【四位洋文調教師(5)】あとがきに代えて──四位洋文調教師からのメッセージ

2021年07月12日(月) 18:02

四位厩舎特集

▲最後は四位調教師からのメッセージ&写真企画 (撮影:山中博喜)

四位調教師の「馬作り」「人作り」「厩舎作り」に迫ってきた“四位厩舎特集”も、今回が最終回。最後は四位調教師からのメッセージで締めくくりたいと思います。

競馬を応援してくださるファンの皆様へ、競馬を支えてくださる馬主や関係者の皆様へ、そして大切な厩舎メンバーへ――四位調教師が届けたい想いとは。

※取材・構成=不破由妃子(四位調教師)、大恵陽子

「これからも馬への愛情を第一に」

 今回、思いがけずこういった取材をしてもらう機会をいただき、非常にありがたかったです。なぜなら、技術調教師としてスタートした矢先にコロナ禍となり、トレセンの入場規制、取材規制も厳しく、自分の構想や信念をアピールする場がことごとくなくなってしまったから。

 本来ならば、お会いできるはずだった馬主さんともいまだに会えず、電話だけのやり取りとなっている方もいます。それは僕だけではなく、同時期に開業した調教師はみんな一緒で、昨年までの新規開業に比べ、厳しい船出となりました。

 そんななか、本当に一生懸命に働いてくれているスタッフたちには、感謝しかありません。今回のアンケートにも丁寧に答えてくれて、彼らの言葉ひとつひとつを噛みしめるように読みました。

 最初にも言いましたが、馬作りは小さなことの積み重ね。ひとりひとりが意識を高く持ち、馬と真っすぐに向き合って、近い将来、馬主さんから「ぜひあなたに担当してほしい」と指名されるようなホースマンになってほしいと思っています。

 もちろん、それは僕も一緒です。「四位厩舎に預けたい」。そう言っていただけることが最大の目標であり、一歩ずつでも目標に近づけるよう、日々馬作りに取り組んでいます。

「馬は言葉を話せない。だから、人間ができることは、すべてやってあげなければいけない」とは藤沢和雄先生の言葉であり、手を掛けてあげることによって、少しでも故障する確率が減るのであれば、それは迷わずやるべきだという教えです。この言葉には、非常に感銘を受けました。

 たとえば、毎日5分でもいいから脚を冷やすことで故障する確率が減るのであれば、それはやるべきこと。とはいえ、人間は楽をしたい生き物ですから、熱を持っているわけでもなく、何の異常もなければ冷やさない。でも、たった5分で防げる故障があるのなら、やってあげようよと僕は思うし、スタッフにもそう伝えています。

 まだ出航したばかりの四位厩舎ではありますが、今回の短期連載を通して、我々が何を考え、日々どういうことに取り組んでいるか、ファンの方々にも興味を持ってもらえたらうれしいです。

 これからも馬への愛情を第一に、関わる人みんなが幸せになれる馬作り、人作り、厩舎作りに取り組んでいく所存です。

JRA調教師・四位洋文

最後は貴重な写真の数々をお楽しみください!

四位厩舎特集

▲【馬着】血行を良くして体を温められる充電式の馬着で、馬術界で使われているものを海外から取り寄せたとか。その額、なんと1着200万円! 四位調教師いわく、「追い切り後、午後に獣医さんが来るまでの間にやれることがあればやったほうがいいと思ってね」。 (提供:四位洋文厩舎)

四位厩舎特集

▲【馬房内にはいつでも食べられる干し草】「馬は胃の上半分が粘膜で保護されていなくて、胃酸で痛みやすいので、常に何かを食べているほうがいい動物」と四位調教師。そのため、常に干し草を食べられるようになっている。 (提供:四位洋文厩舎)

四位厩舎特集

▲【鉱塩】塩分補給のため。「ちゃんと舐めなきゃダメだよー」と話しかける四位調教師。 (提供:四位洋文厩舎)

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▲【天井の保護パッド】馬が頭をぶつけないよう、天井部分にクッションがつけられている。 (提供:四位洋文厩舎)

四位厩舎特集

▲【遮光シート】馬房の裏戸に遮光シートを張ることで、馬房内が明るくなりすぎないようにしている。「馬に直接聞けないから、どのくらい効果があるかはわかりませんが、ずっと明るいと馬も安らげないんじゃないかと思ってね。少しでも良さそうなことは取り入れようと思っています」と四位調教師。 (撮影:桂伸也)

四位厩舎特集

▲【馬用筋膜リリース機器“メディセル”】慢性疲労など、さまざまな不調の原因となる筋膜のよじれを正常に戻すことで、血流の改善や病気の予防につながるとか。「できることはなんでもやってあげたい」という四位調教師が、馬のために新しく導入した機器だ。 (提供:四位洋文厩舎)

四位厩舎特集

▲【キセノン光線装置】人間の整形外科や麻酔科などでも使われている機械で、痛みや血流の改善などに用いられている。美容皮膚科ではシミ・そばかすが気になる人に使う機械だけあって、「膝を痛めていたスタッフが使ったら、膝小僧が白く綺麗になっていました(笑)」とか。 (提供:四位洋文厩舎)

四位厩舎特集

▲【大仲に置かれた木馬】ジョッキーが騎乗フォームの確認などで使用する木馬が、厩舎の大仲に! 四位調教師から直々に指導を受けられるとあって、厩舎スタッフも「すごいことですよね」と目を輝かせる。 (提供:四位洋文厩舎)

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▲【鞍置きスタンド】ここで調教ゼッケンやスポンジなどをセッティングして、スタンドごと馬房前まで持って行き、馬装している。 (提供:四位洋文厩舎)

四位厩舎特集

▲馬房で馬と触れ合う四位調教師の様子 (提供:四位洋文厩舎)

四位厩舎特集

▲「馬作りは小さなことの積み重ね」と語る。 (撮影:桂伸也)

四位厩舎特集

▲コロナ禍での開業、スタッフには「感謝しかありません」 (撮影:桂伸也)

四位厩舎特集

▲「馬は言葉を話せない。だから、人間ができることは、すべてやってあげなければいけない」藤沢和雄調教師の言葉に感銘を受け、スタッフにも伝えている。 (撮影:桂伸也)

四位厩舎特集

▲目標に向かってスタッフと日々馬作りに取り組む (撮影:桂伸也)

四位厩舎特集

▲“四位厩舎に預けたい”そう言っていただけるように… (撮影:桂伸也)

四位厩舎特集

▲「これからも馬への愛情を第一に、関わる人みんなが幸せになれる馬作り、人作り、厩舎作りに取り組んでいく所存です。」 (撮影:桂伸也)

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四位洋文

1972年11月30日、鹿児島県生まれ。JRA栗東所属の調教師。騎手時代は2007年の日本ダービーでウオッカに騎乗し、64年ぶりの牝馬ダービー制覇を達成。翌年の日本ダービーではディープスカイに騎乗し、史上2人目の連覇を成し遂げる。JRA通算1586勝。2019年12月新規調教師免許試験に合格。2020年2月で騎手を引退し、1年間の技術調教師を経て2021年3月に新規厩舎を開業。

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