【高田潤騎手】超良血馬グローブシアターを障害界へスカウト! 二人三脚で頂点を目指す!

2021年06月20日(日) 18:02

今週のFace

昨年11月から障害に転向したグローブシアター(C)netkeiba.com

母シーザリオ、父キングカメハメハという良血・グローブシアターが26日、東京ジャンプステークス(J・GIII)に出走します。

元々は平地での走りを改善するために始めた障害練習でしたが、あまりのセンスの良さからスカウトされて障害転向が決まりました。そのスカウトの主は高田潤騎手。「光るモノがあった」というグローブシアターは期待通り、障害初戦を勝利で飾りますが、一方で集中しきれない性格がレースで災いすることも。そこで陣営はブリンカー着用や逃げの戦法など、あの手この手で集中力を維持させ能力を発揮させようと試みます。

普段、何気なく見ている障害レースに隠されたたくさんの「工夫」を高田騎手が語ってくださいました。

(取材・構成:大恵陽子)

※このインタビューは電話取材で行いました

集中力が増す!? 障害練習の効果とは

──良血・グローブシアターが4月3日の三木ホースランドパークジャンプステークスを勝利。おめでとうございます。障害転向から5戦目となりましたが、初めて跨られたのは障害転向が決まってからですか?

高田潤騎手(以下、高田騎手) いやいや、違うんです。今年2月に解散した角居厩舎の馬にはたまに調教で乗っていて、その流れで「最近、平地で思うような結果を残せていなくて、馬のバランスも整える意味で調教で障害を飛ばしてくれへんかな?」と声をかけていただいたんです。

──2月まではグローブシアターは角居厩舎の所属でしたものね。あくまで平地レースに目標をおきながら、調教の一環として障害練習を取り入れていたんですね。実際に障害練習を始めてみていかがでしたか?

高田騎手 たしかに右トモが全然使えていなくて、バランスも崩れているなっていう感じはしました。でもそんな状態なのに、障害を飛ばしてみたらフワッとしたすごく軽い飛びだったんです。「この馬、障害たぶん走ると思いますよ」って話していました。

──まだ体のバランスが整っていない段階で、それだけいい飛越をしたんですね。

高田騎手 その時点では障害レースに行く予定ではなかったので、バランスを整えたりトモを強化することはそのまま続けていました。それが、バランスが整って体も使えるようになってきたら、なおさら飛びが良くなってきたんです。「馬自身もたしかに良くなっていますけど、障害レースを使っても走ると思います。それも、ただ走るんじゃなくて、“かなり”走ると思います」と伝えました。他の馬とは違って、光るモノがありました。そうしたら、「オーナーサイドと話し合ってみます」ということで、オーナーのOKをもらって本格的に障害をやることになりました。

今週のFace

「ただ走るじゃなくて、“かなり”走る」(ユーザー提供:あすりさん)

──平地のレースで人気薄の馬が勝ったと思ったら、実は障害練習を取り入れていた、ということもたびたび聞きます。障害練習の具体的なメリットはどんな点なのでしょうか?

高田騎手 バランスとか集中力とかですね。レース中に集中力が切れて止めちゃう馬って、乗り手に意識が向いていない馬が結構多いです。障害では乗り手側に馬の意識が向きやすいです。障害を飛ばされるか飛ばされないかを馬は分かっていなくて、自ずと乗り手に意識を集中させて合図を待ちます。そういう意味で、メンタル面などにも結構効果があるなって感じます。グローブシアターも元々、並ばれると止めたり、併せ馬をして負けるところのあった馬でした。体を使えない、バランスが悪い、集中力がないという状態だったんですけど、それは逆を言えば障害調教にはもってこいで、伸びしろしかない状況でした。だから余計に効果があったんだと思います。

“簡単なコース”だと飽きちゃう?

