ピンチをチャンスに

2020年03月17日(火) 18:00

更なる売上向上に“薄暮開催”への期待

 先週に続いて新型コロナウイルスによる影響についてなのだが……。その前回、無観客で行われた川崎のエンプレス杯が売得金レコードで驚いた、ということを書いた。するとそのコラムが公開された10日、今度は高知から「1日の売上レコード」というリリースがあってさらに驚かされた。

 本サイトのニュースでも配信されたが、交流重賞の黒船賞が行われた、その日1日の高知競馬の売上10億8952万9400円が、前年の黒船賞当日の10億3090万0900円を上回ってのレコードとなったと。

 ちなみに黒船賞1レースでは前年の額にわずかに及ばず、前年が春分の日の祝日で、今年が平日の火曜日、さらに無観客の開催という条件での1日の売上レコードには驚きも倍増だ。

 高知の売上アップは青天井ともいえる状況。南関東が船橋以外昼間開催になる1〜3月は、船橋開催と重ならなければ単独ナイター開催となる高知にとっては、近年もっとも売上が上がる期間。今年1月の1日平均は前年同期比130.2%で7億547万円余り、同2月は142.7%で7億4937万円余りにまでなった。

 そして2019年度(4月〜2月)の1日平均では、前年同期比128.8%で4億9754万円余り。この高知の1日平均の売上は、なんと、兵庫(4億7861万円余り)を超えてしまった。1日平均で10億円を超える南関東4場とはさすがに差があるが、ついに高知は地方競馬で南関東4場に次ぐ5番目の売上を記録するまでになった。どん底だった08年の1日平均4042万円余りの、じつに12倍以上だ。

 その高知に対抗するというわけでもないのだろうが、兵庫県競馬組合では、すでに無観客で実施されている園田競馬の開催で、今週3月17〜19日の開催を通常より1時間半程度繰り下げ、メインレースの発走を17時50分、最終レースを18時25分とすることを発表した。

 園田競馬場では金曜日限定とはいえ、すでにナイター競馬(おおむね5月〜10月)が行われている。それゆえこの薄暮的な開催はたいしたことではないと思われるかもしれない。しかしこれまでは金曜以外、日が長くなる夏季でも最終レースは16時台より遅くなることはなく、薄暮的な時間帯の開催は初めてのことなのだ。

 そのだ金曜ナイターが実現したのは、10年以上の長きに渡って近隣住民との折衝を重ねてのこと。住宅街にあり学校や会社からの帰宅時間と重なるということが理由なのだろう、夏でも薄暮開催ということすら難しかった。

 それが実現に至ったのは、言うまでもなく無観客開催ゆえ。17、18日は単独ナイターの高知と開催がかぶるが、19日は17時が最終レースの笠松が終われば、園田の後半3レースは単独開催となる。

 兵庫県競馬組合広報課によると、「それで売上がどうなるか、試験的に時間を繰り下げてみました」とのこと。とはいえ通常時と時間を変えると、輸送をともなう西脇トレセンに所属する人馬に負担がかかるため、その状況も確認しながら、次週以降の開催をどうするか判断していくとのことだった。

 現在の兵庫県の日没は18時10分ごろ。この薄暮的な時間帯の開催(主催者は「薄暮開催」とは言っていない)が実現したのも、ナイター設備があったからこそ。

 さて、兵庫のこの判断が“あっぱれ”となるかどうか。無観客というピンチが、薄暮的な時間帯の開催が可能になったという、ネット全盛時代であるがゆえのチャンス。

 未定とされる翌週も、24、25日には高知ナイターがあるが、26日は浦和、名古屋の昼間開催だけ。少なくともその週まで薄暮的な時間帯で開催していただき、売上がどう推移するのか、ちょっと興味がある。

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斎藤修

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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