【宝塚記念】サイレンススズカ唯一の勲章となったサマーグランプリ/名勝負列伝

2021年06月26日(土) 20:17

98年の宝塚記念で悲願のGIタイトルを奪取したサイレンススズカ

 13頭立てとなった今年の宝塚記念クロノジェネシスレイパパレというGI牝馬が上位人気を占めそうだが、1998年もエアグルーヴメジロドーベルというGIウイナーがタイトル奪取を狙い、牙を研いでいた。そのレースを鮮やかに逃げ切ったのがサイレンススズカだ。待望のGI初制覇となった当時のレースを振り返る。

■破竹の5連勝でGIタイトルを奪取

 フルゲート18頭に対し出走馬は13頭にとどまったものの、4連勝で前走・天皇賞(春)を制したメジロブライト武豊騎手が手綱をとる女傑エアグルーヴ、前年のグランプリホースシルクジャスティスなどが参戦。他にも前走の鳴尾記念エアグルーヴを降す大金星を挙げたサンライズフラッグ、2冠牝馬メジロドーベルなど個性豊かなメンバーが顔を揃えた。

 その中で、1番人気に推されたのがサイレンススズカ。4歳時は弥生賞でゲートに潜り外枠発走になるなど気性面の不安定さが目立ったが、大逃げ戦法に開眼したこの年は、バレンタインSから金鯱賞まで破竹の4連勝。特に金鯱賞では前半1000m58.1秒のハイペースで飛ばすと、直線でも余裕の手応えで一人旅。2着ミッドナイトベットに1.8秒差をつけるという、ファンの度肝を抜くパフォーマンスをみせつけていた。

 宝塚記念でのサイレンススズカの単勝オッズは2.8倍。ベストよりもやや長い2200m、左回りに比べてパフォーマンスが落ちる右回り、そして乗り替わり(主戦の武豊騎手は先約のあったエアグルーヴに騎乗)などいくつかの不安要素を抱えており、新星誕生への期待と馬券的な不安が入り混じる、微妙なファン心理を表した数字だったと言えよう。

 レースは2番人気のメジロブライトがゲート内で暴れて外枠発走に。ざわつく場内の雰囲気に動じることなくサイレンススズカは13番枠から好スタートを切る。サッと先手を奪うと、前半1000m通過は58.6秒。メジロドーベルが2番手で続き、エアグルーヴは中団から、シルクジャスティスメジロブライトは後方に待機する。

 サイレンススズカは、いつものような飛ばす競馬ではなく、中盤でペースを落とし息を入れたため、追走する各馬も早めに進出を開始。4コーナーで後続との差が3馬身まで縮まると、直線では、外から早めに動いたステイゴールド、さらには馬場の真ん中からエアグルーヴが猛追する。

 しかし内からサイレンススズカがもう一度脚を使うと、馬体を合わせることなくリードを保ったままゴール。4度目の挑戦で、念願のGIタイトルを手中に収めることに成功した。
 
 前出の金鯱賞、そしてエルコンドルパサーグラスワンダーを子供扱いした毎日王冠など、サイレンススズカには印象的なレースが多いため、この宝塚記念をベストレースに挙げるファンは少ないかもしれない。

 しかし、改めて戦歴を振り返れば、個性派の人気者から現役最強の座を確かなものにした、非常に意味のある一戦だった。

 今年の宝塚記念では、強い逃げ馬が現役最強馬に挑戦する。23年前と同じように、最強位を継承する戦いになるのだろうか。

(※馬齢は旧表記を使用)

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