日本馬が出走予定のブリーダーズカップ展望その3

2021年10月20日(水) 12:00

多岐にわたるレースに日本馬が続々と参戦表明

 今月に入ってこのコラムでは、11月5日と6日の両日にわたってカリフォルニア州のデルマー競馬場で開催されるブリーダーズCから、日本調教馬が出走する可能性があるレースの展望をお届けしてきたが、ここへきて参戦を表明する馬がさらに増えている。

 具体的には、ジャスパーグレイト(牡2)がG1BCジュヴェナイル(d8.5F)に、ピンシャン(牡4)とジャスパープリンス(牡6)がG1BCダートマイル(d8F)に、それぞれ出走することになった。というわけでこのコラムも、もう1週だけ、ブリーダーズC展望をお届けさせていただきたい。

 開催初日(5日・金曜日)のメイン競走として行われるのが、ジャスパーグレイトが出走する2歳馬のG1BCジュヴェナイルだ。

 中心視されているのは、チャド・ブラウン厩舎のジャッククリストファー(牡2、父マニングス)である。

 クールモア、ピーター・ブラント氏といったビッグネームを含むパートナーシップによる所有馬で、さぞやお高いお買い物だったのではないかと思いきや、昨年10月にファシグティプトンがケンタッキーで開催したオクトーバー・イヤリングセールにて、13万5千ドル(当時のレートで約1428万円)という、お手頃価格で購買されてるのがジャッククリストファーだ。おじに、G1トリプルベンドH(AW7F)やG1ビングクロスビーS(d6F)を制したストリートボスがいるという血統背景を持つ。

 管理するブラウン師が「最初の追い切りの時からモノが違っていた」と絶賛する逸材は、8月28日にサラトガのメイドン(d6F)でデビュー。ここを8.3/4馬身差で圧勝して競馬ファンの注目を集めた同馬が、続いて出走したのが10月2日にベルモントパークで行われたG1シャンパンS(d8F)で、一気の距離延長が懸念された中、ここも2.1/4馬身差でしっかりと勝ち上がり、2戦目にしてG1制覇を成し遂げている。

 東海岸から乗り込んでくるジャッククリストファーを、西海岸で迎え撃つのが、ボブ・バファート厩舎のコーニッシュ(牡2、父クオリティロード)だ。

 G2ジョンメイビーS(芝9F)など芝の重賞を6勝したウェイステッドティアーズの6番仔となる同馬。1歳秋にキーンランド9月1歳市場に上場されるも主取りに終わった後、今年4月にフロリダで開催されたOBSスプリング2歳セールに登場。公開調教で1F=10秒フラットの好時計をマークした後、ピーター・フルーオー氏とケイン・ウェイナー氏の競馬組織スピードウェイ・ステーブルスに、セール最高値となる150万ドル(当時のレートで約1億6362万円)で購買されている。すなわち、マーケットにおける評価は、ジャッククリストファーの10倍以上だったのがコーニッシュである。

 同馬は、9月4日にデルマーで行われたメイドン(d5.5F)でデビュー。ここを4.1/4馬身差で制して緒戦勝ちを飾ると、次走は10月1日にサンタアニタで行われたG1アメリカンファラオS(d8.5F)に参戦。ここも3.1/4馬身差で快勝し、こちらもデビューから無敗の2連勝でG1制覇を果している。

 出自は異なれど、ここまでの戦績は非常に似ているジャッククリストファーとコーニッシュの対決は、今年のブリーダーズC開催初日における、最大の見どころと言われている。

 続いて、ピンシャンとジャスパープリンスが出走を予定する、開催2日目に組まれたG1BCダートマイル。

 ここは1本被りの人気になりそうなのが、トッド・プレッチャー厩舎のライフイズグッド(牡3、父イントゥミスチフ)だ。

 今年3月、サンタアニタで行われたG2サンフェリペS(d8.5F)を8馬身差で圧勝し、デビューから無敗の3連勝を飾った際には、ケンタッキーダービーの最有力候補と目されたのがライフイズグッドだ。

 その後、左後肢球節に剥離骨折を発症して戦線を離脱し、3冠を全休することになった同馬は、ボブ・バファート厩舎からトッド・プレッチャー厩舎に転厩。5カ月半ぶりの復帰戦となった、8月28日にサラトガで行われたG1アレンジャーキンスS(d7F)こそ、G1BCスプリント(d6F)の本命馬ジャッキーズウォリアー(牡3、父マクリーンズミュージック)の首差2着に敗れて連勝が止まったが、続いて出走した、9月25日にベルモントパークで行われたG2ケルソH(d8F)を5.1/2馬身差で快勝し、完全復活をアピールしている。

 6月にベルモントパークで行われたG1メトロポリタンH(d8F)勝ち馬で、その後、サラトガのG1ホイットニーS(d9F)3着、前走パークスのLRパークスダートマイル(d8F)2着の成績を残している、スティーヴ・アスムッセン厩舎のシルバーステイト(牡4、父ハードスパン)が、2番手評価となっている。

 今回展望した2競走は、11月7日夜にグリーンチャンネルで放送される「All In Line〜世界の競馬」の中でご紹介する予定なので、ぜひご覧いただきたい。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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