2014年06月06日(金) 18:00
◆『他地区所属騎手が騎乗可能な重賞競走』のルール
6月4日に行われた東京ダービーは、3番手を追走したハッピースプリントが、直線でも楽な手ごたえのまま後続を突き放して圧勝。羽田盃に続いて危なげのない勝ち方で南関東二冠制覇となった。
全日本2歳優駿を制したあと、デビューした北海道から大井に移籍したハッピースプリントは、地方のダートでは無敗であることなど記録面でも注目度は高かったが、もっとも関心を集めたのは、大井移籍後の主戦が、金沢所属の吉原寛人騎手ということだろう。
南関東以外の所属騎手による東京ダービー制覇は60回の歴史で初めてのこと。吉原騎手にとっては、地方競馬でも最高の舞台で念願の“ダービージョッキー”となった。表彰式でその感想を問われると、涙で声を詰まらせ、自然に涙が出てきたことに自分でも驚いた様子だった。
ウイニングランでファンの声援にこたえる吉原騎手。ゴーグルで隠された目には涙が?
東京ダービーの数日前、大井競馬から『二冠馬のジャパンダートダービー競走出走における騎手の取扱いについて』というリリースがあった。内容は……
羽田盃及び東京ダービーの両競走に同一騎手が騎乗し、勝利した馬(以下、「二冠馬」)がジャパンダートダービー(以下、「JDD」)に出走する際、当該二冠馬に騎乗していた騎手が他地区地方競馬所属騎手の場合、JDD競走に限り騎乗可能として取り扱います。
というもの。
あれ?と思ったのは、地方競馬の重賞では、所属に関係なく、地方の騎手ならどこでも騎乗できるようになっていたと思い込んでいたのだが、そうではなかった。
あらためて2007年度から施行された『地方競馬騎手の騎乗機会拡大について』の発表を見ると、ダートグレードでは馬の遠征をともなわない他地区騎手の騎乗を制限している主催者も少なくなく、特に南関東、兵庫では、地方交流重賞でも他地区騎手の騎乗が制限されていた。また岩手では、すべての重賞で騎手のみの他地区からの遠征は認められていなかった。
その後、こうした制限も一部緩和されたようで、『他地区所属騎手が騎乗可能な重賞競走』の現状を地方競馬全国協会に問合せたところ、以下のとおり。
・重賞に限らずすべての競走:高知 ・すべての重賞競走:北海道・岩手・金沢・笠松・愛知 ・交流重賞以外の重賞競走:南関東・兵庫・佐賀
となっていた。この場合の「交流重賞」は中央との交流重賞(ダートグレード)のこと。また金沢では「通算30勝以上の騎手に限る」とされている。
かつてM.デムーロ騎手がネオユニヴァースで皐月賞、日本ダービーの二冠を制したとき(2003年)に、短期免許ではなくても菊花賞に騎乗できる(正確には、同年のその後のGIに同一馬での騎乗が可能)ように規定の変更が行われたが、今回のジャパンダートダービーでの規定変更はそれと似たようなパターン。
デムーロ騎手のときが日本ダービーで二冠を獲ったあとの変更だったのが、今回は東京ダービー前での発表だったことは評価できる。吉原騎手はそれで余計に東京ダービーは負けられないという、さらなるプレッシャーがかかったようだが。ただそれができるなら、南関東だけでなく、兵庫、佐賀も含め、いまだに交流重賞に限って他地区の騎手の騎乗を制限している意味はあるのかどうか、という疑問は残る。
南関東の交流重賞では、同日の条件交流に騎乗している中央の騎手が南関東の所属馬に騎乗するというケースが最近ではよく見られる。中央の騎手が騎乗できるのに、交流重賞に限って、同じ騎手免許であるはずの他地区地方騎手の騎乗が認められないというのもおかしいのではないか。
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斎藤修
1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。
プロフィール
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