素晴らしい能力を発揮したが、若干心配も/桜花賞

2014年04月14日(月) 18:00


◆一人ひとりが違う感想を抱きそうな桜花賞

 期待通りだったか、いや期待を上回る強さを爆発させたか、そんなに驚嘆するほどではなかったか。注目のハープスター(父ディープインパクト)の桜花賞制覇には、一人ひとりがみんな異なる印象をもち、このあと展開されるだろう「ハープスター物語」の進展には、また一人ひとりみんなが異なる感覚を覚えそうな桜花賞だった。

 最後方からの追走はちょっとばかり予想外だったが、ハープスターがあまり巧みなスタートではなく、最後方追走の形になってもだれも不安は感じなかった。届くに決まっているはずであり、実際、きっちり差して「1分33秒3」。2010年のアパパネと並ぶ現阪神コースの桜花賞レコードとタイ記録だった。見事な快勝である。

 横山和生騎手のフクノドリーム(父ヨハネスブルグ)が行き出すと、前半「…33秒8-45秒3-57秒0→」で飛ばした。18番人気の伏兵とするとこれは精いっぱいの演出であり、フクノドリームはなんと残り100mまで先頭、1分34秒9でがんばった。  2番手グループの先頭だったニホンピロアンバーの前半1000m通過は「…47秒1(推定)-58秒8→」である。ニホンピロアンバー(17着)、コーリンベリー(18着)、カウニスクッカ(16着)などの先行型は大きく失速したものの、最終的に1分33秒台乗り切った上位8着馬までのうち、もっとも前の7-8番手に位置した8着フォーエバーモア(父ネオユニヴァース)のレースバランスは「47秒6-46秒3(推定)」=1分33秒9と計算される。  したがって、実際のレースとはそういうものではないが、仮にフクノドリームから目を離してレースを振り返っていいなら、主力馬にとって、実質のレース全体はごく標準の楽なペースであり、レースは少しも壊れていない。だから、人気上位9頭のうち、ベルカント(4番人気)をのぞく8頭はみんな1分33秒台で乗り切り、きっちり上位8着までを独占している。

 1分33秒9のフォーエバーモアが、勝ち馬と0秒6差。このあとさまざまな路線を歩む各馬にとり、1分33秒台で桜花賞8着以内は、きわめてふつうの流れで,レースが破綻していない中での記録だから、各馬の格好の能力の目安(ベース)となるだろう。

 ハープスター自身が1600mを乗り切った中身は「60秒4-32秒9」=1分33秒3であり、推定前後半のバランスは「48秒8-44秒5」に限りなく近い。少なくとも前後半800mの差は4秒以上もある特殊なレース運びである。最終3ハロン「32秒9」は、現阪神コースになった2007年以降の全出走馬143頭中の、NO.1だった。

 ビシビシ追いながら、さらにたくましさを増してプラス体重の478キロ。もちろんGIだから高揚はしていたが、チャカつきはなく、レースでの折り合いもまったく不安なし。4コーナー手前から大きく外に回ったコースロスを考慮するなら、実際は1600mを1分32秒6-7にもなるのだろう。秋には凱旋門賞に挑戦する可能性が高くなったかもしれない。

「勝者には何もやるな」。これは、(勝ったのだから)もうそんなに絶賛の言葉を並べなくともいいではないか…などという意味とはおよそ関係ないが、言葉を贈らないわけにはいかない。このあとのハープスターのために、あえて勝者に「心配」を送りたい・・・

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柏木集保

1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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