【エリザベス女王杯】「3コーナーからマクって…」勝利に繋がった幸英明騎手の好騎乗

2021年11月16日(火) 18:00

哲三の眼

初コンビのアカイイトとV! 波乱の決着となったエリザベス女王杯 (C)netkeiba.com

今年のエリザベス女王杯は10番人気のアカイイトが勝利、鞍上は初コンビとなった幸英明騎手でした。レースを振り返り「馬場傾向を掴んださすがの騎乗」と絶賛した哲三氏。今回レースが開催された阪神芝2200mコースでのポイントや勝ちパターンについて解説します。

(構成=赤見千尋)

阪神2200mの芝で気をつけるべきこと

 エリザベス女王杯は10番人気だったアカイイトが勝利。上位は人気薄の馬たちで波乱の決着となりましたね。幸(英明)君は今回がアカイイトと初コンビでしたが、馬場傾向を掴んださすがの騎乗ぶりでした。

 まず今年のエリザベス女王杯のコース、阪神2200mの芝のコンディションは、内目がタフな馬場状態で、先に行ってブレーキを掛けながら進む馬には不利になりやすいというイメージがありました。同じ阪神内回りでも、1400m、2000mとは違っていて、2200mはスピードを持続しながら少しずつペースアップしていくことが大事になります。その中で特に気をつけないといけないところは、3コーナーからマクられないこと。同じ日の第8レースで(池添)謙君が勝ったレースもそうでしたが、外からジワッと上がって行って、外目のラインでいかにスピードに乗せて行けるかがポイントになります。

 幸君は早めに動いて3コーナーからマクって行きました。ここが一番のファインプレーだったと思います。外からスムーズに上がっていけたことは、馬の完歩もしっかり取れて、スピードを維持しながらペースアップしていくことに繋がりました。マクられたらイヤな場面でマクって行って、外から蓋をしてという競馬で、もしもあそこで動くのを我慢していたら、また違った結果になったのではないでしょうか。

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外からスムーズに上がっていった幸騎手 (C)netkeiba.com

 とは言え、ただ外々を回しているわけではありません。スタートで遅れても変に内に入れず、外々にも出さず、枠なりの進路を取っていました。2コーナーを回ってから、前にいるかと思われた馬が内に入ってくれたことはラッキーで、そういうラッキーを見逃さず、早めに動いて行きました。3コーナーからはブレーキを掛けたりして脚を溜めたりするような作業をせずに、流して行くというのがこのコースの勝ちパターンの一つで、そのパターンにしっかりと乗せていましたね。

 1番人気だったレイパパレは内枠で、先に行ってブレーキを掛けながらレースをするタイプなので、最初に言ったように、馬場傾向的にも厳しかったのではないかと。そういうことをしっかり熟知しているのが(横山)典さんで、阪神2200mでは内に行ったり外に行ったり、いろいろなバリエーションで持ってきますよね。

 アカイイトのレースぶりで言うと、前走・前々走の典さんの騎乗も活きているのではないかと感じます。府中牝馬Sは7着でしたが、外からいい脚で伸びてきました。アカイイトはいつもいい脚を使いますが、これまで初動の出足が鈍いところがあったのですが、1800mでああいう脚を使った経験が今回のレースに枠順も含めてマッチしたのではないかと。今回は見事なレースでした。

 そして福島2歳ステークスでは松岡(正海)君が、長期の休み明け初勝利を挙げました。怪我から復帰して不安なところもあったかと思いますから、この1勝というのはとても感慨深い1勝なのではないでしょうか。

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長期休養からの復帰し初勝利を挙げた松岡正海騎手 (撮影:小金井邦祥)

 現役時代から松岡君のことは良きライバルとして信頼していて、僕がエスポワールシチーに乗れない時に騎乗してもらったりと、いろいろな想い出があります。松岡君の復帰は僕も嬉しいですし、またGIでの思い切りのいい騎乗が見たいです。

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佐藤哲三

1970年9月17日生まれ。1989年に騎手デビューを果たし、以降はJRA・地方問わずに活躍。2014年に引退し、競馬解説者に転身。通算勝利数は954勝、うちGI勝利は11勝(ともに地方含む)。

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