【新潟2歳S】来春の夢が広がる若駒たちの戦い

2021年08月28日(土) 12:00

2012年以降の勝ち馬全て左回りコースで初勝利を挙げていた

 新馬戦がダービーの翌週からスタートするようになったのが2012年、以前より早まったことで少なからず、各地の2歳Sに影響を与えてきた。新潟2歳Sには、毎年、5ヶ所ないし6ヶ所の競馬場で勝ち名乗りを挙げた若駒たちが集結し、面白い戦いを見せている。その中ではっきり言えるのは、新潟で勝ってきた馬に加えて、こことコース形態の似た東京や中京の新馬圧勝組が、ここで勝ってきた点だ。新馬を勝ってから充電期間があり、成長を促して出走してくるので、見事なレースぶりを披露できているのだ。この傾向は、これからも続くとみたい。

 中京の新馬戦を勝ってひと息入れ、この新潟2歳Sを勝ったのがハープスター、ヴゼットジョリー、フロンティアの3頭。東京で第一週の新馬戦を勝ち、ケタ違いの末脚でここを駆け抜けたロードクエスト。新潟の新馬戦からのミュゼスルタン、ウーマンズハート。初戦は勝てず、2戦目の前走、新潟のマイルを勝ってここで重賞を勝ったザラストロ、ケイデンスコール、昨年のショックアクションの3頭と、2012年以降の全9頭が全て左回りコースで初勝利を挙げていたことは特筆されていいだろう。

 左回りのワンターン、外回りの直線が658.7米と長く、クラシック戦線を占う意味合いを強くしても当然で、「来春の夢が広がる」2歳Sと感じているものも多い。

 向正面が長く、ペースが速くなることはない。勝ち馬の全てが最速の上がりか、それに近い末脚で駆け抜けている。2012年にザラストロが大外強襲で1分33秒5のレコードを出したときは、後方から3番手にいて上がり3ハロン33秒4。これを14年にミュゼスルタンがコンマ1秒短縮したときには、中団の後ろの馬群の内でパワーを溜め、直線半ばで外へ出し、33秒4で上がり、これを上回る33秒0で追い込んだアヴニールマルシェをハナ差抑えていた。以後の勝ち馬をみると、馬場が良ければ、全てが33秒前後をマークしている。

 のちの桜花賞馬になったハープスターは、この新潟2歳Sでは、17頭ゴボウ抜きで32秒5と驚異の末脚で勝っていたが、残り300米を過ぎてもまだ後方のままで、一瞬スタンドがざわついたのを覚えている。父ディープ級の末脚で祖母ベガ超えとその勝利は讃えられ、スター誕生の瞬間だった。

 どんなタイプの馬が集まり、どんなレースを演じるか、はっきり見えてくる。比較的堅い重賞だが、大半がキャリア一戦のみ、可能性をどこに見出すかだろう。この7月、マイルのレコードを0秒1更新したプルパレイを道悪の新馬戦で2馬身半突き放したアライバル、中京、東京で早々と勝ったクラウンドマジック、セリフォス、クレイドル、そして新潟で4馬身差で圧勝したオタルエバーなどから検討を加えてみたい。

「来春の 夢を広げる この勝利」

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長岡一也

ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。

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