未来優駿と2歳ダートグレード

2020年11月24日(火) 18:00

対象レースが拡大されたものの…

 地方競馬の2歳重賞シリーズ『未来優駿』が11月17日の大井・ハイセイコー記念で終了した。とはいえ、今ひとつ盛り上がりに欠けるシリーズであることは、以前にもこのコラムで指摘したことがある。その理由はいくつかあり、必ずしも世代チャンピオンを決める位置づけではない2歳重賞が対象レースになっているところがあったり、『グランダム・ジャパン』のように最終的にシリーズチャンピオンを決めるわけでもなく、対象レースを勝ってもその先に何かがあるわけではないことなど。

 ただ今年はその『未来優駿』の対象レースが大きく見直された。これまで南関東では対象レースが1レースだったのが4レースに拡大。また対象レースが変更されたところがあり、北海道では出世レースと言われるサンライズCに、岩手では地方全国交流の南部駒賞になり、それぞれ注目度の高いレースとなった。また近年若馬の充実が著しい高知で黒潮ジュニアチャンピオンシップがシリーズに加わった。これらにより、昨年までは対象レースが7レースだったものが、今年は11レースに増えた。

 今年の『未来優駿』からは、大井のゴールドジュニアとハイセイコー記念を連勝し、ここまでデビューから4連勝というアランバローズという注目馬が出た。ただそのアランバローズがこのあと、全日本2歳優駿やジャパンダートダービーなどのJpnIで活躍することがあっても、「未来優駿から出てきた」と言われるような可能性は少ない。

『未来優駿』の価値を上げるためには、その勝ち馬に対して、JBC2歳優駿、兵庫ジュニアグランプリ、全日本2歳優駿などの2歳ダートグレードに向けて、優先出走権的なものを与えることや、ボーナス的なものが設定されてもいいのではないか。全日本2歳優駿へ向けては、すでに鎌倉記念、平和賞、ハイセイコー記念から優先出走権が設定されているが、全国的な連携は必要だろう。

 たとえば『3歳秋のチャンピオンシップ』のシリーズでは、ファイナルのダービーグランプリにボーナスがかかっているし、またダービーグランプリの優勝馬が同年のJBCに出走した場合、JBC出走奨励金として200万円が支給される。

 ただ、このJBC出走奨励金についてはやや強引だった感も否めない。『3歳秋のチャンピオンシップ』対象レースの時期を全国的に繰り上げてまでやることだったのかどうか。地方の3歳馬をJBCに出走させて盛り上げたいという意図はわからないでもないが、今年の結果を見ても中央の一流馬とは能力差がありすぎる。

 その点、2歳戦であれば中央馬と地方馬の能力差はそれほど開いていない。未来優駿の勝ち馬が2歳のダートグレードを勝ったときにボーナス支給ということにも現実味はある。

 また2歳のダートグレードでは、JBC2歳優駿、兵庫ジュニアグランプリ、全日本2歳優駿が、JpnIII→JpnII→JpnIという段階的な格付にもなっており、『2歳ダート三冠』として盛り上げてもいいのではないか。今年であれば、中3週、中1週と、2歳馬にはちょっと厳しいローテーションにはなるが、非現実的な日程でもない。

 さらに2歳ダート路線を盛り上げるには、中央との連携も必要だろう。近年、中央でも2歳馬のダート戦が増えたとはいえ、一連の2歳ダートグレードに至る路線は希薄と言わざるをえない。

 今年の中央の2歳ダート戦を見ると、オープンはカトレアS(11/28東京1600m)だけ。1勝クラスの特別戦も、東は、プラタナス賞(10/17東京1600m)、オキザリス賞(11/14東京1400m)の2レースだけ、西は、ヤマボウシ賞(9/26中京1400m)、なでしこ賞(10/25京都1400m)、もちの木賞(11/21阪神1800m)、寒椿賞(12/20中京1400m)の4レース。

 全日本2歳優駿を頂点とする2歳のダート路線、さらには3歳のダート路線を盛り上げるには、さらなる番組の充実が望まれる。

バックナンバーを見る

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

斎藤修

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

関連情報

新着コラム

コラムを探す