無観客でも売り上げ好調な地方競馬

2020年08月06日(木) 18:00

地方競馬の堅調ぶりは生産地にとっても追い風となるか

 今月24日(月)より、いよいよ日高もサラブレッド市場が開始される。現在のところセレクションセール(24日)、サマーセール(25日〜28日)と5日間連続の日程となっており、名簿上では合わせて1373頭(セレクション225頭、サマー1148頭)もの1歳馬が上場を予定している。

生産地便り

日高でもサラブレッド市場が始まる(写真はイメージ)

 新型コロナウイルスの感染拡大という厄介極まる問題が日本社会全体に暗い影を落としている中での市場である。関係者の間でも、市況がどうなるかについての判断は大きく分かれており、なんとも見通しが利かない。「正直なところ、不安だ。どの程度の売れ行きになるものか全く予測できない」とやや悲観的な心情を吐露する生産者もいる反面、「とりあえず競馬は無観客であっても順調に開催できている。中でも地方競馬はかなり売り上げが増加している。そのことからも馬を買いたい人々は強い購買意欲を持っているはず」と期待を寄せる声も多い。

 その地方競馬に関しては、前回、ホッカイドウ競馬が7月に二度、売り上げレコードを記録したことについて触れた。今回は今年上半期における全国の馬券売り上げ集計を紹介してみたい。

 地全協が公表している「地方競馬開催成績、令和2年1月〜6月」の競馬場別の入場人員と総売得金一覧によれば、ばんえいを含む全国15場で、今年上半期に616日(前年比16日増)が開催され、435459人が入場したという。ただし、入場人員に関しては各場とも2月下旬より無観客開催に踏み切っていることから、3月以降はゼロの日が続いており、1日平均では707人、前年比29.2%に過ぎないので、これは比較しても意味はない。

 だが、その代わりに、馬券売り上げは快調そのもので、上半期だけで3931億500万円(前年比123.8%)に達しており、1日平均では6億3815万7500円(前年比120.6%)と大幅な上昇を記録している。

 参考までにひと昔前の2010年(平成22年)の数字と比較してみると、この年の1月〜12月までの1年間では、全国17ヵ所(当時は福山、荒尾も開催していた)の競馬場で、1466日間の開催が行われ、3477億9692万円の売り上げであった。このことからも、近年、地方競馬がどれほど急激に売り上げを伸ばしてきたかが窺える。

 2010年当時、ホッカイドウ競馬は、80日間で112億4161万円しか売れていなかった。1日平均では1億4052万円である。全国平均でも、1日当たり2億7565万円の売り上げで、南関4場以外はどの競馬場も1億円台になっている。1日平均で最も売り上げの低い競馬場は高知で、6592万円。次に荒尾が6935万円、そして帯広(ばんえい)が7058万円である。

 しかし、今年の上半期には、ホッカイドウ競馬(4月〜6月までのデータだが)が26日間で145億6531万円、1日平均5億6020万円。帯広(ばんえい)が71日間で182億8231万円、1日平均2億5749万円。門別も帯広もそれぞれ前年比で1日平均139.6%、137.5%と大幅な増加となっている。

 そして10年前には1日の売り上げがわずか6592万円しかなかった高知が、その後驚異的な回復を見せて、今年上半期には、60日間の開催、総額407億2005万円、1日平均で6億7866万円にまで数字を伸ばしてきた。通年では、800億円の大台も夢ではないところまで漕ぎつけており、実にこの10年間で10倍の急成長である。

 ここまで来ると、もはや「回復」どころではなく「快進撃」と表現したほうが適切だ。

 高知は前年比の伸び率も、総額で143.9%、1日平均で141.5%となっており、ついに1日当たりの売り上げは園田競馬場を抜いて南関4場に次ぐ全国5位にランクされるまでになった。

 もちろん他の地方競馬の各場も総じて順調で、これまで抑えられてきた賞金体系や諸手当の増額に踏み切っているところが少なくない。賞金が上がれば、それだけ馬を持ちたい人も増えてくる。従来、100万円台、200万円台の予算で我慢していた購買者が、徐々に上限を上げて行くのではないか、と期待を寄せる人も多い。

 いずれにせよ、これは生産地にとっても大きな追い風で、コロナ禍による先行き不透明な時代に、地方競馬の堅調ぶりは何より大きなプラス要素として映る。

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田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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