「有馬記念は本当にアーモンドアイ1強なのか!? 日刊紙記者が出走有力馬をさまざまな角度から徹底討論!」 山河浩×高木翔平×坂本達洋(後編)

2019年12月18日(水) 18:01

有馬座談会

今年の有馬記念はアーモンドアイを巡る戦いになりそうだが、記者たちの見解は果たして?(撮影:下野雄規)

日刊紙3紙の記者による有馬記念座談会の後編。前回は人気になるであろうアーモンドアイ、リスグラシューについてそれぞれの見解を述べてもらったが、後編ではそれ以外の「3歳勢」「古馬勢」の注目馬をピックアップしていく。まずは、ここ3年で2度有馬記念を制覇している3歳勢から見ていこう。(取材・文・構成=緒方きしん)

怖いのは3歳勢も狙いどころは意見が分かれる

スポーツニッポン・高木翔平(以下、高木) 3歳勢で人気になりそうなのはサートゥルナーリアですね。センスのある馬で、スローから一気にギアチェンジして差し切るような競馬ができますし、例年であれば有馬記念向きの馬だと思います。ただ、先行勢が揃ってペースが上がりそうな今年の有馬記念で、底力勝負が求められると…天皇賞・秋の負け方を思い出してしまいます。

東京スポーツ・山河浩(以下、山河) ちょっと気性がね…。昨年のホープフルSあたりではすごい馬が出てきたと思っていたんだけど、弱点が少しずつ露呈してきてしまっている。前走は、夢が萎んでしまう走りだったな。

高木 陣営がいうには、東京競馬場の地下馬道が苦手ということなので、それを信じるのであれば中山での復活勝利はあり得るのかもしれません。ただ、使ってよくなるタイプというイメージもないので、秋3戦目という点もマイナス材料になってしまうでしょうね。

スポーツ報知・坂本達洋(以下、坂本) 天皇賞・秋の直線前では余裕の手応えで「さぁ、ここから弾けるぞ!」と思ったら思いの外の反応でした。ダノンキングリーもマイルCSでは5着と、世代レベルに疑問符がつき始めています。そういう意味では、伸びシロという面でワールドプレミアが気になります。折り合いに不安のないレースぶりで、有馬記念にも向きそうです。

高木 ワールドプレミアの菊花賞は、武豊騎手のこれしかないという超名騎乗。あまりにも完璧過ぎました。最強馬決定戦のなかでどこまでいけるでしょうか?

山河 昨年の菊花賞も、そこまでレベルの高いレースではないんじゃないかと言われてたなかで、有馬記念でブラストワンピースが勝った。それとイメージを重ねるなら、レースレベル等で軽視するのは危険じゃないかな? まぁ、個人的には菊花賞敗北組のヴェロックスを推したいけれど。菊花賞での敗北は距離の壁ということで参考外で良いと思うし、あのペースでも折り合えるところはある程度示してくれた。

高木 ヴェロックスは怖いですよね! キレる馬ではないんですが、ああいうタイプの馬がGIを勝つならこの条件しかないといえるほど、絶好のチャンスだと思います。

坂本 ダービー3着で菊花賞も3着。ダービー5着、菊花賞4着のブラストワンピースと結構印象がかぶります。クラシックで勝ちきれなった馬がここで開花…あるんじゃないですか?

山河 でも、ここまで評価を落とすとなると、サートゥルナーリアが中山競馬場で大復活を果たす気もしてきた(笑)。

有馬座談会

坂本記者が有馬記念向きと推すワールドプレミア。菊花賞馬は昔から有馬記念と相性がいいだけに侮れない

古馬勢のカギを握るのは鞍上!? 波乱を呼ぶのはどの馬だ?

高木 古馬で気になっているのはエタリオウ。前走は復活の兆しが見られました。自分で走る気をなくしちゃうタイプだけに、本気を出したときの強さは誰も知らない馬です。そのやる気を取り戻すために、陣営も馬具をいろいろ変えたりと試行錯誤をしていますし、そろそろ結果が出るのではないでしょうか?

