2019年09月17日(火) 18:00
名古屋には名物の食べ物が多い。ひつまぶし、手羽先、きしめん、味噌カツ、どて煮などは昔ながらのもので、台湾ラーメンも発祥は名古屋と言われている。最近になって聞くようになったのが、あんかけスパゲティとか、小倉トーストとか。
そしてなぜこれが名古屋名物?と思うのが、エビフライ。ネットで検索してみると、どうやらタモリさんが、かつてのお昼の長寿番組で「名古屋ではえびふりゃ〜ばっかり食べとる」とか言ったのがきっかけで、それに名古屋の食堂やレストランが便乗して有名になった、ということらしい。タモリさんと昼の高視聴率番組は、それほど影響力が大きかったということか。
名古屋競馬場は、地方競馬の中でも特に地元グルメが楽しめる競馬場だ。しかしながら調べてみてちょっとびっくり。このコラムではまだ名古屋メシは紹介していなかった。
名古屋競馬場には、きしめんも味噌カツもどて煮もあるが、今回は“なぜこれが?”の、えびふりゃ〜。いや、地元名古屋の人たちは「えびふりゃ〜」という言い方はしない(らしい)。
そういうわけで、名古屋競馬場で大満足のエビフライが食べられるのが、『当り屋』さん。いかにも馬券が当たりそうではないですか。
馬券も当たりそうな『当り屋』
『当り屋』さんは、かつてはスタンド2階でカウンターだけのこぢんまりとしたところで営業していたが、空き店舗ができたからなのか、何年か前に、正門からパドック方面に歩いた食堂街に移転して、広々とした食堂らしいお店になった。
エビフライは単品でも食べられるし、エビフライカレーというメニューもある。しかしここはぜひ、エビフライ定食でいただきたい。
お代は1300円也。地方の競馬場メシで四桁円ともなると、馬券で儲かったときでもなければ、うっ!と一瞬たじろぐ値段(ワタシだけでしょうか)ではあるものの、その値段以上の満足感を得られることは間違いない。
エビフライは、パン粉をつけるところまで下ごしらえがしてあり(もちろん冷凍ではない)、注文ごとに揚げて出される。で、お代1300円のエビフライ定食が、これ!
付け合わせが豪華なエビフライ定食(1300円)
まるで会席料理かというにぎやかな定食だ。小鉢は、オニオンスライス、春雨の酢の物、芋煮、たくあん。さっぱりとした箸休め的な惣菜がいくつもあるのがなんとも贅沢。そして味噌汁は、これも名古屋らしく八丁味噌(と思われる)の豚汁。この豚汁は単品メニュー(180円)もある。
主役のエビフライは、ピンと背筋の伸びた大ぶりのものが贅沢に3本。まずはエビフライにレモンを搾る。そしてタルタルソースをちょっとつけていただく。うん、魚介系フライの王道だ。テーブルにはウスターソースもあるので、レモンにソースでもいただく。さらに、レモンにソースにタルタルソースもつけていただく。アジフライなどもそうだが、レモン、ソース、タルタルソースと、組み合わせをさまざまに味わえるから楽しい。
そしてまだ説明していなかった、左上のほうの小皿に入った黒い液体。これ、味噌カツの味噌です。『当り屋』のエビフライ定食は、レモン、ソース、タルタルソースだけでなく、“味噌エビフライ”としても味わえるのだ。さまざまに贅沢ではないか。
さて、最初のほうで「名古屋競馬場は、地方競馬の中でも特に地元グルメが楽しめる競馬場」と書いたが、名古屋競馬場では閉店してしまった地元メシも少なくない。
名古屋なのになぜか『ぎふや』という屋号の、ひつまぶしではなくうな丼のお店だったのだが、うなぎを本格的に炭火で焼いていて絶品だった。聞くところによると、ご主人が交通事故で亡くなったらしく突然の閉店だった。
台湾ラーメンがメニューにある中華料理っぽい食堂もあったのだが、そこも残念ながら閉店してしまった。
地方競馬がどこもごったがえすほど多くのファンで賑わった高度経済成長期から40年以上が過ぎた。その頃から続けてきたお店の中には、高齢化でやむなく閉店というところも全国的に少なくないという状況は、なんとも寂しい。
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斎藤修
1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。
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