地方所属馬による中央挑戦機会の拡大

2019年11月26日(火) 18:00

地方競馬を盛り上げる進歩

 今年も残すところあと1カ月と少々となって、2020年の競馬番組に関するさまざまなことが発表されている。

 地方競馬で行われるダートグレードには大きな変更はなく、JBC3競走の開催場が浦和から大井に変わることと、それにともなう距離変更。また北海道2歳優駿がJBC2歳優駿と名称変更され、大井のJBCと同日の実施となる。ちなみにJBC2歳優駿の格付は北海道2歳優駿を引き継ぐのでJpnIIIのまま。

 地方馬にとって大きな変更は、中央競馬の(特指)=[楕円で囲まれた特指]の扱いだ。

 これまで(特指)にはJRA認定競走勝ち馬しか出走できず、その権利は3歳一杯に限られていた。それが2020年にはJRA認定競走勝ち馬に加え、「収得賞金が2歳馬で150万円超、3歳馬で300万円超、4歳馬で500万円超の馬」も出走可能となり、また出走できる期間が4歳一杯に延長された。

 かつてのコスモバルク、近年のハッピーグリンに代表されるように、地方に在籍したまま中央の芝重賞を狙おうとすれば、3歳まではかなり選択肢があったが、4歳になるとJRA認定競走勝ちの権利がなくなり、選択肢が途端に限られてしまうということはたびたび指摘されてきた。

 2019年の番組を確認しておくと、6月以降の夏季・秋季番組に、「3歳以上」という条件の(特指)重賞は24あったが、地方馬が出走できるのはJRA認定競走勝ちの3歳馬のみ。それが2020年からは、JRA認定競走勝ち馬だけでなく、前記収得賞金の条件を満たした3・4歳馬が出走できるようになる。

 また2019年の1月から5月までの春季番組で組まれていた(特指)重賞は3歳限定戦のみだったのが、2020年には「4歳以上」という条件で東西合計15のGII・GIII競走が新たに(特指)となっている。

 今年4歳になったハッピーグリンは、JRAでは出走できるレースが限られるとして、春は招待競走ではない香港のGIに遠征、秋はついに苦渋の選択として中央移籍とせざるをえなかった。それが2020年からは、4歳までなら地方に所属したまま、JRA芝重賞挑戦への選択肢が広がることになった。

 さらに4歳以上の2勝クラス〜オープンクラスでも、2020年春季番組ではダート戦も含めてかなりの数のレースが(特指)となっているので、重賞級の馬だけでなく地方の4歳馬には中央挑戦のチャンスがかなり広がった。

 日本の競馬は2007年に国際セリ名簿基準書のパートI国となり、現在ではJRA(平地)のオープンクラス以上はすべて外国調教馬も出走可能な(国際)レースとなっている。外国馬が出走できるのに地方馬は出走できないというのはやはりおかしい。理想をいえば(国際)のすべてのレースに地方馬も出走可能とすべきと思うが、とりあえず4歳までとはいえ地方馬がJRAに挑戦し続けられる機会が与えられたのは進歩といえる。

 JRA認定競走のシステムができたのは1995年のこと。当初、その勝ち馬にはJRAの厩舎に割り当てられた『認定馬房』に優先して入厩(移籍)できるという権利もあったが、これは現在では廃止されている。そう考えると、JRA認定競走の制度は、当初は「地方でデビューした強い馬は、ぜひJRAに移籍してください」という意味合いが大きかったのが、今回の制度変更では、「地方に在籍したままでもJRAに挑戦してください」という性格に変わりつつあるように感じられる。地方競馬を盛り上げるということでは非常に喜ばしい。

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斎藤修

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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