異例の早さで終了した一番牧草の収穫

2021年07月01日(木) 18:00

鹿による食害と少雨の影響で収穫量は減少

 今年の6月は、連日好天に恵まれ、例年と比べるとかなり雨量の少ない月であった。折から日高では、一番牧草の収穫が6月上旬あたりから始まっている。我が家も例外なく、この作業を始めた。

 牧草は通常、年に二回の収穫である。一番牧草と二番牧草に分類される。一番牧草は、6月〜7月。その後、2ヵ月程度の期間を置いて、二番牧草を収穫する。

 いくら便利な時代になったといっても、この作業だけは完全に「天気次第」だ。刈り取りから梱包まで、晴天が4日間必要なので、毎日天気予報を注視しながら、それぞれの牧場が刈り取り時期を自己判断する。

 牧場の規模によって所有する土地の面積は大きく異なり、また家族経営と大手とでは労働力も違うので、一概には言えないのだが、通常、一度に刈り取る面積は、数ヘクタール程度のものであろう。1ヘクタールは100m×100mなので、どれくらいの広さなのかはおおよそイメージして頂けると思う。

 1番牧草の場合、良く生育している牧草ならば、1ヘクタールから約30個前後のロール牧草(乾草)が出来上がる。1個の重量は150〜200キロといったところか。この重量になると、さすがに人力では如何ともし難いので、全て機械での作業になる。

 初日に刈り取った牧草は、2日目、3日目とひたすら反転、集草を繰り返し、4日目にロール状に梱包する。ただし、それも晴天が続くことが前提である。中途で天候が崩れ、晴れる予報が雨に変わったりする場合もたまに起こる。そうなると、雨に濡らさないようにするために、乾燥不十分なまま一度ロールにして、圃場に置いたりする。雨量が多くなりそうなときには、そのロールを固めて小山にして、ブルーシートをかけて保護したりもする。なるべくそんな手間をかけたくないので、とにかく天気予報をじっくり見ながら、適期に刈り取り〜梱包まで一気に片付けたい、というのが生産者共通の希望だ。

 幸い、今年の6月は、かつてないくらいに雨が少なく、我が家の牧草もとうとう一度も雨に濡らさずに収穫できた。着手したのが6月22日。終了したのは昨日、6月30日である。実質的に10日間で終えることができた。異例の早さと言って差し支えない。

 我が家の場合、採草地は南西に1キロほど離れた場所にある。面積は約3.5ヘクタール。それを3回に分けて刈り取り、順に片付けて行った。

 昨年までと決定的に異なるのは、今年から作業主体が牧場の“店子”である藤原照浩さんに移行している点だ。一応「共同作業」の形にはなっているが、作業の主体は藤原さんであった。なので、体力的にも非常に楽をさせてもらった。

 ただし、収穫量は少なかった、鹿による食害が一因であるのと、やはり雨量が例年より少なかったせいで、生育があまり良くなかったことにも原因がありそうだ。当初見込みの3分の2程度の収穫量にとどまった。とはいえ、少ないながらも、天候に恵まれて、まずまずの乾草を収穫することができた。

 この後、二番牧草までは、約2か月の期間が空く。二番牧草は一番の半分の収穫量になるので、今年の冬は、牧草のストックが不足するかもしれない。

生産地便り

集草作業中の藤原照浩さん

 さて、藤原さんの「その後」だが、牧場経営は順調に推移している(と思われる)。現在、藤原さんが管理しているのは、当歳のいる繁殖牝馬(親仔)が2頭(つまり4頭)、空胎馬が3頭、そして期間限定で預かっている「上がり馬(現役を引退したばかりの競馬上がりの若馬をこう言う)」が3頭の計10頭である。

 詳しくはいずれ機会を見てインタビューを試みるつもりだが、牧場のあれこれについては彼が定期的に発信している動画サイト(Horsy Café)にて視聴して頂くのが近道だ。現在のチャンネル登録者は685人という。当面の目標は1000人の大台に到達させることだそうな。新規にサラブレッド生産を始めたいという夢をお持ちの方ならばきっと参考になるはずだ。

生産地便り

ロールは機械で取り扱う

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田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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