【高橋祥泰調教師】調教師生活40年、美浦の改革者が定年を前に... カラテと東京新聞杯連覇へ!

2022年01月30日(日) 18:01

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▲東京新聞杯で連覇を狙うカラテ(撮影:下野雄規)

1983年に31歳の若さで調教師となり、今年2月で定年を迎える高橋祥泰調教師。NHKマイルCのタイキフォーチュンでGIを制覇し、ダートの短距離で無類の強さを見せ、種牡馬としても活躍したサウスヴィグラス、近年では桜花賞でデアリングタクトの3着に入るなど牝馬クラシック戦線を賑わせたスマイルカナらの活躍馬を送り出してきた。

定年を前にこれまでの調教師人生の振り返りと、東京新聞杯2連覇を目指す管理馬カラテの話題を中心にインタビューを行った。

(取材・文=佐々木祥恵)

「午後運動はやめよう」当時の美浦を改革

――定年が近づいてきましたけど、調教師生活は短く感じましたか?

高橋祥泰調教師(以下、高橋師) 今年で40年目になりますが、その前の助手時代もありますし、長いですよ(笑)

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▲2月で定年を迎える高橋祥泰調教師(C)netkeiba.com

――調教師になられたあたりから、調教スタイルなど美浦もだいぶ変化してきた印象があります。

高橋 そうですね。坂路やウッドチップコースができて、美浦の施設も変わってきましたから。ダートコースしかなかった頃は、追い切り前に雨が降るとどうやって調教しようかなと頭を悩ませていたものです。

――施設以外に、先生ご自身で変えたことはありますか?

高橋 確か午後運動をしなくなったのは、僕が最初に近いと思います。元々午後運動はどうなんだろうと疑問を持っていましたし、アメリカなど海外を見てきて、調教師になったら午後運動はやめようと考えていました。

――今は朝調教をして午後は主に馬の手入れやケアの時間に充てられていますが、以前は午後も運動していたのですね。

高橋 当時は午後運動はやるものでしたから。

――午後は主に引き運動ですか?

高橋 乗り運動もしていましたよ。

――周りがあまり取り入れていないことを実行するのは勇気がいったのではないでしょうか?

高橋 朝集中的に長くやって午後は手入れだけという形にしたのですが、やはり特異的に見られました。若かったからできたのでしょうね。

――これまでの管理馬ではNHKマイルCを勝ったタイキフォーチュンやダートの短距離で活躍したサウスヴィグラスなどがいます。特にサウスヴィグラスは種牡馬になってからも、大活躍でした。外国産馬でしたが、現役時代はどんな馬だったのでしょうか?

高橋 飛節の折が深くて、来た当初は走らないのではないかという評価でした。飛節がグニャグニャするので、一般的にはそういう馬は走らないんですよね。写真を見ての購入だったのですけど、もし実馬を見ていたら、馬主さんに購入は勧めなかったかもしれないですね。そういう馬が走るのですから、競馬はわからないですよね。

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▲種牡馬として大成功を収めたサウスヴィグラスも、当初は「走らない」という評価だった(写真は2002年根岸S優勝時、撮影:下野雄規)

――その飛節をカバーするだけの何かがあったのでしょうか?

高橋 馬が特別なスイッチを持っていて、競馬のときにそのスイッチが入ったのかもしれません。そういう飛節をしていると普通はスピードが出ないはずですし、珍しい馬だったと思います。

1戦ごとに強くなってきたカラテ、菅原騎手への期待

――先ほど競馬はわからないと仰っていましたが、東京新聞杯2連覇がかかるカラテもデビュー当時の成績を見るとそれに近いものを感じます。最初はどんな馬だったのですか?

高橋 成績が示している通りで、メリハリがなくてワンペースで、調教でもなかなかスピードが上がらないタイプでした。今になってみると、走れるだけの力がまだついていなかったのだろうなと思います。

――それが2勝クラスから東京新聞杯まで3連勝しましたね。

高橋 本当に申し分のないレースをしてくれましたし、馬が成長したとしか言いようがないですね。特別なことをしていたのかというとそんなことはないですし。

――いつくらいから変わってきましたか?

高橋 一昨年の1勝クラスの八丈島特別を勝った時はドロドロの不良馬場で、他の馬が動けないのにこの馬だけスイスイ走っているので、悪い馬場がうまいのだと認識しました。それと同時にクラスが上がったら時計勝負では厳しいのだろうなと思っていました。一昨年12月の2勝クラスのレースも朝から小雨がずっと降っていてかなり悪い馬場で勝ったので、馬場に助けられたという感想を持ちました。

 それが昨年1月の3勝クラスの若潮Sでは、まずまずの時計で勝ち方も良かったので、これなら東京新聞杯もいけるのではないかと思いました。ただこの時も中山の馬場は相当荒れていたので、馬場状態に助けられたところもあるかなとも感じていましたけどね。

――東京新聞杯後は、少し間隔をあけてGI安田記念に臨みました。

高橋 東京新聞杯後はダービー卿CTを目標にしていたのですけど、元々抱えてるツメの不安が出てしまいました。それでダービー卿は回避してツメのケアをしながら調整を続け、オーナーの希望もあって安田記念に出走させることになりました。(ツメのケアをしながらだったので)結果的にまだ本調子ではなかったのでしょうね。

――その後、関屋記念で2着、京成杯オータムHで5着後、年明けの前走ニューイヤーSでは見事な差し切り勝ちを収めました。

高橋 レース前に早仕掛けにならないようにそこだけ気をつけてと菅原騎手に伝えたんです。すると届かなそうな位置にいたので、余計なこと言っちゃったなと思って見ていたのですけど、終い伸びましたね。

 彼も自信を持って乗っているのか、この馬の仕掛けどころも掴んでいるんでしょうね。彼を見ていると慌てないですし、いつも冷静に乗っているという印象です。泡食わないというのは、長所だと思います。

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▲今年初戦となったニューイヤーSでは、1番人気に応え快勝(撮影:小金井邦祥)

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▲菅原騎手とのコンビはまさに阿吽の呼吸(撮影:下野雄規)

――レースの後はツメの状態を含めて調子は良さそうですか?

高橋 はい。この馬はおかしなツメの伸び方をしていますので、ツメがあまり伸びない冬場の方が状態が良いようです。今回はツメにも変化がほとんどないので、東京新聞杯に安心して向かっていけそうです。

――ところでカラテのオーナーは、ユニークな馬名をつけることで知られる小田切有一さんのご子息の光さんですが、光さんも個性的な馬名をつけていらっしゃいます。

高橋 そうですね。でも僕は有一さんにも光さんにも、馬名の由来を1度も聞いたことはないです(笑)。いろいろな馬名をつける方だとわかっていますからね。

――調子も変わらず来ているということで、当然2連覇の期待も持っていますよね?

高橋 僕ももう最後なので、何とかそうなってほしいですね。

――では最後に今後の美浦トレセンに期待することをお願いします。

高橋 40年前に僕が午後運動を止めたわけですが、これからの方々も今の施設や交通状況など様々な要素を考慮しながら、何か新しいことを考え出していってほしいですね。

(文中敬称略)

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