2014年05月30日(金) 18:00
◆新しい高額配当馬券の導入を深読みすると…
6月1日から南関東のネット投票SPAT4で「トリプル馬単」が発売されることは、当サイトのニュースでも既報のとおり。
5月28日には記者発表が行われたのだが、その場所が、たとえば大井競馬場などではなく、赤坂で行われるのには何か特別なことがあるのかと思い、わざわざ足を運んでみた。
開始5分ほど前に会場に到着すると、来ているのは見知らぬ顔がほとんど。ムービーのカメラが後方にずらりと並んでいたのも、地方競馬の記者発表ではめずらしい。顔見知りの競馬関係の記者も数名しかいないという、やはり競馬場での記者発表とは違う雰囲気だった。
キンタロー。さんと波田陽区さんが登場というのは事前に知らされていて、「50円が3億円になるんですか!ああ、びっくり」みたいなトークもまあ想定の範囲。やがて後半の囲み取材のところで合点がいった。
なるほど来ていた記者やカメラのほとんどが芸能関係の取材で、芸能レポーターらしき方が代表してのインタビューとなった。
出演したキンタロー。さんと波田陽区さん
たしかに「50円が3億円」というのはインパクトがある。スタート当初売上げが思ったほどではなかったサッカーくじのtotoも、あとから導入されたtoto BIGの6億円で売上げを伸ばした。なるほど、競馬で3億円というインパクトを、一般的な芸能関連のニュースとして取り上げてもらいたいという狙いでの記者会見だったのだ。たしかにそれなら芸人さんに登場願うのも必然性がある。
それがいいか悪いかという話ではなく、こういうやり方もあるのかと思ってちょっと感心した。企画した広告代理店にしてみれば、ごくごく普通の手段なのだとは思うが。
前置きが長くなったが、ここからが本題。
以下は深読みになるが、このタイミングでの新種高額配当馬券の導入は、南関東の自前のネット投票システムであるSPAT4での売上げにテコ入れを図りたかったのではないだろうか。
昨年度、地方競馬の馬券の売上げが好調だったことは、少し前にこのコラムでも触れた。その要因としては、JRA-IPATでの地方競馬の発売「地方競馬IPAT」の影響が大きいと考えられる。ところが、実は前年度との比率では、他主催者に比べて南関東の伸びはあまり大きくはない。その要因としては、もともと南関東は発売額自体が大きいことや、場間場外の発売がすでに全国に広がっていたことなどが考えられる。売得額が増えても、それが地方競馬IPATでのものであれば手数料を引かれることになる。できれば自前のシステムであるSPAT4で投票してほしいというのが本音だろう。
それゆえの、SPAT4でしか買えない、新種高額配当馬券の導入だったのではないだろうか。
地方競馬の高額配当馬券は、すでにオッズパークが5重勝、7重勝(いずれも単勝)を発売しているが、南関東以外の地方競馬では投票される票数が少なく、成功しているとは言い難い。
さて、南関東の発売規模なら億単位の高額配当がバシバシ出るのかどうか。
芸能ニュースとして取り上げてもらえるような記者会見はしたが、SPAT4限定での発売では、競馬を知らない一般の人々にとってはちょっとハードルが高くはないか。とはいえ自前のSPAT4で馬券の売上げはアップさせたい。そのあたりがもしかしてジレンマになるかもしれない。
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斎藤修
1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。