異様な光景に驚かされた青森出張

2020年05月13日(水) 18:00

予定通りの開催を願ってやまない

 不要不急の外出は自粛するように、との要請が出ている北海道だが、仕事とあらばどうしても出かけざるを得ない。私事で恐縮だが、去る5月7日〜9日にかけて、青森に出張してきた。13日締め切りのセレクトセール用立ち写真を撮影するのが目的である。

 7月中旬に開催予定のセレクトセールについては、今のところ予定通りと伝えられる。その一週間後(7月21日)に予定されていたセレクションセール(主催・HBA日高軽種馬農協)については先頃、約一ヶ月の延期が決まり、8月24日、サマーセールの前日に開催されることになった。当然、今後の新型コロナウイルス感染拡大に歯止めがかからなければ、セレクトセールとて何らかの変更(日程、開催形式等)があり得るわけだが、現時点で発表がない以上、当初の予定通りに準備を進めなければならない。

 立ち写真は13日に東京必着のこと、と決められている。当歳馬にしろ、1歳馬にしろ、そのように定められているのならば、期日を守り、準備をしなければならない。逆算すると、遅くとも10日前後には写真を発送する必要があり、そのためには、9日までに撮影を済ませておきたいところ。そんなわけで今回、青森に出張したのであった。

 日高から青森まではいくつかルートがあるが、最も便利で安上がりなのが、苫小牧からフェリーで八戸まで行く方法だ。幸い、今回の依頼主の牧場は八戸港から車で30分くらいの場所に位置しているので、迷わずフェリーに乗ることにした。ただし、車もろとも乗ると高くつくので、苫小牧港に車を置き、人間だけ乗って、八戸港まで迎えに来て頂くことにした。人間だけならば、最安コースだと、二等船室で片道6000円ほどだ。

 とはいえ、昨年までは、大型連休時期のフェリーは、大げさに言うと超過密状態で、どうかすると希望の便に乗船できないこともあった。昨年など、それでやむを得ず、朝5時に苫小牧港を出る便の二等船室をやっとの思いで予約し、出発した苦い経験もある。朝5時に出る便に乗船するには、自宅を午前2時に出発しなければならない。これはさすがに体に堪えた。

 さて、今回。出発は5月7日午後11時59分の便であった。連休明けの翌日のことゆえ、混雑とまでは言わないにしても、さぞ結構な数の乗船客がひしめいているものと覚悟しながら苫小牧港に到着してみると、まず駐車場に止まっている車の数が異様に少ないことに驚いた。かつて見たことがないほどの空き状況であった。

 フェリーの乗船手続きを済ませ、ターミナルの待機スペースに上がったが、そこでも客はほぼいない。私以外にはわずか3人のみ。気味悪いほどの少なさであった。

 午後11時に乗船したが、船内も人が少なく、ほとんど誰とも会わずに八戸港まで向かうことができた。往路は三密を警戒して二等寝台(個室)を取ったが、そんな必要がないくらいに乗客がいなかった。物流関係の大型トラック以外の、一般旅行客が皆無に近いことに驚かされた。少なくとも苫小牧〜八戸間のフェリーに関しては、大型連休中でもいつになく空いていたらしいので、ここでは不要不急の外出(旅行)自粛がしっかり守られている、ということなのだろう。

生産地便り

約8時間ほどで八戸港へ到着、さすがに乗船率は低かった

 8日午前7時半に八戸港に接岸した。出迎えてくれた依頼主の車に乗り込み、牧場に向かう。朝から雲ひとつないほどの晴天に恵まれ、午前中のうちに予定通り撮影を終えることができた。いずれも1歳馬でサトノアラジン産駒とイスラボニータ産駒である。

生産地便り

サトノアラジン産駒の1歳牡馬

「北海道はコロナで大変でしょう?」と心配して頂いた。北海道は感染者がもう少しで千人に達しようという状況だが、幸い、日高はかなり早い時期に2人発症して以後、新たな感染者が出ていない。一方の青森は、8日の時点で確か27人と伺った。青森県での感染第一号と二号は、八戸市内の会社経営者だったという。3月中旬にスペイン旅行から帰国し、感染していることが判明したそうな。すぐに個人名が特定されてしまい、八戸市内の自宅には、心ない人々からの投石や脅迫電話などが頻発したと聞く。「こんな時期にのこのこ海外なんか行くから感染したんだよ」とでも言いたい人々が嫌がらせに及んだのだ。

 しかし、青森では5月7日以降、新たな感染者は出ておらず、来る7月7日の「八戸市場」も、今のところ当初の日程通りに開催する予定とのこと。現時点では約40頭の上場申し込みがあるようで、何とかこのまま無事に開催に漕ぎつけたい意向だという。

 今後どうなるのかまだ予断を許さない部分はあるものの、セレクトセールも八戸市場も、当初の予定通りに開催できることを願ってやまない。

 なお、八戸から苫小牧への復路は、往路以上に空いていて、私の乗った二等船室(当初の予定から変更した)は、300人超の定員のスペースに、何と私1人だけであった。あまりの人の少なさにかえって落ち着かなくなったほどだ。フェリー会社、大丈夫か、と心配になってきたのであった。平常の状態に戻るのは果たしていつのことになるのやら。

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田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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