「府中競馬正門前駅」には何がある?

2020年11月29日(日) 21:09 0 2

 府中競馬正門前駅。東京競馬場があることからファンの間で“府中”と通称されており、競馬場に専用通路で直結している事実上東京競馬場専用駅といった印象である。

 ところがレースが行われるのは年におおよそ5カ月間。それも原則土日だけ。つまりほとんどの日は競馬場にやってくるお客はいない。そんなとき、この駅はいったいどうしているのか。

 府中競馬正門前駅は京王線東府中駅からちょろっとヒゲのように分かれてたったの0.9km、京王競馬場線終点の駅だ。待てど暮らせど電車は来ない。どうしたものかと思って案内板を見てみると、平日の日中、競馬場線の電車は1番のりばから出発することになっているという。そうか、お客がほとんどいないから、そういう扱いなんですね……。

 ホームはとにかく広い。10万の客がやってくる競馬場の最寄り駅なのだから当たり前だが広い。メイン終了後は一気に大勢の客が押し寄せる。10両編成の臨時準特急新宿行も運転される(競馬開催日と味スタでのイベントが重なると、車内はイベント客でごった返す)。だから充分な広さを確保しておかねばならぬ。

 東京競馬場の開場は1933年。府中本町駅が1928年の開業だから、当時からの最寄駅は、実は府中本町駅である。その当時は私鉄の南武鉄道の駅だった(1944年に国有化されて国鉄の駅になっている)。

 京王線は府中駅があるだけで少し競馬場からは距離があったから開業時の競馬場客の輸送はほとんど南武鉄道の独占だったのだろう。

 そこに最初に割って入ったのは国鉄。1934年に中央線から南に分岐して多摩川の河川敷まで延び、川砂利輸送を行っていた下河原線という支線に東京競馬場前という駅を設けたのだ。この駅は戦時中に一時休止するが復活、1973年に下河原線が廃止されるまで営業を続けた(廃止と同時に武蔵野線が開通している)。

 東京競馬場の輸送は当初、国鉄の東京競馬場前駅と南武鉄道の府中本町駅が中心だった。京王が参入したのは1935年で、現在の東府中駅の場所に臨時競馬場前駅が開業。それでも競馬場からの距離においては国鉄や南武鉄道と比べて分が悪く、戦後の1955年に至ってようやく競馬場線と府中競馬正門前駅を開業した。それから1973年の東京競馬場前駅廃止までは、3駅(西武多摩川線是政駅を含めれば4駅)が競馬場最寄り駅としてしのぎを削っていたのだ。

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