欧米ファーストシーズンサイヤーランキングを検証

2020年01月08日(水) 12:00

チャンピオンの座に就いたのは…

 遅ればせながら新年あけましておめでとうございます。本年も当コラムをご贔屓いただきたく、どうぞよろしくお願い申し上げます。


 年末に数字が確定した欧米のファーストシーズンサイヤーランキングを検証してみたい。

 北米でファーストシーズンサイヤーチャンピオンの座に就いたのはアメリカンフェイロー(父パイオニアオヴザナイル)で、大本命が期待に応えた形となった。

 15年に北米3歳3冠を達成した同馬は、16年にケンタッキーのアシュフォードスタッドで種牡馬入りし、初年度の種付け料は20万ドルだった。

 17年に生まれた初年度産駒は162頭いた中、2歳時に出走を果たしたのは72頭で、このうち27頭が勝ち上がり、総収得賞金は270万3916ドルだった(ブラッドホース誌の集計)。

 送り出した重賞勝ち馬は、仏国シャンティイのG3ボワ賞(芝1000m)を制したマーヴェン、キーンランドのG2ジェサミンS(芝8.5F)を制したスウィートメラニア、サンタアニタのG2BCジュヴェナイルターフスプリント(芝5F)とベルモントパークのG3フューチュリティS(芝6F)を制したフォーホイールドライヴの3頭だ。すなわち、これまで送り出した重賞勝ち馬は、全て芝の重賞勝ち馬なのである。これ以外にも、愛国カラのG1フェニックスS(芝6F)で2着となったモナークオヴエジプト、G2BCジュヴェナイルターフスプリント3着馬アナザーミラクルといった産駒もおり、疑いようのない高い芝適性を示している。

 もちろん、G1アメリカンフェイローS(d8.5F)2着馬アメリカンシオロムのような馬も出現しているし、日本で勝ち上がった5頭のアメリカンフェイロー産駒は、全てがダート戦で勝ち上がっているように、ダートを主戦とする馬も出している。

 だが、アメリカンフェイロー自身の血統背景や競走成績、更には、パワーやスピードの持続性に長けていた一方で、切れ味や瞬発力といた素養は感じられなかった同馬の現役時代の競馬スタイルから、芝での活躍馬を量産することは、筆者にとっては想定の範囲外であった。

 北米2位は、216万8422ドルを収得したコンスティテューション(父タピット)だったが、実は、送り出した重賞勝ち馬の数は、アメリカンフェイローを上回っていた。まず、7月13日にバイユアサイドがサラトガのG3サンフォードS(d6F)を制覇すると、8月3日にはアマルフィーサンライズがデルマーのG2ソレントS(d6F)に優勝。10月5日にはティズザロウがベルモントパークのG1シャンパンS(d8F)を制覇。そして11月3日にはインデペンデンスホールがアケダクトのG3ナシュアS(d8F)に優勝と、4頭の重賞勝ち馬を送り出したのだ。

 そして北米3位のパレスマリス(父カーリン)も、G1BCジュヴェナイルターフ(芝8F)勝ち馬ストラクターを送り出しており、2016年に北米で初供用された種牡馬は、なかなかに粒揃いであったと言えそうだ。

 一方、欧州でファーストシーズンサイヤーチャンピオンの座に就いたのはナイトオヴサンダー(父ドゥバウィ)だった。

 G1二千ギニー(芝8F)、G1ロッキンジS(芝8F)と、2つのマイルG1を制したナイトオヴサンダーは、2016年に愛国のキルダンガンスタッドで種牡馬入り。初年度の種付け料は3万ユーロだった。

 初年度産駒のうち48頭が2歳シーズン末までにデビューし、このうち28頭が勝ち上がり、ポンド換算の総額で89万8606ポンドの賞金を収得している(サラブレッドスタリオンガイドの集計)。

 7月にアスコットで産駒のアンダーザスターズがG3プリンセスマーガレットS(芝6F)を制し、重賞初制覇。そして10月に入ると、ナイトカラーズが伊国サンシロのG2ドルメロ賞(芝1600m)を、ポケットスクエアが仏国ドーヴィルのG3レゼルヴォワ賞(芝1600m)を制覇と、3頭の重賞勝ち馬を送り出している。

 18年夏以降の1歳馬市場に初年度産駒が登場し始めた事から、子供の出来の良さが一部の市場関係者の間で話題になっていたのがナイトオヴサンダーで、これから注視していく必要がある若手種牡馬と言えそうだ。

 欧州2位は、68万8958ポンドを収得したケーブルベイ(父インヴィンシブルスピリット)だった。

 現役時代はG2チャレンジS(芝7F)、G3ジョンオヴゴーントS(芝7F)を制している他、G1デューハーストS(芝7F)2着の成績があった馬だ。16年にハイクレアスタッドで種牡馬入りし、初年度の種付け料は6500ポンドだった。その安価な種牡馬の初年度産駒から、G3モルコムS(芝5F)勝ち馬リヴァティービーチが登場。この他、重賞入着馬が3頭出ている。

 欧州3位が、現役時代に7〜8FのG1を4つ制したグレンイーグルス(父ガリレオ)で、総収得賞金こそ57万5846ポンドに留まったが、G2ジュライS(芝6F)勝ち馬ロイヤルリーサム、G2ロイヤルロッジS(芝8F)勝ち馬ロイヤルドーノックと、2頭の重賞勝ち馬を出している。

 16年に欧州で種牡馬入りした馬には、15年の欧州スプリントチャンピオンのムハーラー(父オアシスドリーム)や、15年の欧州年度代表馬ゴールデンホーン(父ケイプクロス)といった大物がいたが、ファーストシーズンサイヤーランキングでは、それぞれ15位と17位に出遅れた。

 ムハーラーは、2歳重賞を獲ってはいたものの、本格化したのは3歳夏以降だったし、ゴールデンホーンも頭角を現したのは3歳春だ。いずれも、3歳を迎えて実が入る産駒が多いはずで、今季の巻き返しを期待したいところだ。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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