「徹底討論! ダービーの大本命サートゥルナーリアを負かす馬はいるのか?」<第34回>高橋利明×山河浩×小田哲也(前編)

2019年05月20日(月) 18:00

ダービー座談会

“穴の万哲”の異名をとるスポニチ・小田哲也記者(左)と、東スポきっての穴党・山河浩記者(中)と、福島民報の名物TM・高橋利明記者(右)。

4戦無敗で皐月賞を制覇したサートゥルナーリア。全レースを圧倒的な人気で勝利してきた実力は、ダービーという大舞台でも向かうところ敵なしに見える。しかし、ルメール騎手の騎乗停止による乗り替わりなど、不安要素がないとは言い難い状況にもなってきているのも事実。今回は3紙の競馬記者にご登場いただき、ダービーへの展望をうかがった。前編の今回は、大本命サートゥルナーリアについて。(取材・文・構成=緒方きしん)

ルメール騎手からレーン騎手に乗り替わり…その影響は?

福島民報・高橋利明(以下、高橋) レーン騎手がルメール騎手と乗り替わり…これは「異常事態」発生なんじゃないかと。1985年以来、乗り替わりで勝った人はいないからね。テン乗り(初騎乗)ともなると、勝てば1954年のゴールデンウェーブ以来になる。

東京スポーツ・山河浩(以下、山河) そのゴールデンウェーブも、左回りが得意な騎手にしようという積極策によるもの。今回とはパターンが違いますよね。

高橋 そうそう。そもそもダービーは有力馬の乗り替わり自体が少ない。有力馬は前走も良い走りをしているわけだから、わざわざ変える必要もないしね。有力馬のテン乗りなんて、ハクタイセイ(1990年ダービー)以来じゃない?

スポーツニッポン・小田哲也(以下、万哲) そうかもしれませんね。だから、今回の乗り替わりはマイナスかな…とは思っていたんですが、京王杯SCやヴィクトリアマイルを見ていると話が変わってきました。あそこまでうまく乗れるんだとしたら…。

高橋 レーン騎手、うまいよね。調教で乗れば、すぐにその馬を手の内に入れる感じがある。ケイコで乗っていた馬は高い確率で上位に持ってきているし。

山河 レース中にも無駄なことをしないですよね。マーフィー騎手にも少し似ている、日本に合うタイプの騎手。サートゥルナーリアについても、レーン騎手になったマイナス面はないでしょうね。そりゃ、ダービーの勝ち方をわかっているルメール騎手のほうが安心感はありましたけど。

高橋 短期免許で、プレッシャーがないのもいいよね。陣営も「勝てる馬だから安全に」という指示だろうし、普通に乗ってくるんだろうと思うなぁ。

山河 もしかしたら、(現在も評価をあげてはいるものの)今こそがレーン騎手の“買いどき”なのかもしれませんね。

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乗り替わりを“異常事態”としつつも、サートゥルナーリアに乗り替わるレーン騎手を高く評価している福島民報・高橋記者。

やっぱり強い! サートゥルナーリアには逆らえない!?

高橋 グレード制導入以来、無敗の皐月賞馬はそのまま無敗のダービー馬になっているからなぁ(皐月賞後に引退した01年アグネスタキオンは除く)。やっぱり強いと思う。皐月賞を安全策で勝ち切ったのは大したものだよ。外、外を回して勝ったんだもん。皐月賞組から逆転してくれそうな馬がいるかというと…。

山河 …いないんですよ(笑)。皐月賞から逆転する馬って、誰が見てもわかるような強い負け方をするんです。すごい脚を使って肉薄した馬。タヤスツヨシとかワンアンドオンリーとか。

高橋 そうなんだよね。皐月賞は最後の接触があってもなくても、勝ったのはサートゥルナーリアだった。彼自身も接触のデメリットは被ってるわけだしね。

山河 令和1回目のダービーですから、規格外の馬に勝ってもらいたいという意味で、サートゥルナーリアの圧勝を見てみたい気もしますよ。ここ最近はずっとディープ産駒、キンカメ産駒で決まってきたダービーですけど、ここでロードカナロア産駒が勝てば新時代っぽくていいんじゃないかな、と。

高橋 瞬発力勝負に強いタイプだから、皐月賞とは別のタイプのレースになっても勝ち切りそうなのも強みだよね。ホープフルSみたいな勝ち方をすればいいんだから。

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東スポ・山河記者は「サートゥルナーリアの圧勝を見てみたい」と苦笑い。今回ばかりは、さすがの穴党もお手上げ!?

サートゥルナーリアが抱える、4つの不安要素とは?

山河 そうはいっても、ロードカナロア産駒だから距離が原因で負けるかも、というところはあります。アーモンドアイがいるから距離不問の種牡馬という雰囲気があるけど、やはり産駒にはマイラーが多いです。去年もステルヴィオはダメでした(8着)。

高橋 結局、アーモンドアイも凱旋門賞は回避したしね。いくら距離の融通性があるとはいっても、多くの人は「2400mがロードカナロア産駒のベスト」とは考えていない。

万哲 それに、シーザリオの仔は引っかかりますから、そこも不安要素かと。エピファネイアもダービーは福永騎手が大変そうでした。だから、皐月賞も引っかかると思っていたんですが、あのレースは想像以上に流れましたからね…。

高橋 あのペースは、サートゥルナーリアにはやりやすかっただろうね。

万哲 だからこそ、ダービーでスローになったら…穴党とすれば面白いですよね。それに、サートゥルナーリアにとって、東京コースは初なんです。昨年のワグネリアンの勝利も、東スポ杯2歳Sへの出走経験があってこそ。東京競馬場を経験していないのは、大きなマイナスになると思っています。

山河 あと、気になるのは皐月賞の勝ち方ですね。3冠馬、2冠馬クラスの馬は、皐月賞で0.4〜0.6秒突き放すことがほとんど。それに比べてサートゥルナーリアはアタマ差でしたからね。着差、タイム差だけが競馬ではないですが、一方でひとつの大切な指標ではあります。そういう意味では物足りないです。

万哲 皐月賞の印象は「サートゥルナーリア強い!」よりも「ルメールうまい!」でした。アドマイヤマーズを潰してからヴェロックスを潰しにいく…その指示に応えるこの馬もすごかったとは思いますが、自分は皐月賞で「着差以上の強さ」を見られたとは思っていません。いうなれば「着差なみ」の結果かと。

高橋 そうかな? あれは大事に大事に乗った結果だからなぁ。休み明けという点も含めると、目一杯のレースではなかったんだろうし。ダービーが淡々と流れて淡々と最終直線を迎えて…となると、普通にサートゥルナーリアが勝つと思う。レーン騎手が内側で大渋滞に巻き込まれて、脚を余らせてしまうというケースは怖いけど。

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スポニチ・小田記者は、サートゥルナーリアの実力は認めつつも「スローで流れたときが面白い」と、息巻く。

 不安要素を抱えながらも、レーン騎手への乗り替わりの不安はさほどないという見方の三人。後編ではそんな三人が考える「1着を狙える馬」、「2、3着であれば食い込みそうな穴馬」についてうかがっていく。

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