【勝負の分かれ目 中京記念】テン乗りの松山騎手が良血馬の力をフルに引き出し初重賞をプレゼント

2019年07月21日(日) 19:00

クリノガウディーとの叩き合いを制したグルーヴィット

「スタートがよく、いいポジションを取ることができました」

 3枠5番から出たグルーヴィット松山弘平はそう振り返った。促し気味に4、5番手で向正面を進む。

 1番人気のプリモシーンが外から並びかけてきて、直後には同じ3歳馬のクリノガウディーらがいる。

 グルーヴィットは、3コーナーに入ると、引っ張り切れないほどの手応えで上がっていくプリモシーンにやや置かれ気味になった。

 松山は手の動きが大きくなり、3、4コーナー中間地点で、もう右鞭を入れている。

 傍目には手応えが怪しく映ったのだが、鞍上の松山は冷静だった。

「3、4コーナーでちょっとズブさを見せたのですが、そのへんも頭に入っていました」

 実戦で手綱を取るのはこれが初めてだったが、調教では跨っており、この馬の特徴をとらえていた。

 自然と7、8番手まで後退したが、ステッキを入れながら4コーナーを回る。

「しっかり動かしながら直線に向くことができました」

 ラスト800mあたりから追いどおしだったのだが、グルーヴィットは松山の叱咤に応えて末脚を伸ばす。

 直線入口で、先頭との差は5馬身ほどか。すぐ前の内にいるプリモシーンが満を持してスパートをかける。

 ラスト200m地点で先頭との差は3馬身を切っていた。が、斜め前のプリモシーンと、外から迫るクリノガウディーの脚色もいい。

 プリモシーンが先頭に立った次の瞬間、グルーヴィットがかわして前に出た。外から馬体を並べてきたクリノガウディーのほうが勢いでは上回っているように見える。

ハンデは同じ52kgだ。

 自身がプリモシーンをかわしたのと同じように外から追い越されるかに見えたが、

 グルーヴィットは力強く二の脚を使い、ハナ差でクリノガウディーの猛追をしのぎ切った。

「長くいい脚を使ってくれました。馬が最後まで踏ん張って、頑張ってくれました。まだこれからの馬だと思います。先が楽しみです」と松山。

 前走のNHKマイルカップは着順こそ10着だったが、ゴール前で進路がなくなり、まともに追えなかった。にもかかわらず、差はコンマ5秒しかなかった。

 3代母にエアグルーヴがいる良血馬の力を、松山がフルに引き出して初めての重賞タイトルを勝ち取った。

(文:島田明宏)

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