7カ月のシーズンを締めくくる道営記念

2019年11月12日(火) 18:00

最終日には騎手との交流会などで“らしさ”演出

 初めての浦和開催となったJBCが終わり、道営記念も終わると、地方競馬はいよいよ年末モード。特に今年はJBCから中2日で道営記念だったため、あわただしいままに過ぎた。調べてみると2003年にJBC(11月3日)より前の10月30日に道営記念が行われた年があったが、以降、道営記念はJBCの翌週以降に行われてきた。今年の11月7日というのは、その2003年以来の早い日程だった。

 そして行われた道営記念は、2017年7月以来門別では無敗のスーパーステションが脚部不安のため不在となっての混戦。勝ったのは3番人気の3歳馬リンノレジェンド。夏以降に力をつけ、大井の黒潮盃、盛岡のダービーグランプリと、3歳馬同士の地方全国交流レースを連勝、今回が古馬初対戦だった。

道営記念を制したのは3歳馬リンノレジェンド

 リンノレジェンドを管理する林和弘調教師は道営記念5勝目。最多6勝の堂山芳則調教師の記録にあと1勝と迫った。馬主の林正夫さんは、林和弘調教師の父で、道営記念は騎手時代に3勝、調教師として2勝、そして馬主としても2勝目という記録となった。

 「ホッカイドウ競馬に関わる人なら誰もが勝ちたいレース」ということは、毎年のようにインタビューなどで聞かれる。交流ではなくホッカイドウ競馬所属馬限定ではあるものの、道営記念はそれほどの重みがある。林父子によって達成された記録は、それだけに価値がある。

 約7カ月という短いホッカイドウ競馬の開催最終日には、メインの道営記念だけでなくさまざまなイベントが行われる。

 レースの合間には、今シーズン限りで勇退される田部和則調教師、若松平調教師の勇退式も行われた。

今シーズン限りで勇退する田部和則調教師(左)、若松平調教師(右)

 田部調教師は騎手として1984年にカイソクミクロで道営記念を制している。インタビューでは50年以上に及ぶホッカイドウ競馬とのかかわりを振り返り「道営記念も勝たせていただいて……」と話していたことから、やはり道営記念というレースの重みを感じさせられた。

 活躍馬を1頭挙げるとすれば、やはり調教師として管理したコスモバルクだろう。認定厩舎、いわゆる外厩制度が始まっての第1号の活躍馬。2006年シンガポール航空国際Cの勝利は、地方馬による初めての海外GI初勝利であり、日高地方(三石・加野牧場)の生産馬にとっても海外GI初勝利となった。またJRA・GIに23回という最多出走記録も残している(2位はステイゴールド、レッツゴードンキの19回)。田部調教師はみずからコスモバルクの調教にも騎乗していたが、73歳になった今シーズンも調教に跨っていたというから驚きだ。

 一方、若松平調教師といえば、2000年に12歳(当時の表記では13歳)でGIIIの北海道スプリントCを制したオースミダイナーだ。9、10歳時には、当時旭川2100mで争われていたステイヤーズCを連覇し、札幌/門別1700mの瑞穂賞は9歳から12歳まで4連覇。それでいて札幌1000mが舞台の交流GIIIを制したのには驚かされた。そのときのことは今でも覚えている。ゴール前のスタンドは立ち見のファンで一杯。直線、10番人気のオースミダイナーが先頭に立ったときは大歓声が沸き起こった。12歳でのグレードレース勝利という記録は、今後もおそらく破られることはないのではないか。

 近年の活躍馬では、北海道と南関東を行き来しながらいくつもの重賞を制したタービランスだろう。北海道ではここまで2歳時にサンライズCを制したのみだが、南関東では羽田盃を制し、今年1月にも報知グランプリCを制した。そして道営記念が行われたこの日、第9レースのA1A2特別戦(1800m)に若松厩舎として最後の出走。単勝1.3倍の断然人気に支持された。4コーナーで先頭に立ったモルトベーネに並びかけ、直線では追い比べ。見せ場をつくったタービランスだったが、最後に力尽き、1馬身差で2着だった。

 道営記念終了後には、恒例となった『ジョッキー交流会』も行われた。勝負服姿のまま、騎手全員がスタンド内に出てきて、ファンは自由に話をしたり、一緒に写真に撮影したりなどができる。特に事前の申込みや抽選などはなく、当日そこにいれば誰でも参加できる。中央や南関東で同じようなことをやれば大混乱になりそうだが、これもホッカイドウ競馬ならではだ。

ジョッキー交流会後の記念撮影

 ホッカイドウ競馬は、道営記念が終われば約5カ月もの長い休みに入るだけに、この日の門別競馬場の雰囲気は独特だ。ただ休みといっても競馬開催がないというだけで、厩舎関係者も休みになるわけではない。有力2歳馬がいる厩舎は、全日本2歳優駿や東京2歳優駿牝馬などを視野に入れた戦いが続く。また他地区に転出して空いた馬房には、1歳馬が続々と入厩してくる。来年4月の能力検査に向けての戦いはすでに始まっている。

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斎藤修

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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