期待高まるミューチャリー

2021年05月25日(火) 18:00

22年ぶりの地方馬ワンツーも期待できる

 5月19日に行われた帝王賞の前哨戦、大井記念ではミューチャリーが2着に6馬身差をつける圧巻のレースを見せた。そのレースぶりからはダートグレードをまだ勝っていないのが不思議なほどで、地方重賞はこれで4勝目となった。

 ダートグレードを勝っていないのは、常にトップクラスの馬たちと対戦しているがゆえともいえる。ここまで重賞以外に出走したのは、デビューからの2戦と、3歳秋の準重賞と、計3戦のみ。全20戦のうち半数近い9レースがGI/JpnIへの挑戦となっている。

 昨年のフェブラリーSではスタートでタイミングが合わず後方からとなって、直線ではバテた馬を交わしただけの11着。今年のフェブラリーSでも後方からとなったが、直線で外に持ち出されるとレースの上り3Fが35秒9のところ35秒6で上がって7着。勝ったカフェファラオとは0秒9差だから、勝ち負けには遠かったものの一線級を相手にまずまずの走りを見せた。

 強いメンバーにもまれたことで、確実に進化はしていたのだろう。かしわ記念こそ陣営にとっても期待外れの6着だったが、そこから中1週で臨んだ大井記念で新たな一面を見せた。これまでのミューチャリーといえば、中団か中団うしろを追走し、直線では確実に伸びてくるものの、前をとらえるまでには至らずというレースが多かった。

 昨年の東京大賞典でも4コーナー10番手から上り3F=36秒0という脚を使い、着順こそ5着だが勝ち馬とは0秒2差。地方馬ではカジノフォンテンの惜しい2着がクローズアップされたが、ミューチャリーも相当高いパフォーマンスを見せていた。それが今回の大井記念では、前半はいつもどおり中団よりうしろからの追走だったが、向正面から抜群の手応えで位置取りを上げていくと、その勢いのまま、4コーナーでは早くも先頭をとらえ、直線で他馬を置き去りにした。

 時計の出やすい湿った馬場とはいえ、勝ちタイムの2分4秒3はすばらしい。大井2000mのGI/JpnIと遜色ない勝ちタイムだ。そもそも昨年大井のJBCクラシックでは、やはり時計の出やすい馬場だったとはいえ、クリソベリルの勝ちタイム2分2秒5に対し、4着のミューチャリーも2分4秒0で走っていた。それを思えば、今回の大井記念の勝ちタイムもむしろ当然というべきだったか。

「ここのところGIを使っていたぶん、道中も追走しやすくなって、向正面でもペースが落ち着いたので、自分から競馬を作っていこうと思って動きました」という御神本騎手のコメントからもミューチャリーの進化がうかがえる。それでいて「いつも通りのはじけ方をしてくれた」結果が、6馬身差の圧勝だった。

 近年、短距離路線では、ブルドッグボス、サブノジュニアと南関東勢がJBCスプリントを連覇するなど地方馬の活躍が目立つなか、中距離のGI/JpnIでは入着までで、あと一歩で勝ちきれないことがたびたびだった。それが今年になってカジノフォンテンが川崎記念とかしわ記念を勝利。1年のうちにGI/JpnIを複数制した地方馬は、ちょうど10年前、同く川崎記念とかしわ記念を制したフリオーソ以来のことだった。

 帝王賞には、カジノフォンテン、ミューチャリーと、南関東勢としては2枚看板で挑むことになりそう。現在休養中のクリソベリル、オメガパフューム、チュウワウィザードらの動向が気になるところだが、帝王賞では2010年のフリオーソ以来11年ぶりの地方馬の勝利と、1999年のメイセイオペラ、サプライズパワー以来22年ぶりの地方馬ワンツーという結果も期待できるかもしれない。

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斎藤修

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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