革命的なスピード血統の記憶を呼び覚ます勝利

2020年07月06日(月) 18:05

先週の血統ピックアップ

・7/5 ラジオNIKKEI賞(GIII・福島・芝1800m)

 果敢にハナを切ったバビットがマイペースの逃げに持ち込み、最後の直線で後続を突き放して5馬身差で圧勝しました。中央開催ではなくローカルで連勝して臨んできたため、人気の盲点(8番人気)となっていました。

 父ナカヤマフェスタはオルフェーヴルやゴールドシップと同じステイゴールドの仔で、現役時代に稍重の宝塚記念を勝ったほか、フランスの凱旋門賞では道悪をものともせず2着と健闘しました。種牡馬としてはこれまでに日経賞を勝ったガンコ、万葉Sを勝ったヴォージュなどを出しています。重厚さとスピードの持続力に特長のある血統なので、稍重とはいえ力の要る馬場コンディションだった今回は、持ち味を十二分に発揮することができました。

 ちなみに本馬とガンコはいずれもヘイロー4×4で、本馬はヘイローの息子デヴィルズバッグを、ガンコはヘイローの娘グローリアスソングを持っています。デヴィルズバッグとグローリアスソングは全兄弟。したがって、重賞勝ち馬2頭は配合的に似たところがあります。さらにいえば、前出のヴォージュはサンデーサイレンス(父ヘイロー)のクロスを持ちます。ヘイロー〜サンデーサイレンスのラインを入れたナカヤマフェスタ産駒は注目です。

・7/5 CBC賞(GIII・阪神・芝1200m)
 ダッシュよく先頭に立ったラブカンプーが後続を寄せ付けず逃げ切りました。一昨年のスプリンターズSでクビ差2着となったのを最後に、15戦して一度も掲示板に載れない深刻なスランプに陥っていたため、今回も16頭立ての13番人気と無視された存在でした。好位追走という無難な競馬を捨て、逃げの手に出て気分よく飛ばしたことで、馬に走る気が戻ったのかもしれません。

 父ショウナンカンプは現役時代に高松宮記念を勝ちました。サンデーサイレンス系でもキングカメハメハ系でもノーザンダンサー系でもミスタープロスペクター系でもありません。1967年12月に輸入されたテスコボーイに遡る異色父系です。

 テスコボーイは70年代から80年代にかけてテスコガビー、トウショウボーイ、サクラユタカオーをはじめ多くの名馬を出し、わが国の馬産に“スピード革命”を起こしました。優秀なスピードを脈々と伝えたからこそ、日本に上陸してから半世紀を経たいまなお、父系が生き残っているわけです。

 テスコボーイの息子サクラユタカオーは芝1800mと芝2000mの日本レコードを樹立した名中距離馬で、その息子サクラバクシンオーはスプリンターズSを連覇した日本史上有数のスプリンターでした。さらにその息子がショウナンカンプで、その娘がラブカンプーです。

今週の血統注目馬は?

・7/12 横津岳特別(2勝クラス・函館・芝2600m)

 登録馬の父のなかで函館芝2600mに強い種牡馬はハービンジャー。通算43戦12連対(連対率27.9%)という成績は、2010年以降、当コースで産駒が20走以上した11頭の種牡馬のなかで第1位です。現役時代にヨーロッパで活躍した馬だけに洋芝適性が高く、それが好成績に結びついています。このレースにはトロピカルストームが登録しています。函館芝2600mでは過去[1-3-1-2]で、一度も掲示板を外したことがありません。すでに7歳ですがセン馬なので衰えはなく、過去5走中4回馬券圏内に入っています。半年ぶりの実戦、ということで人気が落ちるならむしろ狙い目でしょう。

今週の血統Tips

 7月5日、フランスのシャンティイ競馬場で行われた仏オークス(G1・芝2100m)は、2番手を追走したファンシーブルーがゴール前の追い比べを制して快勝しました。その父はディープインパクト。アイルランドのクールモアグループが日本にチェンチコヴァという繁殖牝馬を送り込み、受胎した母がアイルランドに戻って産んだ牝馬がファンシーブルーです。

 クールモアグループが同様のパターンで作った名馬にはサクソンウォリアー(英2000ギニー、レーシングポストトロフィー)がいます。ディープインパクトは日本だけでなく海外でも産駒が大成功している稀有な種牡馬で、フランスのクラシックホースは、ビューティーパーラー(仏1000ギニー)、スタディオブマン(仏ダービー)に次いで3頭目。ヨーロッパでデビューした産駒はごくわずかしかいないにもかかわらず、次々と大物を出していることは驚異的というほかありません。ディープインパクトが死んでからもうすぐ1年。喪失感はますます大きく感じられます。

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栗山求

netkeibaでもおなじみの血統評論家・栗山求氏が血統の面白さを初心者にもわかりやすくレクチャー。前週の振り返りや、週末行われるレースの血統的推し馬、豆知識などを通して解説していきます。 関連サイト:栗山求の血統BLOG

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