鋭さで見劣らない/サウジアラビアロイヤルC

2015年10月09日(金) 18:00


新潟での素晴らしい時計

 この時期に行われていた「いちょうS」が、レース名を変えて重賞に昇格する。サウジアラビアロイヤルCの誕生は素直に喜び、敬意を表したい。サウジアラビアは近年、約1500頭のサラブレッドの生産頭数を誇り、種牡馬の数も200数十頭という数字がある。地域がら、純血アラブのレースもある。ドバイの国際レースにも出走馬を送るレベルにあり、パート3国のランキングである。

 いちょうS(特別)といえば、一昨年のイスラボニータ、ここに2頭の出走馬を送る昨年の新種牡馬トーセンファントム(その父ネオユニヴァース)が勝ったレースであり、タイムマシンに乗ると、エアグルーヴ、メジロドーベルの出世レースでもあり、もっと時間を巻き戻すと、たしか、マルゼンスキーや、シンボリルドルフのレースである。

「もみじS(賞)」の代名詞テンポイント、サッカーボーイ、フジキセキと並び、さらには「ききょうS」「りんどう賞」「なでしこ賞」「オキザリス賞」「百日草特別」など、秋の草花シリーズが、やがて3歳春の「桜花賞」「皐月賞」につながる趣向と格調は少し軽くなることになるが、サウジアラビアの競馬ファンと連帯しよう。

 注目馬は多いが、中心はアストラエンブレム(父ダイワメジャー)。勝ったのが平坦で直線の長い新潟だから、数字は光ってしまうが、1600mを1分34秒8。この夏の新潟の2歳戦のベスト3に入る好タイムで乗り切りながら、自身の上がりは「32秒6」。これも2歳勝ち馬のベスト3に入る。超スローでもないから、基準以上の1分34秒8を、上がり32秒6は素晴らしい。新潟2歳Sを衝撃的な勝ち方をしたロードクエストの記録が、1分33秒8で、同馬の上がりが32秒8だった。

 アストラエンブレムは中団から「11秒5-10秒6-11秒3」=33秒4の直線勝負を、レース上がりを0秒8上回る32秒6のタイムで差しきり、4馬身も抜けたから、最後の2ハロンは楽々と「連続10秒台」である。速い脚が長つづきしたのが能力の証明だろう。

 相手のイモータル(父マンハッタンカフェ)も、ハレルヤボーイ(父は前出のトーセンファントム)もきわめて強力だが、鋭さで見劣らないはずである。伏兵の1頭には、新馬でぶつかる不利を平気ではねかえして差し切ったコスモプロテア(父ジャングルポケット)を入れておきたい。

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柏木集保

1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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