2021年09月11日(土) 12:00
夏の名残を感じながら迎える秋。紫苑SにセントウルS、そして京成杯AHと秋競馬開幕を告げる三重賞の中でも、一番古い京成杯AHに思いを強くする。もともと「オータムハンデキャップ」というレース名でスタートしたので、競馬に長くかかわってきた者には、その印象が強いだろう。レース名に季節を感じるのは、それだけ競馬に馴染んでいる証と言っていい。また、中央に開催が戻ってきて、GIシリーズが近づいてきたという実感も湧いてくる。現行の姿になったのが1984年の第29回からだが、秋の初戦の重賞という点は開設時からずっと続いてきた。
中山の開幕週は、前が止まらないとずっと言われていて、馬場が良ければ特に、スピードのある先行馬を探したものだが、近年になって馬場整備が進化し、必ずしもそうではなくなってきたように思う。前残りばかりではなく、外差しのシーンも顕著で、特に2014年から18年の5回は、上がり3ハロンの最速馬が3勝2着2回と、圧倒的だった。この2年は牝馬のトロワゼトワルが逃げ、先行で連勝しているが、どちらのパターンになるか、その行方をさぐるのがむずかしい。馬場が良ければ前が止まらないと見るか、いやそうでなく強烈な差し、追い込みがそれを上回るのか、その行方は「人のこころと秋の空」の如しだ。今年のサマーマイルチャンピオンは、4歳牝馬ロータスランドで決定しているので、この秋のGIマイルCSの予備戦という見方でみるだけでいいだろう。多くが休養をはさみ、態勢を整えてここにのぞんでいる。
この先をにらんでとなると、3歳馬による未知の可能性を感じていいだろう。この10年では、2頭が勝っている。9年前のレオアクティブは、出負けして後方からの競馬となり、内でじっと辛抱し、ラチ沿いを最速の上がりで差し切ってそれまでの日本レコードを0秒6更新する1分30秒7で勝っていた。朝日杯FSでは3着馬で当レースでは2番人気だった。もう1頭は5年前のロードクエスト、新潟2歳Sの4馬身差の圧勝やNHKマイルC2着などからマイル戦での評価は高く、1番人気。レースは最速の上がりで差し切っていた。
この流れを見ていると、今年は朝日杯FSをレコード勝ちしているグレナディアガーズが気になる。NHKマイルCは、正攻法で勝って3着と勝ち切れなかったが、パワーのある血統でどう攻めていくか注目したい。もう一頭の3歳馬バスラットレオンも、マイルのニュージーランドT1着の実績があり、休養でどこまで成長したか気になる。あと、活躍が目につく4歳牝馬勢から、折り合い重視の調整をしていたアカノニジュウイチの末脚、マルターズディオサの中山コース2戦2勝の実績がここでどう生きるかを見守りたい。これらが古牡馬相手に戦う姿から、この先を見通してみるのはどうだろうか。
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長岡一也
ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。
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