2022年04月18日(月) 18:00
・4/17 皐月賞(GI・中山・芝2000m)
好位を追走したジオグリフがイクイノックスをゴール前で交わし、クラシックの一冠目を制しました。1着馬の父ドレフォン、2着馬の父キタサンブラックはいずれも新種牡馬です。皐月賞終了時点における新種牡馬のJRA勝利数を直近5年間で比較してみると、以下のようになります。40勝以上したものが対象で、カッコ内の数字は、左が芝、右がダートの勝利数です。
1位 キズナ 65勝(43勝・22勝) 2位 ロードカナロア 62勝(52勝・10勝) 3位 モーリス 57勝(43勝・14勝) 〃 ドゥラメンテ 57勝(41勝・16勝) 〃 ドレフォン 57勝(15勝・42勝) 6位 エピファネイア 45勝(39勝・6勝) 7位 ヘニーヒューズ 40勝(5勝・35勝) ※ヘニーヒューズは輸入後の国内産初年度を対象
ドレフォンは57勝なので、昨年のモーリス、ドゥラメンテと同数。優秀な成績といえるでしょう。芝とダートの内訳を見ると、ドレフォンはダートの勝利数(42勝)が芝(15勝)の3倍近くあるので、基本的にはダート向きの種牡馬であることが分かります。
キズナ、ロードカナロア、モーリス、ドゥラメンテ、エピファネイアは、いずれも芝の成績がダートを圧倒しており、ドレフォンとはタイプが異なります。ダートの勝ち星が芝を上回っているのはヘニーヒューズと同じですが、同馬ほどダートに偏っているわけではないので、“配合次第で芝の大物も出せるパワー型の種牡馬”という評価が適切でしょう。クロフネに近いポジションです。
皐月賞にはもう一頭デシエルトというドレフォン産駒が出走していましたが、ジオグリフともども「ドレフォン×キングカメハメハ×サンデーサイレンス」という配合で、血統構成の8分の7が同一です。
両馬とも母方の奥にノーザンテーストとガーサントが入っており、厳密にいえば共通する部分はもっと多いのですが、とりあえず「ドレフォン×キンカメ×サンデー」が芝の大物を出す方程式と考えていいでしょう。母アロマティコはクイーンS(GIII)2着、エリザベス女王杯(GI)3着などの成績がある活躍馬です。
・4/16 アーリントンC(GIII・阪神・芝1600m)
中団を追走したダノンスコーピオンが直線で馬群を割って伸び、タイセイディバインに競り勝って1番人気に応えました。
母レキシールーはカナダ産馬で、現役時代に同国の三冠レースのひとつクイーンズプレートを牡馬相手に勝ったほか、ハリウッドダービー(米G1・芝9ハロン)ではカリフォルニアクロームの2着と健闘。同国の年度代表馬に選出されました。
ケイアイファームが100万ドルで購買し、わが国における初年度の種付けから見事重賞勝ち馬を出しました。
同ファームはかつて、カナダ最優秀古牝馬に3回選ばれた名牝ワンフォーローズを購買し、その子孫からレディアルバローザ、キャトルフィーユ、エンジェルフェイスといった重賞勝ち馬を生産した実績があります。レキシールーはワンフォーローズの再来となるかもしれません。
ちなみに、同ファームはもう1頭、キャッチアグリムスというカナダ年度代表馬を購買していますが、まだ産駒はデビューしていません。こちらも楽しみです。
母方にサドラーズウェルズを持つロードカナロア産駒は、サートゥルナーリア、パンサラッサ、キングオブコージ、キングエルメスといった活躍馬が出ています。
父ロードカナロアは基本的にはスピード型の種牡馬ですが、この配合は中距離をこなすタイプが目に付き、産駒の平均勝ち距離は1672mと、同産駒全体の1484mを大きく上回ります。ダノンスコーピオンは現状マイル戦がベストですが、2戦目に芝1800mの萩S(L)を勝っており、ゆくゆくはもう少し長い距離で活躍する可能性もあるでしょう。
・4/23 福島牝馬S(GIII・福島・芝1800m)
福島芝1800mに強い種牡馬はディープインパクト。2012年以降、当コースで産駒が20走以上した57頭の種牡馬のなかで、連対率26.5%はナンバーワン。
当レースにはサンクテュエールとサトノダムゼルの2頭が登録しています。
前者は昨年の当レースで10番人気ながら3着。その後の4戦は馬券内に入っていませんが、前走の京都牝馬S(GIII)は5着と悪くない競馬だったので、そろそろ……という感触もあります。
後者も新潟記念(GIII)5着の実績がある実力馬ですから侮れません。
皐月賞の回顧で新種牡馬の成績について触れましたが、2着イクイノックスの父キタサンブラックも悪くない成績です。勝利数は28勝(芝22勝・ダート6勝)と少ないのですが、これは出走数が少ないことが原因で、ドレフォンの447走に対してわずか211走と半分以下です。
血統登録頭数がドレフォンの127頭に対し、キタサンブラックは83頭しかいないので、そもそも互角の条件とはいえません。晩成タイプであることも理由のひとつでしょう。
期待の良血馬がなかなか仕上がらずにデビューが遅れた、といったケースも目につきます。
それでいて産駒のアベレージは高く、連対率21.8%、1走あたりの賞金額185万円は、ドレフォンの18.3%、166万円をそれぞれ上回ります。1走あたり185万円という数字は、ロードカナロア(212万円)には及ばないものの、モーリス(157万円)、ドゥラメンテ(152万円)、エピファネイア(151万円)、キズナ(149万円)、ヘニーヒューズ(116万円)を上回っています。おそらく晩成型だろうと思われるので、これから成績を伸ばしてくるはずです。
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栗山求
netkeibaでもおなじみの血統評論家・栗山求氏が血統の面白さを初心者にもわかりやすくレクチャー。前週の振り返りや、週末行われるレースの血統的推し馬、豆知識などを通して解説していきます。 関連サイト:栗山求の血統BLOG
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