【中京記念】「いいポジションを取った上で折り合える」馬のことを理解していた川田将雅騎手

2021年07月20日(火) 18:00

哲三の眼

中京記念は1番人気だったアンドラステが初重賞制覇 (C)netkeiba.com

今年の中京記念を制したのは1番人気のアンドラステ! この勝利で初の重賞制覇となりました。今回は「さすがの修正能力」と哲三氏も感心した川田将雅騎手の騎乗について解説しつつ、函館記念・函館2歳Sについても振り返ります。

(構成=赤見千尋)

“見えない技術、見せない技術”も大事

 中京記念は1番人気だったアンドラステが初重賞制覇。鞍上の川田(将雅)君は久しぶりの騎乗でしたが、さすがの修正能力だなと感心しました。現時点でのその馬に、していいこと、ダメなことをしっかりわかっているなと。前走は向正面で掛かっていたので、おそらくそこを修正すれば勝てるという計算だったのではないでしょうか。

 スタートしてから折り合い重視の騎乗だったと思いますが、ポジションはしっかり取っているんですよね。前走とはコースも枠順もメンバーも違いますから単純な比較は出来ませんが、いいポジションを取った上で掛かっていないという状況を作りました。

 4コーナーで開いた内を突いて先頭に立ったところのインパクトが強いかもしれませんが、道中の運びが勝利に繋がっていると思います。例えばダイナミックに追っているフォームというのはわかりやすいですし、若手にとっても真似しやすい、取り入れやすい技術です。でもあからさまに見える部分だけではなくて、見えない技術、見せない技術という部分もとても大事。馬の気持ちや体の動きを理解しているからこそ、前走掛かった馬に対して、いいポジションを取った上で折り合えるという状況が作れるのではないでしょうか。

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「道中の運びが勝利に繋がっている」と哲三氏 (C)netkeiba.com

 前走で騎乗した岩田望来君もいいレースをしていましたが、これまでたくさんの結果を出しているトップジョッキーと、これから追い求めて行こうという若手では違うのは当たり前。僕自身も現役時代は自分が乗って上手くいかない馬で、(武)豊さんがスムーズに乗っていたりすることもありました。何が違うのか、どこが違うのか、そこを研究して追い求めて来ました。今回の川田君の騎乗はまったく折り合いに苦労しているようには見えないレースでしたから、そこの違いを吸収出来るいいお手本になったと思います。

 2着だったカテドラルの(福永)祐一君もさすがの騎乗でしたね。6枠8番というある程度外目の枠から内を取って、自分の馬との兼ね合いをしっかり計算出来ているなと感じました。小倉の芝1800mでのセオリーというのがいくつかあるわけですが、その中の一つが1コーナーのところでしっかり内を取る、取れなかったら内にしっかりした壁になってくれるような馬を探してそれに付けて行くという、いろいろある必要なパターンの一つに持って行ったという印象です。もちろん馬の特性や馬場状態によっても有効なパターンは変わってくるわけですが、今回の上位に来た3人は小回り競馬の特徴を活かしていて、やはりトップジョッキーはさすがだなと思いました。

 函館記念は2番人気だったトーセンスーリヤと横山和生君が勝利。抜群のポジションで道中の手ごたえも良く、マクって来られる馬もいなくて、ずっと勝ちを意識出来るレースをしていました。自信満々のレースで強い競馬でしたから、こういう勝ち方はより嬉しいのではないかと想像しています。

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函館記念でトーセンスーリヤと勝利を飾った横山和生騎手 (C)netkeiba.com

 土曜日の函館2歳ステークスはナムラリコリスと泉谷楓真君が初重賞制覇を果たしました。2年目の泉谷君、2歳戦でしっかり展開を掴んで勝ち切っていましたから、いろいろなものを吸収出来ているなと。重賞を勝ったことで「もっと勝ちたい!」という気持ちも高まると思いますし、また次のステップへ向けて騎乗技術を磨いてくれることを期待しています。

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佐藤哲三

1970年9月17日生まれ。1989年に騎手デビューを果たし、以降はJRA・地方問わずに活躍。2014年に引退し、競馬解説者に転身。通算勝利数は954勝、うちGI勝利は11勝(ともに地方含む)。

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