【凱旋門賞制覇】弟の悲願達成にミルコ騎手も感涙「きっとお父さんが力をくれた……」

2020年10月06日(火) 18:04

「Road to No.1」

▲クリスチャン騎手が5度目の挑戦で凱旋門賞勝利! デムーロ兄弟の絆 (C)netkeiba.com

4日にパリのロンシャン競馬場で行われた凱旋門賞。A.オブライエン厩舎の4頭から禁止薬物が検出され、武豊騎手が騎乗予定だったジャパンも出走取消となる残念な出来事があった一方、ミルコ騎手ファンにはうれしい結果となりました。愛弟のクリスチャン騎手が初戴冠。先月6日に逝去したお父様に捧げる勝利となりました。

この勝利の陰に、兄ミルコ騎手からの助言あり!? 兄弟でつかみ取った勝利の舞台裏、そして、中継で見ていたミルコ騎手がついつい我を忘れてとってしまった恥ずかしい行動とは!?

(取材・文=森カオル)

※このインタビューは電話取材で行いました。

我慢できずに絶叫!新幹線の中で不審者扱い!?

──日曜日に行われた凱旋門賞は、5度目の挑戦となった弟のクリスチャン騎手がソットサスで勝利。おめでとうございます!

ミルコ ありがとうございます! いやぁ…ホントにすごいなぁ。感動しました。僕、涙が出てきました。だって、凱旋門賞を勝つことは、クリスチャンが騎手になったときの約束だったから。「凱旋門賞を勝てなかったら、僕の弟じゃない!」とか、よく言ってました。

──そんな約束があったのですね。

ミルコ そうです。クリスチャンが凱旋門賞を勝つことは、僕の夢でもありました。凱旋門賞だけは、絶対に勝ってほしかった。夢が叶いましたね。

──残り200mで先頭に立つ競馬でしたが、ゴールまでが長く感じられたのではないですか?

ミルコ そうですね。僕、あの時間はひとりで新幹線に乗っていたんです。レースが始まったのは、ちょうど名古屋のあたりだったかな。レース中は、ずっと声を出すのを我慢していたんだけど、最後はけっこう大きな声で叫んでしまって…。隣の人をビックリさせてしまいました(笑)。周りの人たちも、「この人、大丈夫!?」って思ったはず(苦笑)。

──なんか変な人がいるぞって、ざわざわしたでしょうね(笑)。

ミルコ 僕、完全に変な人でした(笑)。でも、あのときばかりはしょうがない!

「Road to No.1」

▲ゴール前の大興奮「僕、完全に変な人でした」 (C)BRIENS PHOTO

ミルコ騎手の助言が勝利を手繰り寄せた

──今回の凱旋門賞について、クリスチャン騎手からは事前にどんな話を聞いていましたか?

ミルコ 先々週の時点だったかな、今回勝ったソットサスとは違う馬に乗る予定だと話していて。

──そういえば、もう1頭お手馬がいたんですよね。

ミルコ そうなんです。3歳牝馬のラービアーに乗る予定だと聞いて、僕、「なんで? どうして?」とかなり怒りました。「ソットサスのほうが絶対に強いと思う!」と言ったら、「ミルコ、ソットサスはまだ調子が良くないんだよ」と。「噓でしょ?」と思った。去年3着だったし、僕はずっとソットサスの力を信じていました。

 クリスチャンは、すごく迷っていましたね。でも、先週の調教でソットサスがすごくよくなっているのを感じて、こっちを選びました。いや〜、ホントによかった。

──枠順もすごくいい枠で(3番枠)。道中も内々3番手で絶好のポジショニングでしたね。

ミルコ 本当にいい枠で、道中も絶好の位置にいて、最後まで完璧な競走でした。何回も映像を見たけれど、クリスチャンは本当に上手い。完璧だった。(先月亡くなった)お父さんも、とっても喜んでいると思います。

──ゴール後は、右手を空に突き上げて、そのあと胸をポンポンと叩いていましたね。真っ先にお父さまに報告されているのかなと思って見ていました。

「Road to No.1」

▲右手を空に突き上げたクリスチャン騎手の胸の内は… (C)BRIENS PHOTO

ミルコ そうだと思います。僕もゴールした瞬間、お父さんのことを思っていました。きっとお父さんが力をくれたはず……そう思って。絶対に見ていてくれたと信じています。

──レースのあと、クリスチャン騎手とはどんなお話をされたんですか?

ミルコ 次のレースもあったし、審議になったから裁決のところに行ったりで忙しいだろうなぁと思って、すぐにメッセージを送らなかったんです。そうしたら、「なにしてるの? 寝てるの?」って連絡がきた(苦笑)。

「寝てないよ! あなたからの連絡を待ってた」と言ったら、クリスチャンもものすごく感動していて、「いま死んでもいいくらいうれしい!」と。「僕も同じだよ」という話をしました。

──ミルコ騎手としては、うれしい反面、悔しい思いもあるのでは?

ミルコ もちろんです! 勝ちたいです、ホントに。凱旋門賞を勝つことは、僕の夢でもあります。でも、クリスチャンも頑張ってきたからね。僕は誰よりもそれを知っているから。

──とはいえ、改めて「凱旋門賞を勝ちたい」という思いが強くなったのではないですか?

ミルコ 昔からずーっと勝ちたいと思っています。それこそ、ジョッキーになったときからね。凱旋門賞、ジャパンC、ブリーダーズC……世界中の大きいレースを勝ちたいと思って、ずっと頑張ってきた。まだまだいっぱい夢があるね。

 僕はあきらめない。絶対にあきらめない。いつか絶対に日本の馬で凱旋門賞を勝ちたい!

(文中敬称略)

バックナンバーを見る

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

質問募集

このコラムでは、ユーザーからの質問を募集しております。
あなたからコラムニストへの「ぜひ聞きたい!」という質問をお待ちしております。

ミルコ・デムーロ

1979年1月11日、イタリア生まれ。弟のクリスチャン・デムーロはイタリアのジョッキー。1997年から4年連続でイタリアリーディング。1999年に初来日。2003年、ネオユニヴァースの皐月賞でJRAGI初制覇。続くダービーも制し、外国人ジョッキー初の東京優駿制覇。2015年3月1日付けでJRAジョッキーに。

関連情報

新着コラム

コラムを探す