坂本 前走後、陣営からも「ようやく“らしさ”が戻ってきた」という前向きなコメントが飛び出していました。有馬記念という舞台も、コース、距離に不安はないです。

山河 さらに、名手・横山典騎手が4連続騎乗。思うところあってのコンビ継続だろうから、大舞台で驚くような走りを見せても不思議ではないよね。もうクセは熟知していそうだし、魅力的な1頭なんじゃないかな。

坂本 フィエールマンにも注目しています。長距離適性もありますし、調教を見る限り海外遠征の大敗からは立ち直れていそうです。前走の凱旋門賞大敗の理由は馬場、体調と明らか。それよりも、早い段階から有馬に向けて調整していた点に魅力を感じます。前が速くなりそうな今年の有馬記念に、池添騎手はマッチしていると思います。

高木 アエロリットが引っ張る有馬記念はスタミナ勝負になると思いますから、そういう意味では魅力あると思います。何より、池添騎手は有馬記念男ですから。インディチャンプなど、代打騎乗での大仕事も多いのも心強いですよね!

山河 負けて失うものは何もないし、ノープレッシャーでの大胆騎乗は要注意だね! あと今、名前が出たアエロリットも面白い存在だと思う。みんなが「あれっ!?」って思っているうちに逃げ切ることもありそう。自分で競馬を作れるし、暴走するわけではないし、脚も使えるし。中山競馬場でも3度走ってすべて馬券圏内になっているのも良いよね。距離だけが初めてだけど。

坂本 アエロリットはなんとなく、距離適性など先入観を持ってしまいがちなんですよね。でも、前走の天皇賞・秋でもしっかり3着にきているあたり、確かな実力があると思います。

有馬座談会

距離は未知数だが、牡馬混合戦では結果を残しているアエロリットだけに穴候補の1頭に加えても面白いかも(撮影:下野雄規)

令和最初の有馬記念 競馬界を揺るがすレースが見られるか?

高木 キセキは宝塚記念こそスローに落としましたが、昨年の有馬記念は後半から後続の脚をそぎ落としにいきました。そして天皇賞・秋で11秒台のラップを刻み続けたアエロリット、エリザベス女王杯でスピードを証明し続けたクロコスミア。普通に考えたら出し切る競馬になるはずですし、底力が問われるレースになると思います。

坂本 ある程度ハイペースになっても必ず末脚を使えるのはアーモンドアイですし、逆にスローペースになってヨーイドンの競馬になれば、そうした展開を得意とするのもアーモンドアイ。そこにどう切り込んでいくのか、各陣営の意地とプライドを賭けたレースになりそうです。

山河 今回の有馬記念は「最強牝馬決定戦」であると同時に「最強馬決定戦」になっているのが面白い。結果次第では、今後の競馬界を揺るがすレースになるんじゃないかな? 最近は馬格のある牝馬も増えてきたなか、斤量で2キロの負担減があるのは大きい。このレースで牝馬が上位を独占することになれば、そうした牝馬への優遇措置などを見直すキッカケにすらなり得ると思う。

坂本 有終の美はどこにあるのか…と悩む陣営も増えそうですね。ジャパンCで引退する馬や、海外に活路を見出そうとする陣営が増えるのかもしれません。有馬記念の在り方を含めたターニングポイントになる気配があります。

高木 小細工なし! すべての馬が能力を出し切る競馬になると思います。ここでアーモンドアイが勝利し、勲章をさらに増やすのか、阻止する馬が現れるのか? ゲートが開く瞬間を楽しみに待ちましょう!

有馬座談会

アーモンドアイとは初対戦になるリスグラシュー。こちらは引退がかかっているだけに、最初で最後のチャンスをぜひともモノにしたいところ(撮影:Racing Photos)

今年の有馬記念は波乱か? テッパンか? ユーザーアンケート実施中! さらに今年の注目馬、穴馬、好走ポイントなどを倉本匠馬が展開面から解説。予想の参考にぜひ!

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ウマい予想家

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