──昨年10月の障害試験には95秒8というタイムで合格しました。

高田騎手 かなり速いタイムですよね。でも、その時も併せた相手の馬に負けているんですよ。障害を全部飛び終わって、3〜4馬身くらい前に出たんですけど、直線に向いて止めちゃって、差されたんです。そこで、調教からチークピーシズを着けてみたところ、集中力が上がって、レースでも着用を決めました。

──そうして、福島で迎えた障害初戦を見事勝利したんですね。

高田騎手 レースに行くと緊張していたのか、障害を見過ぎて慎重になって、ブレーキをかけて飛ぶたびにちょっとずつ遅れていきました。それでも、ずっと手応えは良くて「いつでも交わせるな」と感じていて、3コーナー付近でちょっと仕掛けたらピューンと行きました。集中力が切れる面もあるし、初障害だったので、直線の最後の障害までは先頭で飛ばしたくなくて、前の馬を交わさず併せて飛ばせました。いい初戦にはなったかなと思います。

の

福島競馬場での障害初戦(C)JRA

──オープンに昇格後は5、6、3着。オープンの壁もあったのでしょうか?

高田騎手 昇級初戦となった中京でのレースは、置き障害で最初からやる気をなくしていました。この馬にとっては簡単なコースは飽きちゃって、あまり向いていないのかなと思います。本場(東京、中山、京都、阪神)の大きな固定障害があるコースの方が合っているのかなと思います。

──ローカルの競馬場は平地レースで使用するコースにやや低めの置き障害を設置することが多いですが、四大競馬場だと高さも幅もある固定障害で、グローブシアターは気を抜かずしっかり走ってくれるんですね。昇級4戦目となる三木ホースランドJSでオープン初勝利を挙げました。それまでのレースとは色々と変えてきたようですね?

高田騎手 その前の小倉で3着だった時はレース後もあまり息が乱れていなくて、一生懸命走っていない感じがしました。そこで、厩舎サイドと相談してブリンカーを着用することになり、レースでも逃げを選びました。そうしたら勝ち時計もすごく速くて強い競馬だったんですけど、それでもレース後はケロッとしていて、改めてこの馬の能力の高さを感じました。

──真面目に走らせることが最も難しいのでしょうけど、それが叶った時はどれだけ強いんだろうと夢を見ます。

高田騎手 ブリンカーが良かったのか、逃げたのが良かったのか、ハッキリとは分かりませんが、集中力さえ切れなければ結果は出せる馬だと分かりました。闘志むき出しで全力で走るというより、「せめて集中力が切れないように」と気を付けて乗ろうと思っています。

今週のface

集中力さえ切れなければ結果は出せる! と高田騎手(C)netkeiba.com

──次走は6月26日の東京ジャンプステークスで、5月27日に帰厩したそうですが、状態はいかがですか?

高田騎手 毎日調教に乗っています。放牧から帰ってきた当初はまだ体に余裕があったんですけど、1週間乗って動きが変わってきて、レースには十分間に合うと思っています。

──今回もブリンカーを装着するのでしょうか?

高田騎手 ブリンカーが効いたとしても、慣れてくるといつまでも効く馬じゃないと思っています。今回も着用しますが、メンコを耳なし(耳の部分が覆われていないメンコ)のものを試してみようかなと検討中です。追い切りなどで試してみて、効果があるか調べながらレースまでにどういう装備でいくか決めると思います。

──置き障害よりも固定障害の方がいい、というお話がありました。東京コースで行われるジャンプ重賞への意気込みをお願いします。

高田騎手 東京は障害が大きく、直線には4つの連続障害があります。それは東京競馬場だけ。たすきコースはないので順回りですが、単なる順回りの簡単なコースというわけではありません。直線の障害は生垣、竹柵、水濠と種類も違います。この馬はいつ勝ってもおかしくないですし、いつ最下位を走ってもおかしくないような極端な馬ですが、こういう東京コースの特徴を生かして集中力を切らさずにいければと思います。

バックナンバーを見る

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

netkeiba特派員

ジョッキーや調教師など、毎週“旬”な競馬関係者にインタビュー。netkeiba特派員がジョッキーや調教師、厩舎スタッフなど、いま最も旬な競馬関係者を直撃。ホースマンの勝負師としての信念から、人気ジョッキーのプライベートまで、ここだけで見せてくれる素顔をお届けします!

関連情報

新着コラム

コラムを探す