【ヴィクトリアマイル】松山弘平騎手「デアリングタクトが原動力に」 ともに苦難を乗り越えて挑むGI

2022年05月12日(木) 18:02

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▲385日ぶりのレースに挑むデアリングタクトに騎乗する松山弘平騎手(撮影:大恵陽子)

3月にレース中の落馬で外傷性脳損傷など大怪我を負った松山弘平騎手。ファンや関係者から多くの心配する声が上がりましたが、約1カ月半で復帰すると、復帰初戦を勝利で飾りました。引き上げてきた時には思わず涙を拭った松山騎手。キャリアの中で初めてという大怪我からの復帰の支えとなった一つは、無敗の牝馬三冠馬デアリングタクトの存在だったといいます。

デアリングタクトも繋靭帯炎から約1年ぶりの復帰戦をヴィクトリアマイルで迎えます。ともに苦難を乗り越えた1頭と1人によるGI出走を前に、松山騎手が胸中を明かします。

(取材・構成:大恵陽子)

自分一人の力でも、自分だけの命でもない

──復帰、そして勝利とおめでとうございます! 復帰初戦での勝利でしたね。

松山 ありがとうございます。馬や関係者の方々、応援してくださるみなさまのおかげでこうして復帰初戦から勝つことができました。

──内の馬が逃げるところを2番手外につけて完勝でした。

松山 強い馬もいたんですけど、乗り味がいい馬でした。初めてのダートだったので、とにかく砂を被らないように運ぼうと考えていて、枠も良くていい形でレースができたと思います。全てがいい方に向いてくれました。

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▲復帰初戦を勝利「全てがいい方に向いてくれました」(C)netkeiba.com

──勝って引き上げてくると、涙を拭うシーンも見られました。いろんな思いが込み上げてきたんじゃないかなと思います。

松山 これまでも落馬や骨折で休むことはあったんですけど、今回は今までの感覚とはちょっと違いました。今までこんなに考えることはなかったな、というくらい休養中は色んなことを考えました。

──その言葉だけで葛藤が伝わってきます。

松山 なかなか言葉で表すのは難しいのですが……、馬やみなさんに対して思うことがとてもたくさんありましたし、自分一人の命ではないと感じました。

──家族や応援してくださっている関係者の思いも背負った騎手人生なのかな、とも感じます。

松山 応援してくださるのもありがたいですし、こうして1ケ月半で復帰させてもらえたのは自分一人の力じゃなくて、みなさまのおかげです。大怪我をして大変な時に支えてくださった方にも、馬にも感謝しています。また、落馬したレースでは騎乗していた馬が亡くなってしまって……。助けてもらった命を決して無駄にしてはいけないとも思っています。

「ここまで大変だったと思う」デアリングタクト復帰の歩み

──復帰までの間、何が松山騎手の支えとなったのでしょうか?

松山 デアリングタクトが復帰することは一つの原動力でした。復帰はすごく嬉しくて、その時は背中に自分がいたいという気持ちが強かったです。

──デアリングタクトは史上初の無敗の牝馬三冠馬に輝きましたが、繋靭帯炎で約1年休養していました。ヴィクトリアマイルに向けた2週前と1週前の追い切りに騎乗されていかがでしたか?

松山 2週前より1週前の方が動きは軽く感じましたし、徐々に馬が感覚を取り戻しつつあると思います。

 デアリングタクトは桜花賞の時、すごく前向きさが強くて大変なくらいだったんですけど、年齢を重ねるにつれて成長して落ち着きが出ていました。今回は久しぶりで馬が少し気負っていて前向きさが出ていますが、ヴィクトリアマイルは1600mなので、それがいい方に出るんじゃないかなと思っています。ゲート練習もやって、スタートも速かったです。また新たなデアリングタクトの良さが出てくればいいかなと思いますし、なにより僕としては1年の休養を経たデアリングタクトにこうして乗れていること自体がすごいことで、嬉しいです。

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▲「動きは軽く感じました」というデアリングタクトの1週前の様子(撮影:井内利彰)

──繋靭帯炎ではかつてシーザリオが引退したこともあり、復帰までの道のりは平坦ではなかったと思います。ケアや調教をしてこられた牧場をはじめ関係者の方々は相当な苦労や努力があったでしょうね。

松山 そうなんです。ここまで決して楽なものじゃなくて、本当に大変なことだったと思うんですけど、馬自身も乗り越えて、デアリングタクトを支えてくださっているみなさんのおかげでここまできてくれて、すごく努力や思いを感じています。

 それを全て僕はしっかり受け止めていますので、まずは無事に走ってほしいですし、もちろん競馬に行くので結果を出したいという思いもあります。最後のバトンを託してもらえるので、その方たちの思いを背負ってなんとかここで見せたいなと思っています。

──任せられた者の責任、ですね。今年はテーオーケインズでサウジアラビアにも遠征しましたが、そういった濃い経験から感じたこともあったのではないでしょうか?

松山 昨年はデアリングタクトと香港、今年はサウジと、色んなことを経験させていただき、みなさまのおかげだと思っています。なかなか経験できることじゃないところで僕にチャンスをいただけてとてもありがたいからこそ、勝ちたいし、何とかみんなと喜びたいなという気持ちが常に強いです。

──ヴィクトリアマイルはデアリングタクトのファンも松山騎手のファンも、いろんな思いで見ていると思います。最後に伝えたいことなどありましたらお願いします。

松山 1年間、デアリングタクトを待っていた方もたくさんいると思いますし、こうして出走を予定できていることをすごく嬉しく思います。また応援していただけるようにデアリングタクトと心を通じ合わせてがんばっていきたいです。

(文中敬称略)

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