あっぱれ!57歳のダービー制覇

2020年06月02日(火) 18:00

レースぶりもあっぱれ!2着に6馬身差をつける圧勝

 日本ダービーでコントレイルが無敗のまま父仔で二冠制覇を達成した2時間半後、佐賀競馬場で行われたのは、地方競馬の『ダービーシリーズ』第1弾、九州ダービー栄城賞。

 ここまで地元では負けなし、10戦10勝で一冠目の佐賀皐月賞を制していたミスカゴシマが単勝1.4倍で断然人気。二冠制覇は確実かに思われたが、勝ったのは佐賀皐月賞で2着だったトップレベルだった。

 殊勲の鞍上、兒島真二騎手は1962年8月生まれ。57歳での“ダービー”制覇はあっぱれ!だったが、上には上がいるもので、2017年の兵庫ダービーをブレイヴコールで制した川原正一騎手は、当時58歳だった。

 それにしても兒島真二騎手は、そのレースぶりもあっぱれ!だった。1〜2コーナーを回ったのは縦長の12頭立て8番手あたり。向正面に入ると進出を開始し、向正面中間あたりでさらに加速。3コーナー過ぎで早くもまくり切ると、そのまま後続を突き放し、2着のエアーポケットに6馬身差をつける圧勝。ミスカゴシマは道中の行きっぷりからイマイチで、さらに離れての3着だった。

 兒島真二騎手の大胆なレースぶりには伏線があった。一冠目の佐賀皐月賞でも前半は中団よりうしろを追走。向正面から仕掛けていったものの、3コーナーですでに単独で抜けていたミスカゴシマをとらえることができず、それでも直線猛追し、ゴールではクビ差まで迫っていた。

 佐賀皐月賞(1800m)からさらに200mの距離延長で、逆転できる手応えはあったのだろう。「相手はミスカゴシマだと思って、距離を計って仕掛けていった」という。さすがに先頭に立つのが早すぎたかと思ったそうだが、最後まで行き脚は衰えず、早めにまくり切る作戦が功を奏し、ゴールの瞬間は左手でガッツポーズを見せた。

九州ダービー栄城賞を制しガッツポーズの57歳、兒島真二騎手(写真:佐賀県競馬組合)

 兒島真二騎手は愛知所属として1981年にデビュー。2015年2月15日付けで佐賀に移籍したが、それまで愛知所属時は地方通算2213勝を挙げていた。それだけ活躍していた騎手が52歳(当時)という年齢で移籍するというのもめずらしい。出身が鹿児島だからということはあったのかもしれない。佐賀移籍後のここまで5年3カ月ほどでも302勝を挙げている。

 兒島騎手といえば、名古屋時代に印象的だったのは、2005年に地元名古屋で行われたJBCクラシック。牝馬のレイナワルツに騎乗し、ラチ沿い好位を追走していって3コーナー過ぎで先頭に立つと、直線を向いて後続を突き放した。大金星か!と思ったところ、残り50mでタイムパラドックス、ユートピアという中央のGI馬2頭に交わされ、惜しくも3着。初めて名古屋で行われたJBCを盛り上げた。

 名古屋でも2013年に東海ダービーをウォータープライドで制しており、今回佐賀でも九州ダービー栄城賞を制覇。50歳代で“ダービー”2勝という記録にもなった。

 さて、高齢での“ダービー”といえば、的場文男騎手。明日(6月3日)に行われる東京ダービーではモンゲートラオに騎乗する。

 的場騎手はこれまで東京ダービーに37回騎乗し、2着が10回。昨年は残念ながら騎乗がなかったが、一昨年は6番人気のクリスタルシルバーで惜しくもクビ差。1998年ゴールドヘッドに騎乗したときと同じ、10回の2着の中で1着馬と最小の着差だった。

 今回騎乗するモンゲートラオには、初騎乗だった羽田盃が勝ち馬から1秒2差の5着。東京ダービーに向けては、みずからが調教にまたがって鍛えてきたそうだ。63歳での、まさに悲願といえる東京ダービー制覇なるかどうか。こちらも注目だ。

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斎藤修

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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