同セール史上初の200億円超えとなったセレクトセール2019

2019年07月10日(水) 18:02

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2019セレクトセールをレポート

まさしくノーザンに始まり、ノーザンに終わるセールであった

 今年のセレクトセールが昨日無事に終了した。結果についてはすでに主催者を始め、数々のメディアから詳細に報じられているので、ここで改めてくどくどと書くのも屋上屋を重ねるだけのことゆえ、後に回すとして、簡単に2日間を振り返っての印象などを記すことにする。

 過去21年間、ハンドルを握りながら「いやー、売れたなー」という判で押したような同じことを思いながら帰路につくのが通例だったが、その印象は今年さらに強烈なものになった。

 1歳、当歳ともに、上場番号1番(当歳は便宜上301番からのスタートである)の馬と、それぞれの最終上場馬(1歳246番、当歳526番)の4頭が、揃って億を突破する落札価格となったからだ。これら4頭はいずれもノーザンファーム生産馬で、1歳の1番はドゥラメンテ牡馬、246番はハーツクライ牡馬、そして、当歳301番はハーツクライ牡馬、526番はハービンジャー牡馬だが、1歳1番の母ルモスティは豪州5勝のG2勝馬、1歳246番と当歳301番は同じ母のマラコスタムブラダ産駒で、亜G1馬。当歳526番の母ライフフォーセールも亜G1馬と、母系の良さが際立っていた。

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上場番号1番ルモスティの2018
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上場番号246番マラコスタムブラダの2018
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上場番号301番マラコスタムブラダの2019
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上場番号526番ライフフォーセールの2019

 最初と最後に注目馬を配することで、今年の場合は例年以上にセール全体が緩むことなく終始同じペースで流れ、全く濃淡や偏りのない雰囲気でセリが進行した。そのため、「どこで億超えの落札馬が出てくるか片時も油断できない」セールになった。

 もちろん、億超えのミリオンホースのみならず、他にも話題の馬、注目馬が目白押しで、終日会場は大いに賑わっていた。今年誕生したキタサンブラック、ドレフォン、サトノアラジンなどの初年度産駒もこのセールに多数上場されており、当然それらにも視線が集まった。2日間のほとんどを撮影場所付近で過ごしたが、競り落とした馬を自身の目で確認するべく多くの落札者(馬主)が家族や友人などを伴ってセール会場から出てきて、満面の笑顔で馬と一緒に記念撮影される場面が多かった。そのために、主催者は、記念写真専門のオフィシャルカメラマンを2人配置していたほどだ。

 いうまでもなく、今回のセレクトセール大盛況の立役者はノーザンファームである。初日、セールに先立ち行なわれたG1レース表彰式には、過去1年間(2018年6月〜2019年5月)に中央G1を制した当セール出身馬5頭のオーナーがステージ上に並び、日本競走馬協会・吉田照哉会長代行からメダルが贈呈された。

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セールに先立ち行なわれたG1レース表彰式

 日本ダービー・ロジャーバローズ(猪熊広次氏)、オークス・ラヴズオンリーユー(DMMドリームクラブ[株])、NHKマイルカップ・アドマイヤマーズ(近藤利一氏)、阪神ジュベナイルフィリーズ・ダノンファンタジー([株]ダノックス)、ヴィクトリアマイル・ノームコア(池谷誠一氏)の5頭で、ロジャーバローズを除く4頭の生産は全てノーザンファームである。

 当然、芝のG1レース制覇を目標にしている購買者は、ノーザンファーム上場馬からチェックを入れることになる。そのために、ことノーザンファーム生産馬に関しては、明らかに他の牧場の上場馬と一線を画するような相場まで跳ね上がる例がひじょうに多かった。

 初日の1歳セッションが239頭中222頭の落札で、売却率92.9%。税抜きの売り上げが107億3200万円。平均価格が4834万円。最高価格は51番ミュージカルウェイの2018(父ディープインパクト、牡鹿毛)、ノーザンファーム生産、落札者は近藤利一氏。2日目の当歳セッションは216頭中194頭が落札され、売却率は89.8%。同じく税抜きの売り上げが97億8400万円。平均価格は5043万円。最高価格は358番タイタンクイーンの2019(父ディープインパクト、牡鹿毛)、ノーザンファーム生産、落札者は近藤利一氏。

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上場番号51番ミュージカルウェイの2018
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上場番号358番タイタンクイーンの2019と近藤利一氏

 その結果、2日間を通じての売り上げは、同セール史上初の200億円超えとなったのは既報の通りだ。トータルでは455頭が上場され、416頭が落札、売却率は91.4%。合計205億1600万円という驚異的な数字が生まれたのである。

 セレクトセールが初めて100億円の大台を突破したのは2012年(102億9630万円=税抜き)のことだが、それからわずか7年にしてついに200億円にまで到達した。まさしくノーザンに始まり、ノーザンに終わるセールであった。

 さて、来週は日高に場所を移して、セレクションセールが開催される。このセレクトセールの好景気ムードをどれだけ持って来られるか、注視してみたい。

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田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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