ディアドラのラストラン、バーレーン・インターナショナル・トロフィー展望

2020年11月18日(水) 12:00

異国での引退レースを勝利で飾り、長期遠征を締めくくれるか?

 ここ2シーズンにわたって世界の競馬をおおいに盛り上げてくれたディアドラ(牝6、父ハービンジャー)の引退レースとなる、第2回バーレーン・インターナショナル・トロフィー(芝2000m)の発走が、20日(金曜日)の現地16時00分、日本時間の同日22時00分に迫っている。

 ディアドラは、8頭の英国調教馬とともに15日(日曜日)に現地に到着。遠征には慣れた同馬だけに、輸送で体を減らすこともなく、翌16日から馬場での運動を行っている。

 舞台となるサヒール競馬場は、三角形の右回りコースで、1周が2300m。スタンドから見て左手にあるコーナーを廻り切った辺りが2000m戦のスタート地点で、三角形の頂点にあたるカーブが緩やかであるのに対し、最終コーナーはややきつめ。最後の直線は600mある。

 昨年の勝ち時計が2分0秒41だから、ヨーロッパの一般的なコースよりはクイックなグラウンドだ。この時季のバーレーンは雨が降ることが珍しくないが、レース当日までの予報は良く、良馬場での開催が見込まれている。

 第1回の昨年よりは遥かに上質の出走馬が揃ったが、レイティング首位は持ちレート114に牝馬のアローワンス4ポンドを加味すると118となるディアドラだ。馬場状態やトラックの形状はこの馬向きで、現在の英国で最も乗れていると言って過言ではないホリー・ドイルが手綱をとるのも魅力的だ。

 思いがけぬ大敗を喫した7月のG1ナッソーSの後、心身両面の立て直しを図った効果が、目に見える形で表れているだけに、ここはディアドラ本来の競馬をしてほしいものだ。長かった旅路が幸福な結末を迎えることを、切に祈っている。

 レイティング116で序列第2位なのが、エイダン・オブライエンが管理し、ライアン・ムーアが手綱をとるソヴリン(牡4、父ガリレオ)だ。2勝馬だが、このうちの1つは、6馬身差の逃げ切りを演じて大金星を挙げた昨年のG1愛ダービー(芝12F)である。

 今季2戦目となった3頭立てのG1キングジョージ6世&クイーンエリザベスS(芝11F211y)でエネイブルから5.1/2馬身差の2着に入り、能力があることを実証。その後、G1愛セントレジャー(芝14F)6着、前走G2ブリティッシュチャンピオンズ・ロングディスタンスC(芝15F209y)5着の成績でここへ臨んでいる。2000mを走るのは、3着となった3歳春のG3愛ダービートライアルS(芝10F)以来となる。

 これに続くのが、レイティング115を持つ、アンドレア・アッゼニ騎乗のデザートエンカウンター(セン8、父ホーリング)だ。18年・19年とウッドバインのカナディアン国際(芝12F)を連覇している同馬。この秋は自国に留まり、ニューベリーのG3レガシーC(芝11F)がエラーカムの2着、ヨークのカンバーランドロッジS(芝11F188y)がユーケングレンの2着、前走アスコットのG1チャンピオンS(芝9F212y)5着の成績を残している。

 一方、ブックメーカーの人気は、レイティングとは異なる序列となっている。

 レースベッツがオッズ5.5倍で横並びの1番人気としているのが、ベン・カーティス騎乗のサーテンラッド(セン4、父クロドヴィル)と、フランキー・デットーリ騎乗のグローバルジャイアント(牡5、父シャマーダル)だ。

 2歳時から重賞戦線に顔を出していたものの、出世が遅れ、今年8月にヨークのG3ストレンソールS(芝8F177y)を制し、ようやく重賞初制覇を果たしたのがサーテンラッドだ。前走ニューマーケットのケンブリッジシャーH(芝9F)は、9ストーン5ポンド(約59.4キロ)という、3番目に重いハンデを背負ったこともあり、12着に敗れている。

 バーレーンの王族が所有するグローバルジャイアントは、7月19日にニューベリーのLRスティーヴントンS(芝10F)を制し2度目の準重賞制覇後、8月8日にヘイドックで行われたG3ローズオブランカスターS(芝10F42y)で3着となり、通算3度目の重賞入着を果たしている。

 19年のG1クイーンアンS(芝8F)勝ち馬で、前走アスコットのG1クイーンエリザベス2世S(芝8F)6着のロードグリッターズ(セン7、父ウイッパー)が6倍で3番人気。2月のモハメドユスフナギモーターズC(芝2100m)でディアドラを2着に退けて優勝したポートライオンズ(セン5、父コーディアック)が6.5倍で4番人気。ディアドラはオッズ10倍でデザートエンカウンターと横並びで5番人気となっている。

 残念ながら日本で生中継の予定はないが、日本の競馬ファンの皆様にもぜひご注目いただきたい一戦だ。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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