北米ダート中距離路線の振り返りとBCクラシック展望“3歳編”

2019年10月09日(水) 12:00

3歳世代にも言える軸馬不在の混戦

 先週に引き続き、今季ここまでの北米ダート中距離路線を振り返るとともに、11月2日にサンタアニタで行われるこの路線の総決算となるG1BCクラシック(d10F)の展望をお届けする。

 先週の古馬編に続き、今週は3歳編にお付き合いいただきたい。

 先週も記したように、北米ダート中距離路線の現状が「全幅の信頼をおける軸馬がいない混戦」となった要因は、言うまでもなく3歳世代にもある。

 そもそもからして、春3冠の幕開けとなるG1ケンタッキーダービー(d10F)が大波乱だったことは、皆様のご記憶に新しいところであろう。

 G1フロリダダービー(d9F)を勝ち、デビューからの戦績を4戦4勝としての参戦だった2番人気のマキシマムセキュリティ(牡3、父ニューイヤーズデイ)が逃げ切って1着入線を果たしたのだが、4コーナーで外に膨れて他馬を押圧したのが進路妨害にあたるとして、17着に降着。重賞未勝利馬でオッズ66.2倍の18番人気だった伏兵カントリーハウス(牡3、父ルッキンアットラッキー)が、繰り上がっての優勝となった。

 運も味方につけてケンタッキーダービー馬となったカントリーハウスだったが、そこで運も体力も使い果たしたようで、咳と熱発で2冠目以降を回避すると、他の部位にも不具合が生じて立て直しに時間がかかり、未だ戦線に復帰出来ていない。来季も現役に留まるというのが目下の方針で、今季の同馬は既に終戦モードである。

 3歳世代の実質的なナンバーワンになったのがマキシマムセキュリティだったが、こちらもその後は決して順調とは言えないシーズンを送っている。同馬も2冠目のG1プリークネスS(d9.5F)と3冠目のG1ベルモントS(d12F)をスキップした後、6月16日にモンマスパークで行われたペガサスS(d8.5F)というノングレードの特別に出走し、ここでキングフォーアデイ(牡3、父アンクルモー)という重賞未勝利馬に足元をすくわれて2着に敗退。一方で、同馬がさすがというレースを見せたのが、7月20日に同じくモンマスパークで行われたG1ハスケル招待(d9F)で、G3を連勝しての参戦だったムーチョグスト(牡3、父ムーチョマッチョマン)を2着に退けて優勝。2度目のG1制覇を果たした。

 ところが、次走に予定されていた9月21日のG1ペンシルヴェニアダービー(d9F)に向けての調整中に、結腸の変位が原因の疝痛を発症。幸いにして開腹手術を行うことなく回復したものの、ペンシルヴェニアダービーは回避した。陣営はBCに関してコメントしていないが、出てきたとしても、完調は望めないであろう。

 2冠目のG1プリークネスSを制したのは、G1ケンタッキーダービーは8着入線後に7着に繰り上がったウォーオヴウィル(牡3、父ウォーフロント)だった。だが、同馬はその後、3戦して勝ち星がない。G1ベルモントS9着、G2ジムダンディS(d9F)5着の後、9月21日のG1ペンシルヴェニアダービーが3着だった。

 3冠目のG1ベルモントSを制したのは、それが重賞初制覇だったサーウィンストン(牡3、父オウサムアゲイン)だが、同馬はその後、球節を傷めて休養。既に4か月にわたって戦線を離れている。

 マキシマムセキュリティが回避し、出走したウォーオヴウィルは3着に敗れたG1ペンシルヴェニアダービーを制したのは、6頭立ての5番人気(32.1倍)だったマスウィザード(牡3、父アルゴリズム)で、重賞初制覇をG1で飾っている。前走G3ウェストヴァージニアダービー(d9F)では勝ち馬から11.3/4馬身離れた6着に敗れていた馬で、ブリーダーズCで大きな期待をかけられる素材ではなさそうだ。

 当てにありそうもない馬ばかりに言及してきたが、そんな中、3歳世代の代表格としての地位を手に入れたのがコードオヴオナー(牡3、父ノーブルミッション)である。

 春は、G2フォンテンオヴユースS(d8.5F)で重賞初制覇後、G1フロリダダービーがマキシマムセキュリティの3着。G1ケンタッキーダービーが3着入線後に2着に繰り上がり。2冠目と3冠目をスキップした後、2か月ぶりの実戦となったベルモントパークのG3ドゥワイヤーS(d8F)を制し、2度目の重賞制覇を果たした。

 同馬が大きく成長していることが実証されたのが、8月24日にサラトガで行われた“ミッドサマーダービー”G1トラヴァーズS(d10F)で、G1ベルモントS2着馬タシタス(牡3、父タピット)に3馬身差をつける完勝。3歳世代の最前線に躍り出ることになった。

 コードオヴオナーは更に、古馬との初顔合わせとなった9月28日のG1ジョッキークラブゴールドCでも、G1ゴールドカップアットサンタアニタS(d10F)制覇の実績を持つヴィーノロッソ(牡4、父カーリン)の鼻差2着に入線。ゴール前の攻防でヴィーノロッソがコードオヴオナーを押圧したとして、ベルモントパークの裁決委員はコードオヴオナーの繰り上がり優勝という裁定を下した。

 いずれにしても、3歳世代の筆頭格はコードオヴオナーで揺るがないところだが、一部の報道では、同馬はブリーダーズCを回避し、12月7日にアケダクトで行われるG1シガーマイル(d8F)に照準を合わせる可能性が取り沙汰されており、その動向が注目されている。

バックナンバーを見る

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

関連情報

新着コラム

コラムを探す