南ア最強馬、うっ憤晴らしの快走を

2012年01月25日(水) 12:00

ダーバンジュライと並ぶ、南アフリカで最も権威ある中距離戦G1J&Bメット(ケニルワース競馬場、芝2000m)の開催が、今週土曜日(1月28日)に迫っている。

 16頭の精鋭がスタンバイする中、絶対的本命と目されているのが、7番という絶好枠を引き当てたイグーグー(牝4、父ガリレオ)である。

 2007年9月16日に豪州のキアオラスタッドで生産されたイグーグー。2002年から5シーズンにわたって豪州にシャトルされたガリレオの、豪州産としては最後の世代に属する。母は、愛国産の未出走馬ザリニア(その父インティカブ)。4代母のザーラが、2008年の欧州年度代表馬ザルカヴァの3代母にあたるという、アガ・カーンゆかりのファミリーを背景に持っている。

 2009年3月にメルボルンで開催された、イングリス・プレミア・イヤリングセールに上場され、南アフリカの商社ライヴストック・トレーダーズ社に6万5千ドル(当時のレートで405万円)で購買され、南アフリカにわたることになった同馬。A・J・マクドナルド夫妻をはじめとしたパートナーシップの所有となり、管理馬のドバイ開催における活躍で日本でもお馴染みとなった南アフリカの名調教師マイク・デゥコック厩舎の所属となって、3歳の春にデビューを迎えた。

 3歳時の戦績、10戦8勝。デビューから3連勝でG3ジョバーグスプリング・フィリーズ&メアズチャレンジ(芝1450m)を制したものの、続くターフフォンテンの一般戦(芝1400m)で2着に敗れて連勝がストップ。続いて挑んだケニルワースのG1ケイプフィリーズギニーズ(芝1600m)でもエボニーフライヤーの2着に敗れるなど、世代のトップクラスに属する1頭と認められながらも、それ以上の存在ではなかったのが3歳前半のイグーグーだった。

 そんな彼女が、スーパーホースとして振る舞い始めたのは、ガリレオ産駒らしい成長力を見せた3歳後半からである。

 G2ハウテンフィリーズギニーズ(芝1600m)を4馬身差、G1サウスアフリカ・フィリーズクラシック(芝1800m)を10.1/4馬身差、G2サウスアフリカンオークス(芝2450m)を5.3/4馬身差と、いずれも圧勝続きでターフフォンテンを舞台とした牝馬3冠戦をスウィープ。南アフリカで牝馬3冠が達成されたのは、史上初めてのことだった。

 続くグレイヴィルのG1ウーラヴィントン2000(芝2000m)も白星で通過した後、マイク・ドゥコック師が同馬の3歳シーズン最終戦に選択したのが、7月2日にグレイヴィルで行われた南アフリカにおけるシーズン末の大一番G1ダーバンジュライ(芝2200m)だった。イグーグーはここでも、古馬の精鋭たちを力でねじ伏せる競馬で快勝。重賞5連勝で3歳シーズンを締めくくることになった。

 南アフリカ年度代表馬に選出されたイグーグーの4歳初戦となったのが、12月4日にターフフォンテンで行われたG2イッピトンビチャレンジ(芝1600m)で、ここも同馬は5.1/4馬身差で快勝。その後、1月7日にケニルワースで行われたG1パドックS(芝1800m)に出走を予定していたが、咳の症状が出たため出走を回避。ただし症状は軽く、当初の予定通り、今シーズン最初の大目標としていたJ&Bメットに向かうことになった。

 数々の名馬を管理して来たドゥコック師が「自らが手掛けた最強馬」と公言して憚らぬイグーグー。本来なら、次はドバイに照準を絞るのが常道で、その後は欧州遠征が視野に入ってしかるべきなのだが、昨年3月に南アフリカの一部地域でアフリカ馬疫の発生。馬の移動が制限されたため、特定の経由地における厳重な検疫を経ない限り、ドバイにも欧州にも渡れないのが現状だ。世界の強豪と互角に渡り合える力があることが判っていながら、国内のレースに専念せざるを得ない状況にあるイグーグーには、J&Bメットにおけるうっ憤晴らしの快走が期待されている。

 最大の敵と見られているのが、1月7日にケニルワースで行われたG1クイーンズプレート(芝1600m)で、3歳馬としては39年振りの優勝を飾ったギミザグリーンライト(牡3、父モアザンレディー)だ。

 これに続くのが、クイーンズプレートの3着馬で、前年のJ&Bメットでも4着に来ているテイルスオヴブレーヴリー(セン5、父カハル)、クイーンプレート4着馬ブラヴーラ(セン5、父シルヴァーノ)、前年のこのレース3着馬ランフォーイット(牡4、父ダイナスティー)、昨年のG1パドックS勝ち馬で、その後ウーラヴィントン2000でイグーグーの2着となっているエメラルドコーヴ(牝4、父キャプテンアイ)らと見られている。

 J&Bメットの結果にご注目いただきたい。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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