日本からチェーンオブラブが出走 BCフィリー&メアスプリントの展望

2022年10月19日(水) 12:00

強烈な末脚武器に好結果を期待

 アメリカ競馬の祭典といわれるブリーダーズの開催が、11月4日(金曜日)・5日(土曜日)に迫っている。

 昨年のブリーダーズCには7頭という大代表団を送り込んだ日本だが、今年の参戦はチーム・ノーズヒルズのチェーンオブラブ(牝5、父ハーツクライ)1頭のみになる模様だ。昨年は、日本から近く、芝の状況も日本に似ている西海岸のデルマーが舞台だったが、今年は広大なアメリカ大陸の東寄りに位置する、ケンタッキーのキーンランドが開催地となる。

 すなわち、ヨーロッパ勢が行きやすく、芝の状況もヨーロッパに近いというあたりが、日本の関係者が敬遠した背景にあるのかもしれない。いずれにしても、今年の日本は少数精鋭チームとなる。

 リステッドのエニフS(d1400m)勝ち馬で、今年序盤にはG3リヤドダートスプリント(d1200m)3着、G1ドバイゴールデンシャヒーン(d1200m)4着という実績を残しているチェーンオブラブが目指すのは、開催2日目のオープニングカードに組まれているG1BCフィリー&メアスプリント(d7F)である。

 目下、ブックメーカー各社が前売り1番人気に支持しているのが、チャド・ブラウン厩舎のグッドナイトオリーヴ(牝4、父ゴーストザッパー)だ。

 8月28日にサラトガで行われたG1バレリーナH(d7F)を、2.3/4馬身差で快勝しているのが同馬である。実は、そのバレリーナHが重賞初挑戦だった馬で、ここを勝ってデビュー2戦目から5連勝をマーク。使い込めなかった体質の弱さが、ここへきてようやく解消されてきた印象がある、上がり馬である。

 これに続く前売り2番人気が、スティーヴ・アスムッセン厩舎のエコーズールー(牝3、父ガンランナー)だ。

 2歳だった昨シーズンは4戦し、G1BCジュヴェナイルフィリーズ(d8.5F)を含めて、無敗の4連勝をマーク。エクリプス賞最優秀2歳牝馬の座に就いたのがエコーズールーだ。

 3歳となった今季、初戦となったG2フェアグラウンズオークス(d8.5F)を白星で通過した後、G1ケンタッキーオークス(d9F)で4着に敗れて連勝がストップ。その後はひと息入れ、復帰戦となったのが9月24日にチャーチルダウンズで行われたG3ドッグウッドS(d7F)で、ここを5.1/4馬身差で快勝している。すなわち、昨年の2歳牝馬チャンピオンが、8F以上の距離は不向きと見て、こちらの路線に矛先を向けてきたわけである。

 さらに、昨年に続くこのレース連覇を狙うのが、マイケル・マカシー厩舎のシーシー(牝6、父イルーシヴクオリティ)だ。

 3歳時から重賞戦線に顔を出し、昨年のこのレース以外にも、G1アップルブロッサムH(d8.5F)、G1ビホールダーマイル(d8F)を制した実績を持つのがシーシーである。今シーズンも、10月2日にサンタアニタで行われた前走のG3チリングワースS(d6.5F)を含めて、既に3重賞を制覇。6歳を迎えてまったく衰えがないところを示している。また、G3チリングワースSを勝ってBCフィリー&メアスプリントというのは、昨年と全く同じローテーションだ。

 昨季のG1マディソンS(d7F)勝ち馬で、9月25日にアケダクトで行われたG2ギャラントブルームS(d6.5F)を制し3度目の重賞制覇を果しての参戦となるキマリ(牝5、父マニングス)、10月8日にキーンランドで行われたG2サラブレッドクラブオヴアメリカS(d6F)を6.1/2馬身差で快勝し、重賞初制覇を果しての参戦となるスラムド(牝4、父マーキング)らも、争覇圏にいる馬たちである。

 チェーンオブラブの強みは、アウェイでの戦いで実績を残している点にあろう。この馬単独での遠征になることが判明した段階で、帯同馬がいないのは不利との見地から、遠征が見直された時期もあったようだが、この馬ならば大丈夫との判断があったと聞いている。さらにチェーンオブラブには、「強烈な末脚」という決め手が備わっているのも、大きな強みだ。

 万全の体調でレース当時を迎え、好結果を残すことを期待したい。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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