伝統の「イボア開催」で高いレイティングが続出

2019年08月28日(水) 12:00

エネイブルらがランキング上位濃厚、暫定レイティング発表は9月12日

 海外で施行される競走を対象にした馬券発売が増え、予想ツールの1つとして「レイティング」を活用するファンが増えているようだ。

 レイティングは原則として、各国公式ハンディキャッパーの合議によって決定されるもので、その確定数値は毎年1月に統括機関のIFHAから発表されるまで明らかにはならないのだが、「暫定レイティング」という形では、ほぼ月に1度のペースでIFHAから公表されている。

 現段階で発表されている最新の数字は8月4日現在のもので、次回は8月5日から9月8日まで5週間にわたって各国で開催される競走を対象とした暫定的な評価が、9月12日に発表されることになっている。

 したがって、現段階では「暫定レイティング」すら発表されていないのだが、メディアによる報道によると、8月21日から24日までイギリスのヨーク競馬場で開かれた伝統の「イボア開催」で、高いレイティングが続出したようなのだ。

 まず、開催初日の21日(水曜日)に行なわれたG1インターナショナルS(芝10F56y)に、6月19日のG1プリンスオヴウェールズS(芝9F212y)と7月27日のG1キングジョージ6世&クイーンエリザベスS(芝11F211y)でいずれもレイティング127を獲得し、8月4日付けのランキングで世界首位の座に立っていたクリスタルオーシャン(牡5、父シーザスターズ)が登場。更に数字を伸ばすことが期待されたが、同馬は、7ポンド斤量の軽かった3歳馬のジャパン(牡3、父ガリレオ)に頭差及ばぬ2着に敗れた。

 地元イギリスの公式ハンディキャッパーは、このレースぶりを「ベストパーフォマンスよりは少し下」と見ているようで、仮にこれが126だったと仮定すれば、7ポンドもらって頭差先着のジャパンは120前後の数字で落ち着くはずだ。そうなると、欧州調教の3歳世代としてはG1仏ダービー馬ソトサス(牡3、父シユーニ)、マイルG1・2勝のトゥーダーンホット(牡3、父ドゥバウィ)らと肩を並べることになる。

 続いて、開催2日目の22日(木曜日)に行なわれた牝馬限定のG1ヨークシャーオークス(芝11F188y)に、レース前の段階では持ちレートが126だったエネイブル(牝5、父ナサニエル)と、122だったマジカル(牝4、父ガリレオ)が登場した。

 3歳時にG1凱旋門賞(芝2400m)を2.1/2馬身差で制した際に、128というレーティング得ていたのがエネイブルだ。だが、故障でシーズンの半ばを棒に振った4歳時は、3戦無敗という戦績を残したものの、パフォーマンスとしては3歳時の質に及ばないというのが公式ハンディキャッパーの判断で、レイティング的にはG1BCターフを制した得た125が最高値となった。

 5歳となった今季、初戦のG1エクリプスS(芝9F209)が同斤だったマジカルに3/4馬身差をつける勝利で123、続くG1キングジョージ6世&クイーンエリザベスSは、自分より3ポンド斤量の重かったクリスタルオーシャンに首差先着する勝利で126を与えられていた同馬。G1ヨークシャーオークスでは、同斤だったマジカルに2.3/4馬身差をつける快勝。このレースぶりを見て、彼女の全盛期のパフォーマンスに戻ったと判断したのがイギリスの公式ハンディキャッパーーで、すなわちヨークシャーオークスのパフォーマンスをレイティング128と診断したのである。

 現段階ではあくまでも、イギリスのハンディキャッパーによる独断となるが、この時点でエネイブルはクリスタルオーシャンを抜き、世界ランキング首位の座に立ったわけだ。

 続いて、開催3日目に23日(金曜日)に行なわれたのが、G1ナンソープS(芝5F)で、ここは短距離路線の新旧対決となった。

 新興勢力とは、7月のG1ジュライC(芝6F)を2.3/4馬身差で快勝した際にレイティング122を獲得し、芝Sコラムで世界3位に浮上していたテンソヴリンズ(牡3、父ノーネイネヴァー)で、同馬がオッズ2.625倍の1番人気に。既成勢力の代表が、17年にG1アベイユドロンシャン賞(芝1000m)を制した際と、18年にG2キングジョージS(芝5F)を制した際に、123をもらった実績があるバターシュ(セン5、父ダークエンジェル)で、同馬は今季も既に、5月にG2テンプルS(芝5F)を制した際と、6月にG1キングズスタンドS(芝5F)で2着になった際に、いずれも121を獲得していた。

 結果は、初の5F戦に対応出来なかったテンソヴリンズは6着に敗退、一方、オッズ2.75倍の2番人気に甘んじたバターシュは、後続に3.3/4馬身という圧倒的な差をつけて快勝。なおかつ勝ち時計の55秒90は、29年前のこのレースでデイジュールが作った記録を0.26秒破るトラックレコードだった。

 この超絶パフォーマンスを、イギリスの公式ハンディキャッパーはレイティング127と査定。すなわち、クリスタルオーシャンと横並びで、エネイブルに続く世界2位という、極めて高い評価を下したのだ。繰り返すようだが、これはあくまでもイギリスの公式ハンディキャッパーの見解で、その後各国のハンディキャッパーとすり合わせをした上で、9月12日に発表される暫定レイティングが決定される。果たしてG1ナンソープSの数字がいくつになるかは、非常に興味深いところだ。

 更に、8月24日にサラトガで行われたG1トラヴァースS(d10F)を3馬身差で快勝したコードオヴオナー(牡3、父ノーブルミッション)にもかなりの数字が与えられるはずで、これらを含めて、9月12日の発表が待たれるところである。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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