、2月2日にサンダウンで行われたLRコンテンダーズハードル(芝15F216y)ではしっかりと勝利を収め、入障以来の成績を16戦14勝としている。

 思わぬ取りこぼしはあったものの、この路線の最強馬との評価に変わりはなく、ここも同馬の1本かぶりになるのかと思いきや、前売りマーケットの現状はそうではない。

 社によってはブーヴェールデールと横並びの1番人気か、そうでなくても僅差の2番人気に推しているのが、牝馬のアップルズジェイド(牝7、父サドラーメイカー)である。

 この馬も仏国産馬で、祖国でハードル1戦1勝の成績を残した後、15/16年シーズンは愛国の伯楽ウィリアム・マリンズ厩舎に在籍。このシーズンは4戦し、エイントリーのG14歳ジュヴェナイルハードル(芝16F209y)など2つのG1を含む3勝をマークした。

 16/17年シーズンから若手の旗頭ゴードン・エリオット厩舎に移り、このシーズンは6戦し、牡馬を撃破したG1ハットンズグレイスハードル(芝20F)、チェルトナムフェスティヴァルのG1メアズハードル(芝19F200y)など3つのG1を制し、牝馬ハードル路線の女王となった。

 17/18年シーズンも、G1ハットンズグレイスハードル連覇を果たし、更にはG1愛クリスマスハードル(芝24F)でも牡馬を破るなど、前半は絶好調だったが、後半は息切れをして、G1メアズハードル3着、G1メアズチャンピオンハードル(芝20F)3着と、牝馬相手に連敗を喫した。

 こうして迎えた今季、ここまでいずれも牡馬相手の重賞を4戦し、G1ハットンズグレイスハードルを20馬身差で制し3連覇達成。G1愛クリスマスハードルを26馬身差で制し、こちらは連覇を達成。そして2月2日にレパーズタウンで行われたG1愛チャンピオンハードル(芝16F)も16馬身差で制して、G1・3連勝を含む4連勝を果たしている。

 チェルトナムフェスティヴァルでは、12日のG1メアズハードル、14日のG1ステイヤーズハードル(芝23F213y)にも登録があるが、馬主サイドはチャンピオンハードル出走を望んでいると伝えられている。

 そうなると、今季になって更にパワーアップしていることは間違いないアップルズジェイドと、ブーヴェールデールの対決は、今年のチェルトナムフェスティヴァルでも最大の呼び物となるはずだ。

 今年のチャンピオンハードルには更にもう1頭、障害界のニュースターと目されている牝馬の参戦がある。オッズ4.5倍前後で3番人気に推されているローリーナ(牝6、父スパニッシュムーン)がその馬である。

 同馬もまた仏国産馬で、祖国でハードルを2戦し未勝利に終わった後、昨シーズンからウィリアム・マリンズ厩舎に所属しているのがローリーナだ。

 昨季は4戦し、8.1/2馬身差で制したフェアリーハウスのG1メアズノーヴィスハードルCSファイナル(芝20F)など、3重賞を含めて4連勝をマーク。

 今季初戦となった、1月5日にサンダウンで行われたLRユニベットメアズハードル(芝19F173y)で、48馬身差という記録的な大差勝ちを収めた後、2月20日にパンチェスタウンで行われたLRクヴェガメアズハードル(芝20F50y)も6馬身差で制し、愛国移籍後の成績を6戦6勝としている。

 牡馬との対戦はここが初めてとなるが、いったいどれだけの能力を秘めているのか、未知の魅力に溢れた超新星がローリーナである。

 路線の最強馬に、牝馬2頭が果敢に挑むチャンピオンハードルは、絶対に見逃せない戦いと言えそうだ。

 見逃せないと言えば、13日のメイン競走として行われるG1クイーンマザーチャンピオンチェイス(芝15F199y)に登場するアルティオール(セン9、父ハイチャパラル)のレースぶりも、競馬ファンには見逃せないものとなるはずだ。

 今年のチェルトナムフェスティヴァルで最も固い本命と言われているのが、ここに出走するスティープルチェイス2マイル路線の絶対王者アルティオールである。

 愛国産馬で、3歳6月にゴフスの障害馬用セールに上場され、6万ユーロ(当時のレートで約780万円)で購買されて、ブーヴェールデールと同じニッキー・ヘンダーソン厩舎に入厩したのがアルティールだ。

 ナショナルハントフラットで3戦1勝の成績を残した後、15/16年シーズンにハードルデビュー。このシーズンは5戦し、7馬身差で制したチェルトナムフェスティヴァルのG1シュプリームノーヴィスハードル(芝16F87y)を含む5連勝をマーク。

 続く16/17年シーズンからスティープルチェイスに転向し、このシーズンは6戦して、6馬身差で制したチェルトナムフェスティヴァルのG1アークルチャレンジトロフィー(芝15F199y)を含む6連勝と、破竹の勢いで連勝街道を勝ち進んだ。

 ところが、17/18年シーズンに突入しようかという時季に、のど鳴りが顕在化。17年11月16日に手術を受けたため、このシーズンの始動は18年2月までずれこむことになった。

 術後の状態が心配されたが、復帰戦となったG2ゲイムスピリットチェイス(芝16F92y)を4馬身差で制すると、続くG1クイーンマザーチャンピオンチェイスを7馬身差で快勝し、遂にこの路線の頂点に君臨。更にサンダウンのG1セレブレーションチェイス(15F119y)も制し、一頓挫あったこのシーズンも3戦3勝で乗り切っている。

 こうして迎えた今季も、緒戦となったG1ティングルクリークチェイス(芝15F119y)を4馬身差で制すると、続いて出走したG2デザートオーキッドチェイス(芝16F)を19馬身差で圧勝。そして、1月19日にアスコットで行われたG1クラレンスハウスチェイス(芝16F167y)を7馬身差で制し、入障以来継続している連勝を17に伸ばすとともに、通算8度目のG1制覇を果たした。

 ほとんどのブックメーカーが1.4倍のオッズを掲げてアルティオールを抜けた1番人気に支持しており、今年のクイーンマザーチャンピオンチェイスは「誰が勝つか」ではなく、「アルティオールがどんな勝ち方をするか」が焦点のレースとなっている。

 オッズ5.5〜9倍で2番人気を争っているのが、昨年のこのレースの2着馬で、前走G1ダブリンチェイス(芝17F)を6馬身差で制し3度目のG1制覇を果たしたミン(セン8、父ウォークインザパーク)と、昨年のチェルトナムフェスティヴァルではノーヴィスチェイサーのG1アークルチャレンジトロフィー(芝15F199y)を14馬身で快勝したフットパッド(セン7、父クラーカドワール)の2頭だ。

 両馬とも、普通の年であればスティープルチェイスチェイス2マイル路線の頂点に立っておかしくない、高い能力の持ち主だが、アルティオール相手では分が悪いというのが一般的な見方である。

 来週のこのコラムでは、14日のメイン競走であるG1ステイヤーズハードル(芝23F213y)と、15日のメイン競走であるG1ゴールドCチェイス(芝26F70y)の展望をお届けしたい。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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